第198回「ハロワ求人の真実」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第197回「焼肉事業の未来」

 第198回「ハロワ求人の真実」 


安田

ハロワ採用のその後について教えてください。

石塚

まず2年前にハローワークの申請システムがすべて一新しました。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。コロナの影響で。わざわざ所轄のハローワークに足を運ばなくても、求人票を電子申請できるようになった。これがいちばん大きい変化です。

安田

昔は「必ずハローワークに行ってください」って言ってましたよね。

石塚

そうなんですよ。会社側からすると、求人を申し込んだり、つくったりするのが、すごく楽になった。

安田

求人票の中身はどうですか?「ちゃんと情報発信している会社がない」って、おっしゃっていましたけど。

石塚

相変わらずハローワークは求人票のレベルが低いです。構造はどんどんハイテク化してるんですけど。

安田

ハイテク化してるんですか。

石塚

Google検索で上位になりやすいように、スマホ連動、Google連動はとてもいいです。

安田

へぇ~。

石塚

たとえばIndeedに出ている求人情報をポチッと押すと、「IDとパスワードを入力してください。もしくは新規登録してください」って出るわけです。

安田

出ますね。

石塚

これ面倒くさくないですか?

安田

面倒くさいです。

石塚

中身を見ようと思ったら新規登録しなくちゃいけない。「面倒くさいなあ」ってなる。ところがハローワークは、ポチッとやるとぜんぶ情報が出てくる。

安田

登録しなくても?それはどうして。

石塚

要するに有料媒体はぜんぶ見せたくないから。囲いたいから。

安田

なるほど。登録させたいと。

石塚

登録させたい。けど、べつにハローワークはそんな縛りがないので。

安田

ユーザビリティ最優先でいけるわけですね。

石塚

その通りです。

安田

ということは有料媒体よりも使いやすい?

石塚

求職者にとって探しやすいし、見やすいです。

安田

若い求職者もよく使ってるんですか?ハローワーク。

石塚

目につきやすいから使いますよね。

安田

若い子にとってハローワークって、どんなイメージなんでしょう。

石塚

リクナビやIndeedと変わらないです。

安田

へぇ~。

石塚

求人媒体のブランド価値って、今はほとんどないですから。

安田

あんなにCMやってるのに。

石塚

はい。とくに30歳以下は顕著ですね。

安田

じゃあ何のためにテレビCMやってるんですか。

石塚

僕も不思議です。「誰のための宣伝なのかな」って。

安田

つまり30歳以下は求人サイトにこだわらないと。

石塚

「このサイトで調べよう」という意識はないでしょうね。職種や地域でググるだけ。

安田

じゃあ有料媒体に求人を出す必要性はない。

石塚

正直あまりないですね。

安田

中には「これは有料媒体を使ったほうがいい」という案件もあるんですか。

石塚

知名度のあるお客さんは、有料媒体・求人サイトを組み合わせると効果がいいです。

安田

それはどうして。

石塚

ネームバリューのある会社はワンショットの効果が大きいから。1回出すだけで十分なんですよ。

安田

知名度がないとそうはいかない?

石塚

知名度がないと掲載期間を長くするしかない。媒体会社はそんな話はしませんけど。

安田

つまり1回の掲載では採用できないと。

石塚

そう。目につきにくいから。会社名で探さないし。そうすると「エリア×求人ジャンル×こだわり」という、絞り込みの勝負になっちゃうわけですよ。

安田

そこの勝負になると1回掲載では無理なんですか。

石塚

ターゲットが少ないですから。1回だとギャンブルと同じになります。本気で採りに行くなら長期掲載するしかない。

安田

ターゲットを広げるとどうなるんですか?

石塚

応募が来ない。来ても採用に結びつかない。

安田

なるほど。だから知名度が低い会社は無料媒体を活用した方がいいと。

石塚

そういうことです。

安田

ちなみにハロワは「優秀な人が採れない」「専門職は採りにくい」というイメージがあるんですけど。

石塚

先日、長岡(新潟)の歯医者さんで歯科衛生士さんが3名採用できました。

安田

それはハローワークだけで?

石塚

そうなんですよ。歯科助手・受付も採れました。地方企業さんは絶対ハローワークをやったほうがいいです。

安田

媒体費はゼロですよね。

石塚

ゼロです(笑)

安田

期間はどれぐらいですか。

石塚

3〜5ヶ月を想定してたんですけど、2ヶ月足らずで終わっちゃいました。

安田

すごいですね。他の歯科医院はハロワに求人出してないんですか。

石塚

出しているのですが、中身スカスカな求人票ばかりです。「うちはここが違います」「こんな方にマッチします」というポイントをちゃんと載せてあげれば効果が出ます。これは歯科医院にかぎらず。

安田

もっとたくさん書かなきゃダメだと。

石塚

スカスカというのは情報量の問題ではないんですよ。中身のある、求職者に刺さる情報をちゃんと書いてあげないと。

安田

つまりソフトが大事ってことですか。

石塚

おっしゃる通り。媒体にお金使うより、ソフトにお金を使ったほうが、はるかに安上がりだし効果が出る。

安田

なかなかそれに気づかない人が多いですね。

石塚

本当にそうで「なんでやらないのかなあ」って思う。だって、やったところはほとんど結果が出ているわけですから。

安田

安い方が効果出るなんて信じられないんでしょうね。

石塚

結局、経営者ってそう考えるんですよ。「なかなか採れないんだったら、よりお金を使わなければ」って。「ちょっと待った」って言いたいですけど。

安田

もったいないですね。

石塚

残念ながら中小企業の経営者は人に関するリテラシーが低すぎます。

安田

知り合いの経営者に話をしたら、みんな石塚さんを紹介してくれって言いますけど。

石塚

安田さんの知り合いはリテラシーの高い人が多いんですよ。

安田

ちなみにこの求人票って石塚さんが自分で書いてるんですか?

石塚

自分で取材して、自分で考えて、自分で書いてます(笑)

安田

大変ですね(笑)

石塚

だから月マックス10件しか出来ません。

安田

人を育てて代わりにやらせようとは思いませんか?

石塚

思いません。教えても出来ないと思うし、僕は求人票を作るのが大好きなんですよ(笑)

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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