“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第67回 台湾の進化系クレーンゲーム
台湾が「クレーンゲーム大国」だということを倉橋さんのXで初めて知ったんですが、実際そんなに発展しているんですか?
そうなんですよ。先日台湾に視察に行ったんですが、かなり驚きました。フロア一面にクレーンゲームがズラーッと並んでいて、テーマパークみたいでしたよ。
それは圧巻ですね! でもどうして台湾でクレーンゲームが発展したんでしょう?
半導体技術が活用されているからだと思います。台湾は世界トップレベルの半導体技術を持っていますからね。
ははぁ、なるほど。半導体技術がクレーンゲームを進化させたんですね。
そういうことです。それに台湾は世界一と言われるくらいの「親日国」で、日本の文化、特にサブカルチャーに対する親和性が非常に高い。クレーンゲームもその一環だったんでしょう。しかもただ受け入れるだけじゃなく、自分たち流にアレンジする力もすごいんですよ。
そうなんですねぇ。大好きな日本の遊びを取り入れてアレンジしてみたら、本場よりすごいものができてしまったと(笑)。
まさにそういうことで(笑)。お寿司や日本酒が海外でものすごく進化したようなイメージです。
ああ、なるほど。そういうアレンジ力って日本人の得意分野かと思ってました。ほら、日本で食べるイタリア料理の方が本場よりも美味しいなんて言われたりするじゃないですか。
確かにそうなんですけど、クレーンゲームに関しては台湾がさらに上を行ってしまった感じです。日本のクレーンゲームと比べて、アームの力も強くていい動きをするんですよ。これに関しては、同じく台湾が得意とするロボット技術が活用されているんでしょうね。
へぇ、なるほど。でもアームの操作性があまり高いと、景品を全部持っていかれちゃう気もしますけど(笑)。
それがね、むしろ持っていってもらうことが前提のビジネスモデルなんです。「遊ぶ」というよりも、「買い物」に近い感覚ですね。スーパーの中にクレーンゲームがあって、そこで商品を直接掴んで買うようなものなので。
へぇ〜、おもしろい。ゲーム性が重視される日本とは全く違う発想ですね。取れそうで取れないことを楽しむんじゃなく、手に入ることは前提で、その買い方にエンタメ性を付加したというか。
そうそう。とはいえまったくゲーム性がないわけではないんです。例えば「3つ買おうかな」と思っていた商品が、うまくやったら4つ取れたり、場合によっては2つしか取れない場合もある。
ははぁ、なるほど。そのゲームバランスが日本とはちょっと違う感じなんですね。ちなみにゲームマシン自体は日本のものと同じ大きさなんですか?
台湾の方が少し小ぶりですね。そもそも商品は冷蔵庫や別の場所に保管されているんです。クレーンゲームの中には商品の代わりになる黒い箱のようなものが入っていて、それを後から交換する「二次交換」という方法をとっています。
なるほどなるほど。引換券みたいなものを取って、別の場所で受け取るんですね。
そうなんです。そういう方式だと商品のバリエーションが一気に増えるんですよね。保管場所は別でいいわけだから、お肉やアイスクリームなんかにも交換できる。実際、すごく楽しかったですよ。
確かに楽しそうですねぇ。日本でもそうすればいいのに、なぜやらないんです?
日本の法律では「二次交換」が禁止されているんですよ。だからやりたくてもできないのが現状で。
へぇ〜。ということは、日本でお肉のクレーンゲームをやるなら、機械の中にお肉を直接入れないといけないわけだ(笑)。
そういうことです(笑)。ちなみに実際に万代にもお肉のクレーンゲームがありますよ。冷蔵設備を整える必要があるのでちょっと大変ですけど。
なんと! そうなんですね。クレーンゲームでお肉が取れるなんて、想像したことなかったです(笑)。
ですよね(笑)。今までのクレーンゲームの概念が変わるようなサービスを提供したいなと思って。そうでなくても台湾のクレーンゲームを参考に、とにかくたくさん取っていただけるよう設定を変えてますから。
じゃあ万代さんのクレーンゲームでは、他のお店より景品が取りやすいってことですね。
そうです(笑)。万代では普通のクレーンゲームの2倍くらいは取れるように設定してますから。どんどん取って楽しんでいただけると嬉しいですね。
でもそんなこと言って大丈夫なんですか? お客さんからしたら「万代のクレーンゲームは取れるぞ!」という噂が広まっちゃいますよ。
全然いいんです。そうやってお客様に喜んでいただけるように企業努力をしている部分なので。
なるほど~。でも逆に取れすぎても面白味がないんじゃないですか? 取りたくても取れないのがミソという気もするんですけど。
それがですね、取れれば取れるほどアドレナリンが出てくるような感じで、どんどんエキサイトしてくるんです(笑)。実際僕もポテトチップスやアイスクリームのような、普段そんなに食べないものまで取りたくなりましたから。
へぇ〜、そうなんですね。ちなみにお肉のクレーンゲームは実際にあるということでしたけど、アイスクリームの方はどうなんです? さすがに難しいですか?
いえ、それも技術的には可能なんです。だからこれからはそういう機械もいろいろ開発していきたいなと考えているところで。ともあれ、今回の台湾視察での一番の収穫はバリエーションの幅広さよりも、やっぱり「取るという行為自体が人を楽しませる強力な要素なんだ」とわかったことで。
そうか。確かにそこが一番本質的な部分ですもんね。私自身「取れすぎたら面白くないんじゃ?」と思っていましたけど、それは先入観に過ぎないと。
仰るとおりです。「入れ食い状態」でも十分楽しめると思います。むしろそっちの方が興奮してやめられなくなりますよ(笑)。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。