母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。
第30回 ジュエリー職人だけが知る、金の裏側
宝石に関しては、専門家が見れば本物かどうかはある程度わかると思うんです。でも金は純金と言われる24金だけでなく、18金や14金なんかもありますよね。そういうのも見ればわかるものなんですか?
基本的にはすべて刻印が入っているんです。その「K14」や「K18」といった表示が判断材料になりますね。
ああ、なるほど。確かに刻印が入ってますね。でもその刻印が間違っていたり、偽物だったりすることはないんですか?
うーん、なくはないです(笑)。例えば先端のプレートや留め具の部分に刻印が入っていることが多いんですが、その刻印のある部分だけが本物で、それ以外は偽物というケースも稀にあります。
うーむ、作為的ですねぇ。そういう場合はどう見分けるんですか?
気になる場合は専門業者に持っていって、X線の機械を通して判別してもらうんです。
ははぁ、なるほど。怪しい場合は専門家に鑑定してもらうと。でも、そもそも「これ、なんか怪しいな」と気づく必要がありますよね。それは長年ジュエリーを見続けてきた経験からわかるわけですか。
それはあると思いますね。金の買い取りをしていた頃に、かなり巧妙な手口まで見てきましたから(笑)。
ほう、例えばどんな手口が? すごく興味があります(笑)。
笑。インゴット、つまり金の塊がありますよね。あれって封を開けていない状態だと、プラスチックケースに入っているんです。で、ケースに入っているからと安心して購入したら、中身が金メッキの貼られたタングステンだったことがあって。
なんと! でも金の塊というと、かなりの金額ですよね。それこそ購入前に機械でチェックしなかったんですか?
比重検定機械ではチェックしていたんですけど、タングステンは比重が金と非常によく似ているので気が付かなくて。本当に調べるには、溶かすか特定の試薬を使うしかないので、簡単には試せませんしね。身分証も提示されていたので油断してしまいました。
なるほど…いやぁ、それはなかなか巧妙ですね。じゃあ気付いた時には後の祭りですか。
ええ、そうでした。勉強代にしてはかなり高くつきましたね(笑)。
うーむ、なるほど、すごい世界だ。でもそこまで大きなものじゃないにしても、一般のお客さんが偽物を買わされていたなんてことはないんですか?
そうですね。普通のきちんとしたお店で買う分にはまず大丈夫だと思いますよ。
ああ、よかったです。安心しました。…ちなみに18金とかの刻印って誰が入れるんですか?
基本的には、製造したメーカーや職人が入れます。例えば私たちが作るジュエリーでも、職人が18金の刻印を機械で打ちますしね。ちなみに刻印自体の品質も経験で分かるんです。刻印が雑だったり汚かったりすると、「これは怪しいな」となります。特に外国製のものは注意が必要ですね。
へぇ〜、やっぱり経験が物を言うんですねぇ。ちなみに金を買い取るときの価格はどう決めるんです?
その時の相場プラス手数料をいただいて買い取りさせていただいてますね。最近は特に金の価格が上がっているので、買い取り価格を聞いて驚かれる方も多いですよ。ちょっとしたジュエリーが数十万円になることもあるので。
そうなんですね! それはすごいなぁ。ちなみに同じ18金でも、ホワイトゴールドやピンクゴールドなどいろいろ種類がありますよね。あれはどういうことなんです?
18金は金の割合が75%ということなんですが、残りの25%に銀や銅を入れると普通の18金になります。それをパラジウムにするとホワイトゴールド、銅を多くするとピンクゴールドになるんです。その中でも今一番値段が高いのはホワイトゴールドですね。
ふーむ。つまりホワイトゴールドに入っているパラジウムが高いわけですか。
仰るとおりです。一時期には1グラム1万円を超えたりもしてましたからね。今はだいぶ落ち着きましたけど。
なるほどなぁ。そういう地金を加工した時の削りくずなんかはどう計算するんですか?
ある程度はどうしても出てしまうので、だいたい1割くらいは減る想定で計算をしています。
なるほどなるほど。でも粉になって飛んで行ってしまうわけで、集めようがないですよね(笑)。
まぁそうですね(笑)。職人さんの作業場を大掃除したら、けっこうな金が出てくるかもしれません(笑)。
ちなみに指輪とかは石と一体化してますけど、そういう場合も計算できるんですか?
石のカラット数が品物に記載されているので、それをもとに計算します。1カラットは0.2グラムですから、それを差し引いて金の重量を算出するんです。
ああ、カラットって重さなんですね! 大きさだと思ってました。
そうなんです。ただし、真珠やサンゴなどカラット数が記載されていないものもあるので、その場合は経験で見積もります。
それでわかっちゃうんですねぇ。そう考えると「ジュエリーリフォームアドバイザーになりたい」という人は、日頃からたくさんのジュエリーを見ておくことが必要かもしれませんね。
そうですね。数多くのジュエリーに触れることで、だんだんと感覚がつかめてくると思います。
金の世界も奥が深いですねぇ。仕事をしながらこういう裏話も知れると思うと、なんだか楽しそうです。
対談している二人
望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表
25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。