庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第116回 「緑豊かなマンション」が息苦しくなる理由

そうそう。まさにそういう気持ちで久しぶりに見に行ったら、様子が一変していて。竣工からまだ1年ほどのはずなのに、木々が伸び放題で、鬱蒼としているんです。特に2階の住戸なんて、ベランダの前が枝葉で覆われて、昼間でも薄暗いんじゃないかと心配になるほどで。

そうかもしれません。ただ、その木々を適切な大きさで維持し続けるには、年に最低でも2回、専門の職人が入って、かなり大掛かりな剪定をする必要があります。しかもただ伸びた枝先を切るだけでは、すぐにまた樹形が乱れてしまう。木の骨格から作り直すような、高度な技術が求められます。

分譲マンションだと、その費用はすべて住民の管理費から捻出されるわけですよね。庭の維持にそこまで高額な費用をかけることに、住民全員の合意を得るのはなかなか大変そうです。修繕積立金だけでも負担は大きいですから。

ええ。結果的に、費用を抑えるために年に1回の簡単な剪定で済ませたり、あるいは手入れが行き届かなくなったりする可能性も考えられます。そうなると、安田さんがご覧になったように、あっという間に薄暗く風通しの悪い場所になってしまうかもしれません。

まさにそんな状態になりつつあるように見えました。この先、3階、4階へと木が伸びていったら、どうなってしまうのか…。下の階の住民にとっては、少し大変な状況になりそうですね。もし中島さんに「この庭をなんとかしてほしい」と依頼があったら、どうしますか?

うーん。管理の手間や長期的なコストを考えたら、剪定での維持管理と合わせて、植え替えも選択肢としてご提案すると思います。その場所に合った、成長の緩やかな樹種に入れ替えるのが、結果的に皆さんのためになると思いますので。

そういうことです。ただ一番の問題は、こうした経験を通して、住民の方々が「木なんてない方がマシだ」と思ってしまうことなんです。植栽の計画一つで、緑そのものがマイナスの印象を持たれてしまう。これほど悲しいことはありませんから。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















