第26回「中東では自由恋愛できないって本当ですか?(その3)」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「中東では自由恋愛できないって本当ですか?(その3)」

   回答   

前回記事で中東にもマッチングアプリがあると述べましたが、メジャーなアプリは露骨すぎて馴染めず、使うことに尻込みする女性もいます。
保守的な女性でもうしろめたさを持たずに堂々と使えるサービスがあれば流行るのかも、と思っていたら既にありましたのでいくつかご紹介します。

まずは、Muzmatchというアプリ。https://muzmatch.com/
「シングルのイスラム教徒専用デートアプリ」とはっきり書かれています。フィルター機能がユニークで、ベールでの顔の隠し具合(女性側)、何年以内に結婚希望か、お祈りの頻度はどれくらいか、というふうに相手を絞り込むことができます。はじめはベールで顔が隠されているが頃合いを見て顔写真を見せることができる機能、も実装されているようです。このあたり、イスラム圏ならではという感じがしますね。
ユーザーインターフェースも今風でおしゃれです。

(↑Muzmatch公式サイトより)

Al Khattabaという名前のアプリもあります。https://alkhattaba.com/
こちらは最もおカタいと思われているサウジアラビアに特化したマッチングアプリです。もともとサウジアラビアはマッチングアプリのトラフィックが中東で最も多いと言われており、月間アクティブユーザーは30万人を越えるとのこと。
レバノンの実業家がそこに目をつけてサービスをローンチしました。
一夫多妻制を許容するかどうかでフィルターをかけたり、はじめから「親の反対」を想定している人に向けて結婚時の条件や要望を組み込む機能がついていたり、独自の路線を展開しているようです。


(↑Al Khattaba の紹介サイトより)

お見合い結婚は今も続く伝統的習慣ではありますが、現在その離婚率は決して低くないようです。
恋愛結婚の離婚率が低いかと言えばそんなことはないと思いますが、「お見合いが当たり前だった世代」と「自由恋愛という選択肢が以前よりも身近になった世代」とでは、感覚にズレがあっても不思議ではありません。
マッチングアプリで相手を見つけるなんて、と眉をひそめる親世代もたくさんいそうですが、若い世代はそこまで厳しい文化的価値観を共有していない可能性はあります。

納得できる相手を見つけるために、アプリでも何でも使えるものは使う。
特に今はコロナによる接触制限で街中での出会いは減っていますので、こういったサービスはいっそう使われる傾向にあるのかもしれません。
日本とは宗教も文化も全く異なると思われることが多い地域ですが、我々と共通するような考えや悩みも当然持っています。
日本の商品やサービスが受け入れられる余地は十分あると思います。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ)

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

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