第107回 家を引き立てる「似合う庭」のつくり方

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第107回 家を引き立てる「似合う庭」のつくり方

安田

今日はあらためて「ガーメントデザイナー」という肩書きについて伺いたくて。確かこの言葉を作ったのは4~5年前でしたよね。「家に着せる洋服をデザインするように庭を考える」そんな意味合いだったと思うんですが。


中島

ええ。庭は家にとってまさに洋服のような存在です。季節によって着替えるように花が咲いたり葉が茂ったり、あるいは枝だけになっても景色をつくり出す。

安田

なるほど。つまり“コーディネート”の重要な部分を担っていると。だからこそ家と庭の「マッチ感」が重要ってことですよね。


中島

仰るとおりです。例えばカーポートでも、平屋の小さな家の前に分厚い屋根のものを置くと、家そのものが隠れてしまう。そうなったらコーディネートどころではないわけです。

安田

それじゃあ全身を覆うような大きな帽子をかぶっているようなものですね(笑)。


中島

そうなんです(笑)。だからこそしっかりと調和を意識する必要がある。重厚感のある大きな家には太い木も似合うんですが、繊細さを意識した家と合わせると強すぎてしまったり。

安田

要するに「本人(家)に似合うかどうか」ってことですもんね。体型や顔立ち、雰囲気によって「可愛く見える」「知的に見える」のバランスは変わるわけで。庭づくりも本質はそこにある気がします。


中島

ええ。まずはその家がどんな家なのかをしっかり把握して、庭だけが浮かないよう家と一体に見えるよう整えていく。庭だけ派手にしても仕方ないので。

安田

逆に家だけ立派で庭が全くないのも不自然ですもんね。両方がほどよく引き立て合うのが一番美しい。そのバランスが大事だと。


中島

ええ。和風の建築なら日本庭園も合いますが、洋風建築に日本庭園を合わせれば当然違和感が出る。それを意図的に狙うケースもあるかもしれませんが、家と庭を別個で考えた結果そうなっているのなら、職人としては残念だなと感じますね。

安田

でも実際には「作ってくれと言われたから作った」というケースも多いんでしょうね。わかっていてもお客様の要望をそのまま形にしてしまう。似合わない服を「お似合いですよ」と売るブランドショップみたいに。


中島

そうですね…。そういう場面も少なからずあるのかもしれません。ただ僕自身は、やはり「似合う」ことを大事にしたくて。

安田

実際人も、似合う服を着ると人とすごく魅力的になりますもんね。本人としても髪型や服装を変えることで自信がついたり、明るくなったり。庭も同じで、見た目だけじゃなく住む人の気分まで変わるじゃないですか。


中島

実際にそういうお声をよくいただきますね。「最初は手間がかかるかなと心配していたんだけど、気づいたら毎日のように庭に出て眺めているの」なんて仰っていただいたりして。

安田

それは素敵なお話ですね。それに洋服でもそうですけど、高ければいいってもんでもないんですよね。「その人に似合っていること」が重要なのであって、そこの見極めが一番大事。


中島

仰るとおりです。高価な素材を集めるのは簡単ですが、それだけで必ず「心地よい庭」ができるわけでもないですから。

安田

住む人の求めるものも違いますもんね。静かに過ごしたい人もいれば、人を呼んで賑やかに楽しみたい人もいるし、庭に出て自然と触れ合いたい人もいる。

中島

ええ、仰るとおりです。そのあたりのヒアリングは本当に大事ですよね。そういった実現したい未来と、家が醸す雰囲気をどうマッチングさせていくか。そこが僕らの勝負どころなんです。

安田

なるほど。話を聞けば聞くほど、ガーメントデザイナーは「スタイリスト」のようなお仕事だと感じますね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから

CAPTCHA