“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第59回 「買いやすく」するためのマネタイズ方法
今日は「コンサルタント」という仕事について、倉橋さんに聞いてみたいと思います。コンサルタントって別に資格が必要な仕事じゃないので、名乗ることは誰でもできるんですよね。だからけっこう名刺に書きたがる人が多くて。
確かに。コンサルタントって、何となく「偉い」とか「賢い」っていうイメージがありますしね。
そうそう。でもそうやって名刺に「コンサルタント」書いている人の平均年収って、実は100万円くらいしかないらしいんです。
えっ、そうなんですか? けっこう稼いでるイメージですけど。
ドラッカーのような超有名コンサルタントになれば、それこそ何億とか何十億の世界ですけど、一方で限りなくゼロに近い人も大勢いるということですよね。有名なコンサルタントの方ですら「コンサルタントは儲からない」って言い切っているくらいで。
そうか。つまりごく一部の人しか稼げない仕事ということなんですね。
そうらしいです。それでふと思い出したんですけど、「ファッションコーディネーターのショッピング同行」というサービスをやりたい、と相談を受けたことがありまして。
ははぁ、そういう仕事が流行った時期がありましたね。
ええ。お客さんの洋服をコーディネートしてくれるおしゃれな女性と契約して、バンバン仕事を取っていこう、という話でした。でも1回の同行で受け取れる報酬って、2~3万円が限界らしいんですよ。
その金額をお客さんがマージンとして洋服代とは別に支払うということですよね。「洋服にお金を払ってるのに、さらに費用がかかるのか…」と思われてしまいそうです。
ええ、まさに。そもそもの話、バーニーズニューヨークとかのお店に行けば、おしゃれな店員さんが当たり前に一緒に選んでくれるんです。それなら洋服代だけで済むわけで。
そうですよね。店員さんだから商品知識もバッチリだろうし、組み合わせや色合わせなんかについてもアドバイスしてくれそうです。
そうなんですよ。だから相談してくれた人にも「儲からないからやめた方がいい」と答えたんです。結局、コンサルタントもそれと一緒だなと思いまして。アドバイス自体で儲けるってすごく難しいんです。
なるほど。確かにそうかもしれませんね。コンサルって形がない分、原価もかからないし一見儲かりそうですけど、だからこそ客側からすると、お金を払うことに抵抗を感じてしまう。そこが難しいポイントなんでしょう。
まさにそうですね。そもそもの話、仮にコンサルを有料で頼んで成果が上がったとしても、本当にその人の助言のおかげなのかどうかって、なかなか評価が難しいんですよ。
わかります。お客さんからしたら、「成果が上がったのは自分が頑張ったからだ」と思いたいですからね。
そうなんです。だから結局「どの部分に価格をつけてマネタイズするか」なんですよ。バーニーズだって、「商品の料金」と「店員のアドバイス」を別々にして販売したら、売上はだいぶ下がると思いますよ。
まさにそう思います。それで思い出したんですが、僕の知り合いに繁盛店を作るのが得意な建築屋さんがいるんです。これまでの知識や経験をフルに使ってコンサルしてくれるんですけど、費用がかかるのは建築の部分のみで。
ああ、それは正しいやり方だと思います。仮に建築費が相場より20%高くても、「繁盛するノウハウが付いてくるんだもんな」と思えば払いやすい。でも「ノウハウ部分だけでプラス20%いただきます」と言われると、なんだかすごく高い気がしてしまう。
そうなんですよね。さすが顧客心理をよく理解されているなぁと思いました。実際、ものすごく人気のようですし。
そういう話を聞くとさらに、「コンサル(だけ)では儲けられない」って話に信憑性を感じますね。ともあれ、最近はネットビジネスも当たり前になってきてますし、無形商材ビジネスのハードルはどんどん下がってますよね。
「動画製作のノウハウを教える」みたいなサービスも増えてますよね。とはいえ、成功しているものはそう多くない印象です。その点、安田さんはすごく上手ですよね。例えばこの対談企画も、単なるマーケティングとかブランディングとは違って、楽しみながら続けられるじゃないですか。
ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
マーケティングやブランディングのサービスってたくさんありますけど、一回作って終わりっていうパターンが多いんですよね。だからビジネスとしても単発で終わってしまうわけで、継続が難しい。どんな商売でもリピートしてもらうことが一番大事なので。
まさに仰るとおりだと思います。
実際無形商材で成立してる人って、安田さん以外に思いつかないかもしれない。どんなことを意識してるんですか?
新しい情報がどんどん出てくるので、勉強はずっと続けてますね。あとは先ほどの倉橋さんの言葉通り、無料にする部分と有料にする部分をしっかり切り分けるとか。
ああ、やはりそうなんですね。先ほどのバーニーズや建築屋さんの話でも、無料部分と有料部分が逆だったら全く売れない可能性もありますもんね。
本当にそう思います。ところでもし倉橋さんが「コンサルタントで飯を食っていかなければいけない」となったら、どんなビジネスモデルにします?
そうだなぁ。例えば限られたお金の中でどうビジネスを始めるかのアドバイスなら、経験値を活かせるかもしれません。「1000万円の資本で作れる最適なビジネス」を提案するとか。
なるほど。1000万円までのビジネスを教えてお金をもらうってすごく難しそうですよね。
アドバイスだけでお金をもらおうとすると、せいぜい50万円くらいがいいところでしょうね。それよりはアドバイスではお金をもらわずに、出資して売上が上がったらもらえる形にした方がいい気がします。
確かにその方がよさそうです。やっぱりどこでマネタイズするかが、ビジネスを成功させる鍵になりそうですね。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。