第83回 「生まれ育った場所には出店しない」のはなぜ?

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第83回 「生まれ育った場所には出店しない」のはなぜ?

安田

今日は「経営のギャンブル性」についてお聞きしてみたいんです。経営者って、もちろんいろんなメリットはあるものの、リスクだらけでギャンブルのような人生を送ることになるじゃないですか(笑)。


倉橋

まぁ、それは否めないかもしれません(笑)。

安田

ただ「ギャンブル」と言ってもね、競馬や宝くじみたいなものとは違うじゃないですか。普通のギャンブルと一体何が違うのか、倉橋さんはどう思います?


倉橋

「経営はギャンブルじゃない」というより、「経営の中にもギャンブル性が高いものと低いものがある」という感覚ですかね。僕も起業当時は、人もいなくて資金もない、その上商品も定まっていない、という状況だったので、どうしたってギャンブル性が高くなる。経験も仕組みも足りない中、毎回「えいやっ」と判断するしかないというか。

安田

ああ、なるほどなるほど。確かに仰るとおりかもしれません。でもお店の導線や配置も細かく計算している倉橋さんでも、起業当時はそういう感じだったんですね(笑)。


倉橋

もちろんそうですよ(笑)。今思えば本当に感覚で経営していましたね。あれからいろいろな経験を積んで、今でこそだいぶ科学的な判断ができるようになりましたけど。でも一方で、動かすお金が大きくなればなるほど、ギャンブル性というかリスクは上がりますよね。

安田

ああ、確かに。経営で一番お金がかかるのは「人」だとよく言われますけど、給与や社会保険料を支払うというお金のリスクに加え、その人が問題を起こすリスクや、突然辞めちゃうリスクまで背負うことになりますから。


倉橋

仰るとおりです。社員が皆明日も元気に出社してくれるなんていう保証はどこにもないわけで。

安田

それでもある程度結果をコントロールできると見込んでいるから、資金を投じて採用したり、給与を払ったりするわけじゃないですか。そのあたりも経験値が重要になってくるんですかね。


倉橋

そうでしょうね。そういう意味では、「リスク」ではあるものの「ギャンブル」ではないのかもしれません。サイコロを振って偶数が出たら当たり、奇数ならハズレというようなものではないというか。

安田

それはそうですね。宝くじのように、当たり外れにこちらが一切関与できないものとは違う。そう考えると、経営者よりもむしろ会社員の方がギャンブル性が高いのかもしれません。何しろ、基本的には「経営者の判断には関与できない」わけだから。


倉橋

ふ〜む、確かに言われてみればそうですね。会社のトップがどんな判断をするかで、人生が大きく変わってしまうこともあるわけで。経営者は、事業内容も働く場所もある種自由に変えていけるわけで、結果に対しての関与度はかなり高い。

安田

まぁ、とはいえ世の中を見渡してみれば、思い通りに自由にビジネスをやっている経営者なんてほとんどいませんけどね。伝統や常識に縛られて、それこそ結果に関与できなくなっている。


倉橋

もったいないですよね。自らチャンスを狭めているようで。景気や業界のルールとか、気にする気持ちはすごくわかりますけど、意外と本気で取り組めば変えられたりもするのに。

安田

倉橋さんは実際に事業も場所も変えてきましたもんね。迷いはなかったんですか?

倉橋

その時はなかったですね。だからこそ動けたというか。ただ最近は一つ気をつけていることがあるんですよ。それが「辞めづらい場所には出店しない」ということ。例えば自分が生まれ育った場所とか。

安田

へぇ。生まれ育った場所は「辞めづらい」ってことですか。

倉橋

だって皆顔見知りで、「倉橋さんのお店、閉めるらしいよ」なんて噂になったら気まずいじゃないですか(笑)。それが嫌で「もうちょっとだけ頑張ってみようかな」って無理に続けてしまったりする。

安田

ああ、なるほど。わかる気がします(笑)。親や知人が多い地元だと、どうしても周囲の声が気になってしまうんでしょうね。それが経営判断を迷わせると。

倉橋

そうそう。実店舗だと特にそうなんですが、思い入れがあればあるほど、撤退しづらくなってしまうんです。そういう意味では、撤退の条件やタイミングをあらかじめ決めておくことも大事だなぁと。

安田

確かにそうですよね。ちなみに倉橋さんはそのあたり、どう決めているんですか?

倉橋

「1年間で一定の利益が見込めなければ閉店する」というように、割と細かい基準を設けてますね。基準がないと、ズルズル続けてしまいがちなので。

安田

なるほどなぁ。でもそういう基準を設けても、実際そうなったときにちゃんと決断できるかはまた別ですよね。

倉橋

そこはキチッとすべきでしょうね。たとえ黒字でも、継続の基準を満たしてなければ閉店する。それくらいの覚悟が必要だと思います。「損切り」の決断って一番難しいんですが、それができるかどうかが、経営をギャンブルにするかどうかの分かれ目なんじゃないでしょうか。

 

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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