第17回 人工ジュエリーは天然を超えられるか

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第17回 人工ジュエリーは天然を超えられるか

安田

クレサンベールという人工ジュエリーを扱っている会社と仕事をしたことがありまして。その時に、「クレサンベールの方が天然物より純度が高い」と聞いたんです。本当なんでしょうか?


望月

そうですね。「純度」という意味ではその通りだと思います。天然物と違って窒素やケイ素などの不純物が入っていないので。

安田

なるほど。科学的に作っているから、不純物が入り込むことがないと。ちなみにどうやって作るんです?


望月

天然石と同じ成分の物質を再結晶化させているんです。確か京セラが20年か30年前に開発したんですよね。その当時は話題にもなったのでよく覚えていますが、一般的にはあまり浸透していないんですよね。

安田

それはなぜなんでしょうね? クレサンベールのサイトを見たら「スターサファイア」とか「スタールビー」というような、天然だったら滅多に手に入らない宝石もいろいろあって。それが手に入りやすくなるんですから、一般客にも歓迎される気がするんですけど。


望月

やはり「天然物じゃない」という部分が大きいんでしょう。正直、天然物と見分けがつく人はほとんどいないと思いますけど、「人工的に作れてしまう」ということが、感情的に引っかかってしまうというか。

安田

ははぁ、なるほど。天然物と違って貴重さがないと。


望月

そういうことですね。とはいえ人工だからといって簡単に作れるわけでもなくて。自然に近い形で作れば作るほど時間がかかるし、場合によっては完成しなかったりもするんです。

安田

へぇ〜、そうなんですね。人工だからといって、際限なく量産できるわけではないと。ちなみにクレサンベールでは人工ダイヤは作ってないんですよね。


望月

そうですね。ただ京セラではない会社から、ラボグロウンダイヤという合成ダイヤが出回るようになりましたね。ここ10年くらいの話ですが。

安田

ラボ・グロウン・ダイヤ、つまり「研究室で育てられたダイヤ」ということですか。


望月

ええ、そうです。天然のダイヤは炭素が集まってできた塊ですが、それの生成工程を研修室で再現するわけです。炭素を集めて、一定の圧力と温度で結晶化させる。すると人工的にダイヤが作れてしまう。

安田

はは〜、なるほど、そうやって作るんですね。そういえば、工業用の小さいダイヤモンドは人工で作れるけど、大きいものを作ろうとするとすごく費用がかかると聞いたことがあります。結果、天然物よりも高くなってしまうこともあると。そのあたりはどうなんでしょう?


望月

昔は確かにそうでしたね。でも今は技術が進んで、大きな物でも天然物より安価に作れるようになりました。

安田

へえ〜。ちなみに時間的にはどのくらいで合成できるんですか?


望月

今だと数日から数週間でできてしまいますね。天然のダイヤが何百キロという地中深くで生成されて、何億年もかけて地表に上がってきたものだと考えると、恐ろしいほどの時短化です(笑)。

安田

確かに(笑)。何億年もかかっていたのが、数日ですもんね。ところで肝心の見た目ですが、天然物と本当に違いはないんですか?


望月

パッと見は全く遜色ないですね。我々のような宝石を長く扱っている者でも見分けがつかないくらいで。

安田

そうなんですか! じゃあ事実上、それが天然か合成かを見分ける方法はないと?

望月

大きな鑑別機関であれば、ダイヤが生成される過程を分析する機械を持っているので、科学的に見分けることは可能です。できあがるまでに何億年もかかっているものと数週間では、成長過程が異なるので。

安田

へぇ。そんな機械があるんですね。とはいえ、相当大きなところじゃないと持ってなさそうですけど。

望月

何千万円もする機械なので、我々は手を出せないですね(笑)。つまり、そういう機関を除いた99.9%の人間にとっては、見分けることは不可能という結論になってしまいます。

安田

なるほど。そこまでしないと判別できない人工ダイヤが、天然ダイヤの10分の1くらいの値段で買えてしまう。あらためて考えると、すごい時代ですよね。

望月

そうですね。しかも人工ダイヤって地面を掘り崩して採掘する必要がないので、「地球にやさしい」という大義名分もあるんです。

安田

ああ、なるほど。サスティナブルだと。時代に合っているわけですね。

望月

ええ。ダイヤモンドの採掘って何万トンという塊の中から米粒程度の原石を見つけるような作業なので。映画にもなってましたけど、お金もすごくかかるし、貴重品だからそれによる紛争も絶えない。

安田

ははぁ、なるほど。そうなると、ますます人工ダイヤのニーズが高まりそうですね。プロでも見分けがつかないくらいの品質ですし、宝飾品として身に付ける分には充分のような気もしますけど。

望月

宝石に何を求めるかでしょうね。「地球内部で何億年もかけて作られてたものが奇跡的に地表に現れた」という物語性や神秘性を重視する人は、天然物の方が価値が高いと感じるでしょうし。

安田

ふーむ。今のダイヤモンドの価格は、そういう観点から付けられているわけですもんね。その価値観に納得して高い金額を払っていると。

望月

そういうことです。人工ダイヤを人々がどう評価するのか、今まさに市場で試されている最中だと思います。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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