第110回 「手間」が「愛着」に変わる庭との付き合い方

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第110回 「手間」が「愛着」に変わる庭との付き合い方

安田

いつも中島さんは「庭のメンテナンスは、あまり面倒だと続かない」と仰っていますよね。ただメンテナンスがないからといって、コンクリートだけの庭では味気ない。このバランスこそ、庭づくりの永遠のテーマなんじゃないかと思うんです。


中島

そうですね。手間がかからなすぎると無関心になってしまいますし、かかりすぎると負担になってしまう。そのご家庭にとっての「ちょうどいい塩梅」を見つけることも、我々の大事な仕事だと思っています。

安田

趣味だって、実は面倒なことの塊だったりしますからね。料理にしても旅行にしても、下調べや準備が大変だし。でもその面倒な過程があるからこそ、達成感や喜びも大きい。もしかしたら、庭いじりもその面倒さ自体が楽しさの本質なのかもしれないな、と。


中島

ああ、それは確かにそうですね。例えばバラを育てようと思うと、病害虫の管理や消毒など、本当に手間がかかるんです。でもだからこそ、見事に咲いたときの感動は何ものにも代えがたい。

安田

そうなんです! 私も桜の木を育てているのですが、自分で一年間手塩にかけた桜が咲いたときの喜びは、ただお花見に行くのとは全然違いますからね。「自分が咲かせた」という実感があるから、より愛おしく感じて。庭にもそうした住む人の「関わりしろ」が必要なのではないでしょうか。


中島

仰るとおりですね。ただそれが人によっては苦痛になってしまうこともあるのが難しいところで。

安田

確かになぁ。例えば「草むしり」なんて、大事な花を育てるためだとしても気が進まないです。終わりなき戦いというか、達成感が得にくいんですよね。抜いても抜いても生えてきますし(笑)。


中島

そうなんです。だからといって雑草を生えるままにしておくと、それだけで荒れた印象の庭になってしまう。ですから、草むしりの手間を極力なくすことを第一に考えています。そのためにも防草シートは必須ですね。

安田

ははぁ、なるほど。多くの人が挫折してしまう一番の原因を取り除いてあげるわけですね。逆に、落ち葉拾いくらいなら楽しめる範囲なのでしょうか。


中島

落ち葉拾いは、まだ楽しめる方が多いかもしれません。送風機などで集めれば比較的楽ですし、季節の移ろいを感じるきっかけにもなります。ただこれも量が多すぎると大変なので、常緑樹と落葉樹のバランスを考える必要はありますね。

安田

確かに。他に、普通の人が「楽しい」と感じられるメンテナンスというと、どんなことがあるんでしょう?


中島

やっぱり「花を咲かせる」ことだと思います。季節ごとに次々と違う花が咲く様子は、何よりの楽しみになりますから。必要なのは水やりと年に数回の肥料。特に花が終わった後にあげる「お礼肥」は大切です。

安田

なるほどなぁ。水と肥料、そして感謝の気持ちが大事だと。その愛情に応えて、木々が美しい花を咲かせてくれるわけですね。そのサイクルが生まれれば、庭への愛着もどんどん湧いてきそうです。


中島

まさにそうです。きちんと手をかけてくださっているお庭の木は、本当に生き生きとしていますから。逆に水も肥料もあげずにいると、木も元気がなくなってしまって、庭全体が寂しい雰囲気になってしまう。

安田

ははぁ、なるほど。住む人の心がそのまま庭に反映されるんですね。最初に庭を作ったときは喜んでくれたのに、だんだん手入れされなくなっていくのを見るのは、作り手として寂しいものがありますよね。


中島

そうですね。昔は防草シートを全面に敷いていなかったため、お客様によってお庭の状態に大きな差が出てしまうことがあったんです。それがきっかけで、今は雑草対策をより徹底するようになりました。

安田

そうかそうか。お客様が挫折しないための工夫を重ねてこられたわけですね。肥料をあげるタイミングなどもお知らせが来たらありがたいですよね。

中島

メルマガには季節ごとのメッセージも入れています。でももう少し丁寧にお手入れのポイントをお伝えしてもいいかもしれませんね。

安田

絶対その方がいいですよ。「この季節は水を多めにあげましょう」とか「おすすめの肥料はこちら」みたいな情報が届いたら心強いです。これからdirect nagomiさんからのメルマガが来たら、ぜひチェックした方がいいですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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