第5回 ジュエリーは市場価値ではなく「◯◯価値」に注目する

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第5回 ジュエリーは市場価値ではなく「◯◯価値」に注目する

安田

前回はジュエリー修理・リフォームの「Refine」(リファイン)を始められた頃のお話をお聞きしました。お客さんにもすごく喜んでもらえて嬉しかったと。


望月

ええ。お客様から直接お礼のお手紙をいただけたりもして、本当に素敵な仕事だなと思いましたね。

安田

お客さんからの声ほど励みになるものはないですもんね。ちなみにお客さんはどんな目的で「Refine」にいらっしゃることが多いんですか?


望月

ご来店いただく理由としては、大きく分けて2つあります。1つはジュエリーの修理や加工ですね。「ネックレスが切れてしまった」とか「指輪のサイズを直したい」とか。そしてもう1つがリフォームで、「デザインをガラッと変えたい」というご要望です。

安田

ふむふむ。「修理」と「リフォーム」に分けられると。年齢層としては、いくつぐらいの方が中心なんでしょうか?


望月

そうですね、修理の場合はさまざまですが、リフォームは比較的年齢の高い方が多いです。

安田

へぇ、それは意外です。リフォームの方が若い層が多いのかと思ってました。例えば20代の方が「おばあちゃんから譲り受けたジュエリーを今風のデザインに変えたい」みたいなことで来られるのかなと。


望月

ああ、確かにそういうケースもなくはないんですが、実際にご依頼いただくのは40〜60代の方がほとんどですね。というのも、リフォームになると単価が10万〜30万円くらいにはなるので。

安田

なるほど。若い方だとなかなか気軽に頼めない金額なんですね。


望月

そういうことです。ただご要望の内容としては、まさに安田さんが仰ったようなものです。つまり「おばあちゃんの形見やお母さんから譲り受けたものをリフォームしたい」というような。

安田

ああ、やっぱり。タイミングが違うだけで、内容はそういうものが多いと。


望月

ええ。自分で買ったものではない、譲り受けたものの場合が多いですね。

安田

そうか、自分で買うときは、デザイン含めて気に入ったものを買うわけですもんね。一方で譲り受けたものだと、その方への思い入れはあるけど、デザインそのものは好みじゃない場合もある。だからリフォームして、自分好みにアレンジするわけだ。


望月

そうそう。アレンジして自分好みにすることで、気持ちよく身につけられるようになる。「今までは眠らせてしまっていたけど、これで使えるようになった」と喜んでもらうことが多いです。

安田

なるほどなぁ。身に付けることで、その方と共にある感じがしますもんね。


望月

そうなんです。それがジュエリーの魅力の1つでもあって。

安田

でもふと思ったんですが、10万〜30万円もかけてリフォームするということは、元々のジュエリー自体がすごく価値のあるものなんでしょうか。というのも、5万円の指輪に30万円のリフォーム代をかけるものなんだろうかと。


望月

ああ、なるほど。それで言うと、ジュエリーって単に市場価値だけでは決められないところがあって。僕らはそれを「大切価値」と呼んでいるんですが、そのお客様にとってどれくらいの価値があるものなのか、という視点が存在するわけですよ。

安田

ああ、「元は5万円の指輪だけど、お婆ちゃんの大切な形見だから、30万かけてでもリフォームしたい」というようなケースがあるわけですね。


望月

仰るとおりです。実際、ジュエリー一つにすごく壮大な物語があったりもする。「何十年前に◯◯に旅行に行ったとき、大切な人に買ってもらった」と、そういう昔話を聞きながらリフォームのデザインを考えていったりして。

安田

ははぁ、なるほど。そう言われると、確かに市場価値だけでは測れないですね。ちなみにリフォームだけじゃなく修理の場合もそうなんでしょうか。


望月

ええ、同じですね。ただ、聞くところによると他店では市場価値だけで判断することも多かったり、少しでも修理に危険性があると「これは無理です!」って一言で断っちゃうケースもあるらしくて。

安田

つまりお店側が「市場価値のないジュエリーだから直す価値はない」と勝手に判断したり、何かあって面倒な事になると困るから断ってしまうと。修理したいお客さんは困っちゃいますね。

望月

そうなんですよ。そうやって2軒3軒と断られてしまって、それでうちの店に辿り着くお客さんもいて。そういう場合は尚更、「どんなジュエリーなんですか?」「どうしてそこまでして直したいんですか?」と伺うようにしています。

安田

なるほど。「大切価値」についてしっかりヒアリングすると。

望月

仰るとおりです。そうすると、「こういう思い出があってぜひ直したい」とか「これをもらった人に来週会うから、その時に付けていきたい」とか、いろいろな話が出てくる。それを理解した上で、目的や要望に沿ったプランをご提案していますね。

安田

2軒も3軒も断られてきたお客さんだから、すごく喜ぶんじゃないですか?

望月

そうなんです。そうやって提案をさせていただくと、「え、やってくれるんですか?」と本当に喜んでいただけますね。

安田

なるほどなぁ。お客さんからしたら、いわば駆け込み寺的な存在なわけですね。

 


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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