第6回 「本業用の髪型」と「趣味用の髪型」

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第6回 「本業用の髪型」と「趣味用の髪型」

安田

以前岩上さんがね、「髪型に本業用、副業用、趣味用なんて区別はないんだよ。どんな人と繋がりたいかで決めればいいんだよ」ってどこかに書かれていたんですよ。今日はそれについてお話を聞きたくて。


岩上

ああ、なるほど、わかりました。

安田

これ、どういう意味なんだろうって。だって日本で普通に働くとなったら、基本的には皆さん「本業用」の髪型をするしかないじゃないですか。金髪で営業に出るわけにいかないし。


岩上

まぁそうなんですけどね(笑)。そうだなぁ、これは僕自身が、いわゆるスーツ着て出社するような環境にいないからこその考え方なのかもしれないんですけど。

安田

ええ、ぜひ教えて下さい。


岩上

ちょっと遠回りな説明になってしまうかしれませんが、そもそも「本業」「副業」「趣味」と3つに分けた場合、「本業」だけちょっと異質な感じがするんです。なんか「無理してやるもの」ってイメージ。

安田

ああ、確かに。本業、つまりいわゆる「仕事」って、日本だとほぼ“我慢の時間みたいに思ってる人が多いですよね。


岩上

そうそう。一方で副業や趣味は「自分がやりたいからやる」という人が多い印象で。ピザが好きだからピザの移動販売をやるとか、陶芸が好きだから技術を学んで作品づくりをするとかね。

安田

うんうん、わかります。


岩上

でもお客さんから見た時に、ピザを焼いているのがいかにも真面目そうな、地味なスーツを着た七三分けの人だったらどうです? なんかちょっと微妙な感じしませんか。

安田

確かに(笑)。もっとオシャレな感じの人に作ってもらいたいかもしれない。


岩上

そうなんですよ。何が言いたいかと言うと、本業用の髪型とか服装が、副業・趣味においては「営業妨害」になっちゃう可能性がある、ということなんです。

安田

ははぁ、なるほど。本業の格好のまま副業・趣味を始めると、それがマイナスに働いてしまう場合もあると。


岩上

そうそう。とはいえ「じゃあどうすればいいのか」「どっちに寄せた髪型にすればいいのか」という話になるわけで、それに対する一つの答えとして挙げたのが、冒頭の「どんな人と繋がりたいかで決めればいいんじゃない?」というもので。

安田

ははぁ、なるほど。……うーん、いや、とはいえですよ岩上さん、ピザ屋さんの髪型や服装で営業は回れないじゃないですか。つまり今度は「本業に対する妨害」になってしまうかもしれないですよ。


岩上

ええ、なので「今日から完全に副業・趣味に寄せましょう」という話ではなく、「好きな髪型や服装で、繋がりたい人たちの中で仕事をしてもいいんじゃない?」という<発想を持つ>ことが重要というか。

安田

ははぁ、確かにほとんどの人はその発想自体を持っていないでしょうね。あるいは諦めてしまっている感じがします。


岩上

ね、それが僕はもったいないなと思っていて。だからちょっとだけ「本業」というものから自由になって、副業や趣味の世界に飛び込んでみる。そこで素敵な人たちと素敵な時間が過ごせたら、「あ、もっとこっち側で長い時間を過ごしたい」って思うじゃないですか。

安田

ああ、そういう成功体験のキッカケになればいいと。


岩上

そうそう。小さくてもいいのでそういう成功体験を重ねていくと、「オシャレする」とか「髪型を変える」ということに対するリミッターが少しずつ外れていく。

安田

そうやって見た目もだんだん「オシャレなピザ屋」さんになっていって、結果、「あのピザ屋さんオシャレで良い感じだね」とピザ自体も売れるようになっていくわけですね。


岩上

ええ。実際、そういう感じで「あ、これはもう副業だけでやっていけるかも」となって、会社を辞めて個人事業主になった人が何人もいますよ。

安田

へぇ、それは岩上さんのお知り合いやお客さんで?


岩上

そうそう。この23月だけで3人くらいLINEがありました。「会社に退職届を出しました!」って(笑)。

安田

へぇ~、すごい。髪型の変化が人生まで変えてしまったわけだ。


岩上

まぁ、時代もそっちの方向に進んでますよね。会社中心の人生ではなく、個人のライフスタイルを重視するようになってきているというか。そういう意味では昔よりずっと独立しやすくなっている気がします。

安田

確かに。岩上さんはそういう独立志望者の相談に乗ることも多いんですか?


岩上

多いですねぇ。相談というか、髪を切りながら雑談してるだけですけど。それで皆さん本当に独立なさって、楽しそうにやってますよ。周りの人たちも応援してくれますし。

安田

ということは、独立を考えている方はまず岩上さんに髪を切ってもらいに行くのがいいですね(笑)。ちなみに独立希望の方にはどんなアドバイスをするんです?


岩上

もちろんケースバイケースですけど、よく言うのは「ちゃんとした値段設定をしなよ」ということかな。なんだか皆さん、副業とか趣味のことって、値段を必要以上に低く設定しがちなんですよ。

安田

ああ、わかります。なぜか儲からない設定にしちゃいますよね。


岩上

そうそう。前(本業)と同じ仕事なのに、独立した途端に金額を下げちゃったりしますから。「商品は変わっていないんだから、同じ値段を取っていいんだよ」と言ってるんですけど。

安田

それはほら、本業っていうのは“我慢の時間だから(笑)。我慢した分はちゃんとお金はもらうけど、好きなことやってお金もらうのは申し訳ないという感覚があるんじゃないですか。


岩上

ああ、なるほど(笑)。

安田

逆に言えば、会社で全然役に立っていない人でも、「私は8時間会社に居たんだからお金は当然払ってもらいますよ」みたいな感じだったりするので。


岩上

笑。まぁそういうわけで、個人的には髪型や服装は「自分のやりたいこと」や「繋がりたい人たち」という考え方で選んだ方がいいんじゃないかなと思っているということです。

安田

なるほどなるほど。よくわかりました。肩肘張って「どうせ本業で禁止されているから」なんて諦めず、あらためて「自分は何がやりたいんだろう」「どんな人と一緒にいたいんだろう」と考えてみた方がいいということですね。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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