このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/「優秀」の定義
「『優秀な人材の定義』は、会社や組織、ビジネスモデルによって、異なりますが」
「共通して言えるのは、『会社の利益に貢献できる人』であるということ」
「単純に、『優秀(=頭がよい=知識量が豊富)』、ということじゃあないよな」
「ぜひ、みんなには、当社にとっての優秀な人材を育成・輩出してもらいたいと思っている。頼むよ」
という常務の言葉から、某大手さんの部長研修がスタートしました。
テーマは、「優秀人材の輩出とイノベーション創出」であり、全4回コースの第1回目は、常務が社内講師を務め、「自社にとっての優秀な人材を定義」するというワークショップ。
同席させていただいた高松は、ここぞとばかりにクライアントの社内事情をしこしこと収集することに集中。
参加した8名の部長から、様々な意見が上がります。
・会社に利益貢献をすることができる
・自己研鑽に励み、日々スキル向上に努めている
・組織における自身の役割・期待を理解している
・部下や後輩の育成に注力している
・5年、10年先を見据えた仕込みをしている
・社内外に円滑な人間関係を築いている
・目的意識が前提にあり、明確な目標設定をしている
・素直で謙虚で誠実である
・企業ブランドに頼ることなく、個人で仕事を生み出している
・前向きな思考を持ち、主体的に行動している
・危機意識と高いストレス耐性を持っている
などなど。
ひと通り出し尽くしたところで、
「でもさ。そんな人間なんて、なかなかいないし、俺ら自身もラッキーでここまで来られたってもんだよな」
「確かに。周りに恵まれたよな」
「ほんと、運だけはあるって、自信を持って言えるわな」
と談笑する部長陣。
他社で、「イノベーション創出プロジェクト」などを進めていると、
上がってくるのは、
1.効率化による「コスト削減案」
2.効率化による「生産性向上案」
3.既存のサービスと何かの掛け合わせによる「新サービス案」
こちらの3つについて、
具体的なアイデアはどんなものがあるのか?
と、徹底的に意見を出し合う、
ということがほとんど。
でも、こちらの会社では、
「イノベーションは、目的ではなく、世の中にとっての自社の存在意義を徹底的に追求することで、結果として生まれてくるかもしれないもの」との前提が浸透しています。
ですから、進行役の常務からも
「確かに、運や縁は大切だよな」
「みんなが上げてくれた当社にとっての優秀人材の定義っていうのは、その全てが大切ではあるけど、その全てをひとりで突き詰める必要はないよな」
「上がってきた中のひとつでもふたつでも、徹底している人がいるんだとしたら、その人たちがいてくれること、それ自体がラッキーなんだから、われわれはそれに感謝できる風土を作り上げていくことが大事なんだろうな」
「利益を追求することが目的ではなく、感謝を伝え合える組織づくり、関係性づくりの先に見えてくるものが、われわれの作り出したい世界なんだろうな」
と、およそ他社の部長研修などでは出くわすことの多くない言動に出会えます。
「人が育つには環境が重要。そう理解している組織は、人の足りない部分や環境についての不満を探し出す」
「人材育成とは、自分自身で切り拓くもの。そう理解している組織は、勝手に学び出す」
「環境づくりは大切だけど、良い環境を待ち続ける組織からはイノベーションなんて創出されづらいだろうね」
などのプロセスを経て、
結局、初日にまとまったものとしては、
当社の優秀人材の定義は
・自立している
・感謝を伝えられる
・運が良いと信じている
に決まりました。
果たして、「こんなプロセスに意味はあるの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるかとも思いますが、
こんなプロセスにお付き合いするという仕事が世の中にはあるのです。
毎度ありがとうございます!