第26回 四季を楽しむお庭のベストなバランス

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第26回 四季を楽しむお庭のベストなバランス

安田
中島さんは常々「四季を感じられるお庭」を意識されているということでしたよね。お庭で四季を感じるというと、私の中では季節ごとに咲く花が思い浮かぶのですが、他にも何かあるんでしょうか?

中島

花ももちろんですが、木もいいですよ。例えば新緑の頃には、芽吹いたばかりの黄緑色の葉がすごくきれいで。

安田

へぇ、なるほど。花だけでなく、木にも四季があると。確かに花を植えるだけだったら、「造園」というより「ガーデニング」という感じですもんね。


中島
そうですね。特に落葉樹にはわかりやすい変化があります。冬の木立ちの少し寂しげな雰囲気から、春になって新緑がつくと、フワッとした柔らかさが出て来る。秋には紅葉も楽しめますしね。常緑樹にも花が咲く種類があったりするんですが、季節ごとの変化という意味では、落葉樹の方が楽しめるでしょうね。
安田

なるほど。確かにそうですよね。冬になって葉を落とした姿も、それはそれで味があっていいもので。


中島

そうなんです。そして、葉を落とした姿も美しい景色になるように切るのが、私たちの腕の見せ所でもあって。そういう四季の演出については、けっこうこだわってやっています。

安田
へぇ。それこそ職人の技ですね。でも、落葉樹ってそうやって季節を楽しめる一方で、落ち葉の掃除もしなきゃいけないわけで、ちょっと大変そうだなとも思うんです。そういうのが嫌な人は常緑樹を選んだ方がいいんですか?

中島
ああ、いえ、掃除の手間という意味でも、実は常緑樹の方が大変なんです。落葉樹と違って、年間を通じてパラパラと葉を落としていくので。
安田
ああ、そうか。1年中ちょこちょこ掃除をしなきゃいけないと。その点落葉樹は秋の終わりにいっぺんに落ちますもんね。紅葉を楽しんだ後、まとめて掃除するだけでいい。

中島

そういうことです。ですから年末くらいにメンテナンスのご依頼をいただくと、一緒に落ち葉の掃除もさせていただけるので、ちょうどいいと思います。

安田

そうか。それもdirect nagomiさんにやってもらえばいいわけですね。家の人は紅葉を楽しむだけ楽しんで、後片付けはお任せでいいと(笑)。ちなみに紅葉するのは落葉樹だけなんですか?


中島
常緑樹の葉も、落ちる前に黄色くなったりはします。ただ、落葉樹のように一斉に色づくわけではないので、紅葉を楽しむなら落葉樹がおすすめですね。
安田

なるほど。お話を聞けば聞くほど落葉樹の方が魅力的に感じます。冬の葉っぱがないところから、春になって生き生きと新緑が育ち、秋には美しい紅葉も楽しめる。


中島

ええ、まさに季節を感じられる木だと思います。前回のお話で、葉が茂りすぎると家が暗くなってしまう、というお話をしましたね。そういう意味でも、日照時間の短い冬場には葉が落ちてくれた方が都合がいいですし。

安田
ああ、なるほど。葉が落ちない常緑樹だと、日陰になっちゃうんですね。冬場の日陰ほど寒々しいものはありませんから、確かに葉はない方がよさそうです(笑)。

中島
ええ。冬の落葉樹には遮る葉がないので、日光をたくさん取り入れることができる。一方で、日差しが強い夏場には、茂った葉によって適度にそれを防いでくれる。
安田
すごく理にかなってますね。お庭に植えるのは落葉樹だけでいいような気もしてきますが、逆に常緑樹の良さもあるんですか?

中島

1年中葉があるということで、目隠ししたい場所などには常緑樹が適していますね。リビングの前とかに植えることが多いです。

安田
ああ、確かに。季節に関係なく、部屋の中が丸見えでは困りますもんね。そうすると、リビングの周りは常緑樹を植えるとして、落葉樹はどのあたりに植えるんですか?

中島
四季を楽しんでいただけるよう、家の中から見える部分に植えることが多いですね。それから、帰宅されたときに目に入るよう、玄関の門柱の隣にも植えたりします。
安田
ははぁ、なるほど。極力四季が感じられるように配置しているわけですね。

中島
ええ。とはいえ、落葉樹ばかりにしてしまうと、「冬場はまったく緑がない」という状態になってしまいます。それはすこし寂しいので、バランスを見ながら常緑樹も取り入れていますね。例えば、背の高い落葉樹の下に50~60㎝ぐらいの高さの常緑樹を植えたり。
安田
なるほどなぁ。そういった細かな配慮があって、あの素晴らしい庭ができあがるんですね。

対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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