庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第113回 猛暑が変える、日本の「家と庭」の新常識

夏の暑さが年々異常さを増していますよね。その影響でこれまで敬遠されがちだった「北向きの住宅」の人気が急上昇しているとか。

はい、現場で仕事をしていてもそれは感じます。それに最近の異常な暑さは、植物たちの生態系にも大きな影響を及ぼしているんです。人気の高いアオダモという木があるんですが、私の自宅でも、この暑さのせいで10月のはじめには葉を落としてしまって。

そういえば、うちのベランダで育てている桜の木も妙なことになってまして。一度夏に葉が全部落ちたのに、しばらくしてまた新しい葉が生えてきて、今また青々としているんです。これも暑さの影響なんでしょうか?

以前のお話で中島さんが「昔は南向きの庭が常識だったけど、今は変わってきた」と仰っていたのを思い出しました。その時は斬新に聞こえましたが、いよいよそれが当たり前になる時代が来たのかなと。

そうかもしれません。ちなみに最近は軒(のき)がほとんど出ていない、箱のようなデザインの家が非常に人気なんですが、こういった箱型住宅と猛暑は相性が悪いんですよ。

家の中で最も熱が出入りするのは、やはり窓なんです。特に夏場の高い位置からの強烈な日差しを防ぐのに、昔ながらの深い軒は非常に効果的でした。でもその軒がないと、南向きの大きな窓から容赦なく日光が入り込んで、室温を急上昇させてしまう。

そうですね。そもそも植物の多くは、強すぎる日差し、特に西日を嫌うんです。西日によって葉が焼けたり、色が褪せたりしてしまうこともあるので。むしろ北側の柔らかな光が当たる場所の方が、生き生きと綺麗に育つ植物は多いんです。

もちろん芝生のように、強い光を好む植物もあるので、一概には言えないんですけどね。北側で芝生を育てようとすると、日照不足と湿気で苔が生えてきてしまう。まぁ苔は苔の美しさがありますから、それも好みの問題ではあるのですが。

ああ、そういう側面もあるわけですね。それにしても、猛暑というネガティブな要因が家と庭に対する固定観念を壊し、新しい価値観を生み出すきっかけになっている。そう考えると、なんだか希望が湧いてきます。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















