第42回 「リフォーム+リガーデン」で価値を増す空き家

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第42回 「リフォーム+リガーデン」で価値を増す空き家

安田

最近、空き家を仕入れて販売している社長さんと知り合う機会がありまして。人口減に伴って空き家が増えている中で、中古物件を買ってリフォームして売る、というのが流行っているそうで。


中島

ああ、なるほど。空き家なら、使えるところはそのまま使って節約できますもんね。逆に1000万円以上かけてフルリフォームするなら、新しく建てた方がいい気がします。

安田

そうですよね。で、建物自体はもちろんですけど、やっぱりロケーションも大事じゃないですか。実際、岐阜の山奥の家が売れた時も、そこから見える山々の景色が決め手になったらしくて。


中島

へぇ、そうなんですね。同じ岐阜県民として嬉しくなります。確かに、景色の良い喫茶店とかいいですもんね。雄大な景色を眺めながら飲むコーヒーはより美味しさが増したりして。

安田

そうなんですよ。その景色がお店の付加価値になって、お客さんも遠くから来てくれるし、多少高くてもお金を払ってくれる。まぁ、オーナーさんは景色には1円も払っていないわけですけど(笑)。


中島

そうですね。それが「借景」というものですから(笑)。

安田
庭造りをするときって、「その敷地内にどういうお庭を作るか」を考えがちだと思うんです。でももっと視野を広げて、周りの景色を取り込んだ庭が作れれば、空き家の価値が劇的に上がるんじゃないのかなと。

中島
同感です。私自身、「その場所の持っている価値」を最大に活かしたいという想いで、周りの景色も含めてデザインするようにしています。例えば夕日が沈む山々を眺められるベンチを作ったり。
安田
そこがdirect nagomiさんの素敵なところですよね。とはいえ、普通の住宅地だと「借景」といってもなかなか難しくないですか。山奥の喫茶店のように、景色のいい場所にテラスを作ったりはできないわけで。

中島

山中と同じようにはいきませんが、住宅街の中でもいろいろと工夫はできますよ。たとえば、まず建物が見えすぎないよう木を配置して、逆に家の中からは電柱などが見えないようにする。これだけで、かなり素敵な庭になると思いますね。

安田

ははぁ、なるほど。中島さんの得意分野ですね。都会だったら「駅から徒歩何分」や「スーパーが近い」という便利さが売りになると思うんですけど、やっぱり家の価値ってそれだけじゃない。


中島
そうですね。その土地ならではの価値を高めるお手伝いができれば嬉しいです。
安田

でも現状として、空き家をリフォームして売る時って、「一応生活できます」というレベルのリフォームしかしないらしいんです。そこから先は住む人が自由に手を加えてください、という感じで。でも、借景を取り入れた庭を付けた上で販売すれば、もっと高い値段で売れると思うんですよ。


中島

ああ、それはすごく面白そうですね! ぜひやってみたいです。ちなみに昔のお庭ってどうしても「見て楽しむ」ことがメインで、ちょっと使い勝手が悪いんですよ。そこを改善しつつ景色も楽しめるようにできたら、すごくいい空間を作れると思うんですよね。

安田

ははぁ、なるほど。そもそも日本って、家を使い捨てのように扱うイメージがあると思うんです。一回何十年か住んだら終わり、みたいな。だけどヨーロッパのように、何世代も住み続けてどんどん価値が上がっていくような家が増えたらいいなと。


中島

そうなっていくといいですよね。もっともお客様の中には、そもそも景色に関心がない方もいらっしゃいます。「家の中から山が見えるから、庭はそんなに作り込まなくてもいいよ」と仰って。

安田
へぇ、そうなんですか。うーん、それはもったいない気がしますけどね。

中島

そうなんです。私もそう思うので、周りの山々とつながるようにお庭をデザインさせていただくんですけど、実物を見ると「ああ、こうなるんだね。こっちの方がずっといいね」と仰っていただけます。

安田

なるほどなぁ。中島さんに実際にお庭を作ってもらうと、その価値がわかるんですね。まさに空き家に付加価値を付けているということですよね。「中島秀章が庭を作った家」というのがブランド化するのも遠いことじゃないですね。

中島

笑。そうなっていけるよう、さらに精進させていただきます。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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