第20回 日本は中古ジュエリーの宝の山

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第20回 日本は中古ジュエリーの宝の山

安田

「海外から中古の宝石を買いに来る人が増えている」と耳にしたんです。これってつまり、日本にはいい中古ジュエリーが集まっているってことですよね。望月さんも以前、「ある程度上の年代の方は、すごくいい宝飾品を持っている」と仰ってたなと。


望月

仰るとおりです。世界の宝飾マーケットで考えると、日本は売る市場ではなく、買う市場になっています。

安田

ああ、やっぱりそうなんですね。それにしても、昔の日本人は本当にジュエリーが好きでしたよね。


望月

本当に。僕がこの業界に入った頃は、飴玉3つ分くらいの巨大なエメラルドやルビーがよくマーケットに出てましたから。そんな大きなものがゴロゴロしてたんです。

安田

飴玉3つ分! 1個いくらくらいするんですか?


望月

高いものだと100万とか200万とかですね。僕らは卸しだったので、それを箱単位で商売していました。既にバブルがはじけて何年も経った頃でしたが、今の100倍くらいは流通していましたね。あの宝石、どこ行っちゃったんだろう……。

安田

笑。それが今市場に出回っていないということは、買った本人がまだ持っているってことなんじゃないですか?


望月

そうそう。タンス預金じゃないですけど、ひっそりどこかに眠っているんじゃないかと僕は思っていて(笑)。

安田

なるほど(笑)。でもそういうケース多そうですよね。自分ではそんなに価値があると思っていなかったり、既に亡くなっていて古い家にそのまましまわれちゃっていたり。そういう中に、とんでもなく価値のあるものも眠っているのかもしれません。


望月

そう思います。実際そういう情報をもとに買取に行って、今風のデザインに作り直して売っている業者さんもいますよ。

安田

ああ、そうでしょうね。100億売っている宝石のリフォーム屋さんを知っていますが、日本で仕入れたものを国外で販売して成功していたりします。


望月

そうでしょうねぇ。そういう意味では、日本ってまさに「宝の山」なんです。あまり自覚はないでしょうけど。

安田

時計も同じだと言いますよね。日本人は物を大事にするから、状態のいい中古の腕時計がたくさん眠っている。それを安く買い取って、海外で高く売っている。


望月

そうそう。うまい商売をしているなと思います。時計に比べると宝石の発掘はまだまだこれからで、今手を付けられているのは氷山の一角だと思います。

安田

まだとんでもない数の宝石が家庭に眠っているというわけですね。実際うちの両親の家も、母親が持っていた宝石類なんてそのまま放置ですからね。


望月

そういうお宅は多いでしょうね。バブル時代に売買されたものが、金やプラチナなどの地金も含めて金鉱脈のように埋まっているんだと思います(笑)。

安田

すごいなぁ(笑)。ちなみに以前、石をきれいに磨いて土台の金属を溶かして作り直したら、中古も新品も見分けがつかないと仰ってましたよね。日本で仕入れた宝飾品をリフォームして、海外で「新品」として売られてるケースもあるんじゃないですか?


望月

全然あると思いますね。マネーロンダリングじゃないですけど、その可能性は高いと思います。

安田

やっぱり。しかも今日本は円安だから、日本で安く仕入れて、海外で新品として20倍30倍の値段で売られているかもしれない。

望月

つき合いのあるインドのダイヤメーカーの社長も、年がら年中「望月さん、なにか売るものないか」って言ってきますから(笑)。「うちはそんなにないよ」といつも断っているんですけど。

安田

ちなみに、どうして日本国内のジュエリーマーケットは活発じゃないんですか? 日本全体が貧乏になっているとはいえ、一部の富裕層はすごくお金を持っているイメージなんですけど。

望月

うーん、どうなんでしょう。ブランド物の方に流れているのかもしれませんね。

安田

ああ、そうか。お金がある人はブランド物に行くんですね。確かに以前も「宝石」というだけでは日本人は買わない、ブランドが大事なんだって話が出てましたもんね。

望月

ええ、まさにそう思います。結果、どんどん宝石屋が減って、市場も小さくなっていっているところで。

安田

なるほどなぁ。一方で、価値ある宝石はどんどん海外に出ていってしまうと。うーん、日本ってそういうこと多くないですか? 浮世絵のような本当に価値のあるものも、とっくに海外に買われて国内には残ってないと言われますよね。

望月

そうなんです。まさに宝飾業界も同じことが起こっている。それを食い止めるためにも、「ジュエリーリフォーム」ということをもっと多くの方に楽しんでもらいたいなと思うんです。

安田

そうですよね。ちなみに海外のジュエリーリフォームってどうなんですか? どちらかというと、「資産として」持ってる人が多いイメージがあります。どう考えてもデザイン的にはイマイチな、すごく太い金のネックレスとか(笑)。

望月

笑。確かに海外では金=資産という感覚が強いですからね。あまりデザインアイテムとしては考えていないのかもしれません。

安田

なるほど。ともあれ、ご自宅に宝飾品が眠っているかもしれない人は、ぜひ一度調べてみてほしいですね。そしてRefineで素敵にリフォームしてもらってください!


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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