日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。
質問
「なぜサウジアラビアは急激なスピードでエンタメ産業を変化させているのでしょうか?」
回答
【娯楽といえば海外だった】
前回記事でお伝えしたように、これまでサウジアラビアは娯楽がかなり制限されていました。では、娯楽を楽しみたい人々はどうしていたのかというと、海外に行っていたのです。国内で溜めたうっ憤への反動もあるのか、サウジ人が国外で娯楽に使うお金はかなり多かったようです。
石油収入が盤石だったころは別にそれでも問題はありませんでした。しかし、いまは石油収入だけでは心もとなく、石油依存から抜け出したいという思いがあります。
【国内にエンタメを】
自国民が多額のお金を海外に落とす最大の理由は、国内に娯楽と呼べるものが極端に少なかったから。
これはもったいなさすぎる。どうせなら国内で使ってもらいたい。
ということで、国内で楽しめるエンターテインメントを増やしているのです。
その変化のスピードは驚くべきもので、2年前と同じ国とは思えないほど。
これは国としての意思決定が早いこともありますが、コロナ禍が追い風となった可能性があります。
なぜなら、これまでエンタメを楽しんでいた海外にコロナによって行くことができなくなったからです。これは国内の娯楽への需要を大きく後押ししたのではないでしょうか。
【税金を再投資】
ここで疑問が浮かぶのが、投資財源です。
非石油産業を盛り上げようとしているのは、お金に余裕がなくなってきたからこそです。
しかし、社会がこれだけ変わるということは、非常に大きなお金が動いているということ。
では、そのお金は一体どこから?
第47回で嗜好品への増税が顕著だという話をしました。これは国民の健康対策としての面もありますが、実はそこで得た莫大な税収をエンタメや観光といった新分野へ再投資しているのです。
うまく税金を回しているなと感じます。
【日本のエンタメは受け入れられるか】
「中東で見つける小さなブルーオーシャン」という観点からみると、日本の多様なエンターテインメントは、サウジ人にとって新鮮に映るかもしれません。
彼らは世界各国で最先端のエンタメを経験していますが、日本のエンタメにはそれらとは一線を画す独自のものも多いように思います。
たとえば、ラウンドワンのような一棟まるまるアミューズメント目的のもの。
サウジアラビアにもゲームセンターはありますが、スポッチャのように楽しみながら体を動かせるものが入っているところはあまり見ません。
こういった施設はヘルスケアを推進するという政府の目的にも合致するのではないかと思います。
また、カラオケも有望な候補のひとつでしょう。
これまで公共の場で音楽を奏でることが禁止されていたサウジですが、解禁された今はランチタイムにライブショーを見ながら食事している光景も見かけるほどになりました。
私の知る限り、歌が好きなサウジ人は結構いるので、自分が歌う参加型のアミューズメントがウケる可能性は十分にあると感じます。
これらのアミューズメントは日本人にとっては日常的過ぎて、頭に浮かぶこともないことかもしれません。
しかし、エンタメ解禁したばかりのサウジにとっては、新しいものとして受け入れられる可能性はあると考えています。
この記事を書いた人
大西 啓介(おおにし けいすけ)
大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。
写真はサウジアラビアのカフェにて。
【お知らせ】
ポッドキャスト始めました。
中東や東南アジアを中心に、海外の文化(ときどきビジネス)について喋る番組です。
番組名: Friday Airport Lounge
毎週金曜17時更新
https://anchor.fm/friday-airport-lounge
2件のコメントがあります
こんにちは。いつも楽しく拝読しております。
アラブ圏の皆さんのペット事情が気になりました。
ニュースで「王族の方が飛行機でハヤブサやタカを乗せるのはそこそこ普通」だとか「ドーハではタカ(ハヤブサ?)専門の病院がある」と言うのを目にする機会がたまにあります。
猛禽類を飼うことは、お金持ちの王族の人々の間ではステータスだったり、あるいは伝統的な文化だったりするのでしょうか?
また、例えば、アメリカですと「結構みんな犬飼ってるな…」と思ったりしますが、そう言う感じで、庶民にも猛禽類を飼う習慣があるのでしょうか。
そして、日本では大人気の猫は、アラブ圏では、あまり飼われていないのでしょうか。
よろしくお願いいたします!
酒田さま
コメントありがとうございます。
ご質問については、いずれ回答させていただこうと思います。
いつも読んでいただきありがとうございます。
他にも気になることがあれば気軽にコメントしてください。
今後ともよろしくお願いします。