第55回 これからは「南向きの家」を避けた方がいい理由

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第55回 これからは「南向きの家」を避けた方がいい理由

安田

以前、「これだけの猛暑だと、お庭の方角を変えた方がいいかもしれない」というお話をされていましたね。もともとは南に作るものだったけど、今後は北側にした方がいいかもしれないと。


中島

そうですね。日本では伝統的にお庭は敷地の南側に作られてきました。庭によく使われた松やマキの木が多量の日光を必要とした、という事情もありましたしね。ただこれだけ猛暑が続くようになると、なかなかそうも言っていられないというか。

安田

確かにここ数年でどんどん暑い日が増えて、40度を超えるところまで出てきてますもんね。ちなみに木によっても暑さに強い・弱いが違うものなんですか? 街路樹なんかは、人がフラフラになってしまうような暑さの中でも、元気に茂っているなぁと思っていたんですけど。


中島

ええ、木によって違いますね。中でも街路樹は暑さに強いものが選ばれているんです。シマトネリコという木が少し前に流行ってましたけど、それも暑さに強いです。とはいえ、庭に使うには手入れがけっこう大変な木ではあります。

安田

ふ〜む、なるほど。それで言うと最近流行りの雑木は暑さに強いんですか?


中島

いえ、雑木の庭で使うような木は、暑さに弱いものが多いですね。全体的に繊細なんです。

安田

ほう、そうなんですね。今年なんて本当に毎日暑い日が続いてますけど、お客さんのところの雑木も弱ってしまってうんじゃないですか?


中島

そうですね。そういうケースも出てきています。そもそも雑木って、山の中で上の方だけが日に当たっているような環境が適しているんです。だから全体に日が当たってしまうとどうしても弱ってしまう。

安田

ああ、なるほど。もともとの環境に近い状態にしておくのが一番いいですもんね。ということは、雑木のお庭をいい状態に保つには、日当たりと温度が重要なわけですか。


中島

ええ。日が当たりすぎない方が葉っぱは元気です。暑さで地面がカラカラに乾いてしまうのがよくないんですよね。逆に言えば、朝晩こまめに水やりをしてあげれば、雑木が過ごしやすい環境を保てます。

安田

そうか。山の中の土は常に湿ってますもんね。だからまめに水やりをしないといけないと。


中島

そういうことです。だから自動散水機を付けているお庭もありますね。それなりに費用がかかるのであまり多くはありませんが。

安田

なるほどなぁ。お金をかけてそういう対策をするよりは、冒頭に出ていたように、そもそも北側にお庭を作った方がいいのかもしれないですね。


中島

そうですね。その方が木にとっても快適な庭が作れる気がします。

安田

ちなみに中島さんご自身のおうちはどうなんですか? 既に北側に庭を作っていたりして。


中島

いえいえ、うちは地形的に南側にしか作れない状況だったので、そのままですね。でも、そういう制限がなければ北側に作っていたかもしれません。

安田

ちなみに本当に北側に作るとしたら、北側に駐車場とお庭を作って、南側に家を持っていくわけですよね。そうなった場合、南側の壁には窓をつけない形になるんですか?


中島

そうですね。その方がいいと思います。建築をやっている兄の話では、断熱材をいくら入れても、窓は遮熱効果が低いので、どうしてもそこから熱が入ってしまうそうで。日の当たる南側に窓を作らないことで、暑さを防ぐ効果がかなり高まるということです。

安田

ふ〜む、なるほど。確かにそれで夏場は快適になるかもしれませんが、冬場は寒くなってしまうんじゃないですか?

中島

ああ、今の住宅は断念効果が高いので、そこは大丈夫みたいです。

安田

なるほどなぁ。…とはいえ人間の常識や価値観ってそんなに簡単には変わらない気もするんです。実際、南向きの家の方が家賃も高かったりするわけで。わざわざ北向きに作るなんて提案したら驚かれませんか?

中島

そうですね。ですから完全に北向きにするというよりは、日差しが入りすぎる南向きを避ける感じで、東向きの提案をしたりしますね。西向きはちょっと厳しいかもしれませんけれど。

安田

ああ、なるほど。確かに西向きは西日がガーッと入ってきちゃいますもんね。東向きで朝日がちょっと入るくらいならいいかもしれません。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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