庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第51回 お庭の中の「ニュートラルポジション」

「ニュートラルポジション」ってご存知ですか? いろんな場面で使われる言葉ですけど、要するに「正しい位置」みたいなことで。例えば家の中でも、一つ一つの物に定位置があって、物を使った後に必ず定位置に戻すことで、快適な生活が保たれる。

そうですよね。ちなみに私が以前通っていたスポーツジムは、ものすごく細かくニュートラルポジションが決められているところでした。「ベンチプレスの重りは棚の3段目にすぐ戻す」とか。「どうせまたすぐ使うのになぁ」と思いながら戻してましたけど(笑)。


ええ、そうなんです(笑)。お皿とか洋服とか、同じような種類でまとめてこの入れ物にこういう形で入れる、というところまで設計されているので、私はそれに従えばいいわけです。いつの間にか嫌いだった片付けが苦じゃなくなってましたね。

そう思います(笑)。だいぶ話が逸れてしまいましたけど、今日お話ししたかったのは、お庭のニュートラルポジションについて。お庭そのものにも、木や石それぞれにニュートラルポジションがあるんじゃないかと思ったわけです。

確かに日本庭園における松のように、整え方に「型」があればわかりやすいんでしょうけど。中島さんの作るような雑木のお庭だと、それこそ中島さん自身にしか「一番いい状態」がわからないのかもしれませんね。

ああ、まさにそういう感じです。そういえば千利休が修業中、師匠から庭の掃除を命じられて、葉っぱ一つないくらいきっちり掃いたと。でもその後にあえて木をゆすって枯葉を落とした、という話がありますよね。

まさに日本人の美意識を感じられるお話ですよね。僕も師匠から「もみじの葉っぱが道に落ちていても、ただ落ちているだけなら掃除するな」と言われました。端に寄っていたら汚く見えてしまうから掃除をしなさいと。

それで言うと、川沿いや大きな庭園に植えてあるもみじは最終スケールまで育っているので、放っておいてもきれいなんです。でもお庭だとそこまで大きくできないので、人の手でその形を再現する必要がある。それが難しいですよね。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。