第35回 金とプラチナの価値が逆転した理由

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第35回 金とプラチナの価値が逆転した理由

安田

今日は金属と貴金属の違いについて聞いてみたいなと。宝飾品に使われる「貴金属」は、一般の金属とはどんな違いがあるんでしょうか?


望月

それでいうと、産出量が少なくて、変色しにくい特性を持つものを「貴金属」といいます。まぁ、いろいろな定義があるので必ずしもそれだけではないのですが。

安田

なるほど。希少価値があって、加工しても美しさが長持ちする金属が多いわけですね。金、銀、プラチナなんかが当てはまりそうですね。


望月

ええ、まさに。あとはパラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムで、全部で8種類ですね。宝飾品に使われるのはパラジウムくらいまでなので、私もそれ以外は名前を知ってるくらいですが。

安田

へぇ、そうなんですね。使われないものは、産出量が少なすぎるとか、加工しにくいとかっていう理由なんでしょうかね。…そういえば、銅は貴金属に入らないんですね。


望月

そうですね。銅は酸化して変色しやすいし、産出量も多いですから。

安田

ああ、なるほど。ちなみに貴金属の定義である「変色しにくい」とか「産出量が少ない」というのは、はっきりした基準はあるんですか? 数値とか成分とか。


望月

いや、ないと思います。

安田

うーむ、貴金属が8種類と限定されてるわりには、境界線が曖昧な気がしませんか? 今貴金属とされているものも、海水から金を取り出すような技術ができたら産出量が激増するかもしれないわけで。


望月

まぁ、なかなか考えにくいですけど、そういう採掘技術が進歩すれば、可能性はゼロではないでしょうね。

安田

だってイーロン・マスクが月に行く時代ですから。もしかしたら月で鉱脈を見つけてくるかもしれない(笑)。


望月

確かにそうですね(笑)。ダイヤモンドでできた星が発見されたこともありますから、そんなことがあったらおもしろいですね。

安田

そうですよね。でも貴金属が入れ替わるくらいの産出量の変化があったら、価格も大きく変動するんでしょうね。金がプラチナより高くなる、なんて日も来るかもしれない。


望月

あ、それはもう来てますね。今は金の方がプラチナより全然高いので。

安田

えっ、そうなんですか! ずっと「なぜ金よりプラチナの方が高いんだろう」と思ってましたよ。


望月

昔は仰るとおり、プラチナの方が圧倒的に高かったんですが、2011年頃に逆転して、そこからは金の方が高いですね。プラチナも最高値より安くなりましたし、それ以上に金が爆上がりしていて。

安田

そうなんですね。それは産出量に伴う変化なんですか? 金の量が減って希少価値が上がったとか、プラチナの量が増えたとか。


望月

それでいうと、産出量はもともと金がプラチナの10倍以上あるんです。そこから大きく増減したということはないと思いますね。

安田

ほう、なるほど。じゃあ産出量が少ないプラチナの方が高かったというのは理にかなっていたわけですね。

望月

そうですそうです。プラチナがもともと希少な鉱物だったのと、自動車の排ガス浄化触媒によく使用されていて。バブルの頃は特に自動車産業が盛んだったので、そのぶん需要も多かったという。

安田

そうか。その辺りの需要が減ってきて、プラチナの値段も一時期ほどではなくなったと。

望月

そういうことです。プラチナに代わる金属が出てきたりもしましたからね。一方、金の方は戦争などの有事の際に投資の対象として高くなっています。

安田

ははぁ、なるほど。…ん、でも、金より高かったプラチナが投資対象になっていてもおかしくなかったんじゃ?

望月

日本では宝飾品としてのイメージも強いプラチナですが、世界的に見ると産業用として使われることがほとんどなんです。だからなかなか投資の対象にはならない。東南アジアやアラブ系も含めて、すべて金が主流です。

安田

へぇ、じゃあこんなにジュエリーにプラチナを使ってるのは日本だけなんですか。でもダイヤの指輪なんかだと、金よりもプラチナの方が映える気がしますけどね。

望月

そうなんですけど、それこそが日本人特有の感覚なんだと思います。海外はもうゴールド一色という感じで(笑)。

安田

そんなにゴールドが好きなんですね(笑)。ところで金って柔らかいイメージがありますけど、加工がしにくかったりしないんですか?

望月

純金であれば確かに柔らかいんですけど、18金にすれば加工のしやすさや耐久性は問題ないと思います。

安田

ふ〜む、ということは、日本でプラチナが主流なのは、見た目の問題なんですかね。

望月

そう思います。あまり派手過ぎないものを好む傾向が表れてるんでしょうね。

安田

ああ、なるほど。ちなみにジュエリー以外で、ロレックスのような高級腕時計にもステンレスシリーズ、ゴールドシリーズ、プラチナシリーズとランクが上がっていきましたけど、それも逆転してるんですかね。

望月

どうなんでしょう。ただ、ジュエリーに関して言えば、ここ数年は日本でも金が増えてきた感じがします。ファッションリングなど、昔はプラチナ一辺倒でしたけど、今は半々もしくは金の方が多いくらいです。

安田

なるほど。デザイン面でも世界基準になってきてるわけですね。実は私、パテックフィリップのプラチナの時計を持っているんです。今日お話を聞くまでずっと「金より高いんだぞ」と思っていたので、ちょっと複雑な気分です(笑)。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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