庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第58回 ガーメントデザイナーの卵を募集します!
前回、工務店さんとのコラボのお話がありましたけど、そうやって中島さんのお庭が広まれば広まるほど、人手が必要になりますよね。
そうなんです。そろそろ人を増やしていかないとなと思っていまして。
そうですよね。お庭やお家って一生ものじゃないですか。だから少し高くても良いものを求める人は絶対にいなくならないと思うんです。そう考えると、中島さんのお仕事ってこれからどんどん増えていくんだろうなと。
ありがとうございます。今回のコラボのお話がきっかけになって、よい形で広がっていけばいいなと。
でも、中島さんは全国規模の大きな会社にするというよりも、目の届く範囲で質を担保したいというお考えですよね?
それはそうですね。クオリティを維持するためには、ただいたずらに人を増やせばいいわけじゃなくて、一人一人を大切に育てないといけませんから。
お弟子さんを育てるような感じですよね。中島さんも庭づくりの技術を現場で一から学んだわけで、その技術を次の世代に継承していくと。ちなみに人数的にはどれくらい増やす予定なんですか?
はっきり決めているわけではないですね。でもいずれにせよ、数名だと思います。パッと覚えられる仕事ではないですし、じっくりゆっくり教えていけたらなぁと。
そうですよね。庭作りの基礎を覚えるだけで少なくとも3年、完全に任せるには10年、みたいな話ですもんね。
ええ。逆に言えば、こちらもそれくらいかかる想定で教えるので、そこまで焦ってはいないというか。真面目に取り組んでさえくれれば一人前になってもらえると思います。
なるほどなるほど。ちなみに最近は「たくさんを採用して数人が残ればいい」という考え方をする企業が多いんですが、私はその方法には反対で。むしろ「この人だ」と思える人が見つかるまで採用しない、くらいでいいんじゃないかと。
ああ、なるほど。確かにその方がお互いにいいのかもしれない。
中島さんが「この人なら人生かけてでも育てたい」と思えるような若者を見つけて、その人を徹底的に育てることが理想というか。それでモデルケースを作れれば、次のお弟子さんを迎えるのも簡単になりますから。
なるほど。最初の見極めが重要ということですね。でも、それはそれで簡単じゃないですよねぇ。安田さんだったらどうやって見抜きますか?
それをやるのに効果的な質問があって。例えばお庭だったら「いい庭職人って何が違うんだと思いますか?」と聞くんです。それに対して的外れでもなんでもいいので、自分の言葉でパッと答えられるかどうかが大事で。
ははぁ、なるほど。咄嗟に答えられるということは、常にそういうことを考えているということですもんね。
そうなんです。実際中島さんがそう質問されたら、どんどん出てくるでしょう?
そうですね。自然をなるべく取り入れたり、建物とのバランス、住む方の使いやすさなど、どんどん出てきて止まらないですね(笑)。
ですよね(笑)。でもそうじゃない人の方が多数なんですよ。「仕事ができる人ってどういうイメージですか?」と聞かれても、「言われたことをしっかりこなす人」みたいなつまらない答えが出てきたりする。
あ~、なるほど。言われたことをしっかりやること=仕事ができること、だと考える人が多いんですね。
そうなんです。そもそも仕事ができるっていうのはどういう状態かっていうことを、あまり真剣に考えたことがないんだと思います。でも一部には、それをちゃんと自分の頭で考えて生きている人もいて。
そういう風に自分で考えられる人を採用するべきだということですね。
そうですそうです。お庭以外でも、働くこと全般でもいいと思います。「働くってどういうことなんだろう」とか「生きていくとはいったい何なんだろうか」ということに、自分なりの答えを持っているかどうか。
そういう視点で話を聞いていくと、単に採用面接するのとは違う面が見えてきそうですね。
そうですね。その場に私もオンラインで同席させていただこうと思ってますので、より解像度も上がって判断しやすくなると思います。
そこまでしていただけるんですか。安田さんのフィルターも通していただけるなら、すごく心強いです。自分だけではどうしても一緒に働いてみないとわからない気がしていたので。
確かに一緒に働くことで見えてくるものも大きいですけどね。なるべくその前の段階でマッチングできた方がいいですから。
確かにそうですね。他に見るべきポイントってあるんでしょうか?
あとはその人が「これまでどういう生き方をしてきたか」ですよね。なかでも、言動が一致しているかどうかは大事だと思います。「自分なりの価値観」を持っていないと、難しいお仕事だろうなと思うので。
ああ、それは仰るとおりですね。お客様に喜んでいただくのは大前提ですけど、「提案力」も必要になってくるので。庭作りに興味があって、自然や四季を愛し、自分なりのきれいな景色のイメージを持っているような人に来てほしいですね。
現場で必要なスキルについては中島さんに話を聞いていただいて、私は素質というか「伸びしろ」の部分を見させていただく。経験値よりも素質が重要かなと思うので、20代半ばくらいまでなら未経験でもいい気がします。
確かにそうですね。海外でも稼げる仕事になってきましたし、やってみたいという人がいたらぜひお問い合わせいただけると嬉しいです。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。