第59回 「アロワナの巨大水槽」を眺めながら商談できるお庭

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第59回 「アロワナの巨大水槽」を眺めながら商談できるお庭

安田

アロワナの水槽」を作っているとお聞きして、そんなことまでやるのかと驚いたんですが、そもそもどういう依頼だったんですか?


中島

橋を架ける会社を経営している先輩がいまして、最初は会社の敷地に「池を作ってほしい」という依頼だったんです。詳しく聞いてみたらただの池ではなく、魚を眺められるような水槽が欲しいということになって。

安田

へぇ。つまりアロワナを外で飼うための水槽ですよね。でもなぜ外に作ったんでしょう? 水槽だったら建物の中の方がいい気がしますけど。


中島

もともとは室内で1.5mくらいの水槽で飼っていたらしいんですが、どんどん大きくなって室内の水槽では小さくなってしまったそうで。

安田

1.5mでもけっこう大きいですよね。それでも足りないって、アロワナってそんなに大きくなるんですか。


中島

僕も知らなかったんですけど、水槽のサイズによって成長できる大きさが決まってしまうんですって。だからもっと大きく育てるために、外に作ってしまおうとなったらしくて。

安田

なるほどなぁ。庭師の仕事って幅が広いですね。


中島

いやぁ、僕も外に水槽を作るなんて初めてなので、いろいろと試行錯誤しながら進めているところで(笑)。最終的には5.5メートルの幅で2メートルの奥行き、1.3メートルの深さの水槽を設置することになりそうです。

安田

すごいなぁ。お庭の中に水族館を作るような感じですよね。それにしても、そんな大きな水槽ってどうやって作るんです?


中島

全体はコンクリートで作って、横から中を覗けるような窓を作るんです。でもそれをアクリル板でやろうとすると直射日光で黄ばむし、掃除も大変だということがわかって。結局強化ガラスを使うことにしました。

安田

確かにガラスだったら変色しませんものね。でもメンテナンスをしっかりしないと、内側が苔でいっぱいになりそうですよね。


中島

そこはいま室内の水槽のメンテナンスをやってくれている業者さんが、外の水槽も担当してくれるみたいで。

安田

ああ、なるほど。それなら安心ですね。ちなみに強化ガラスってどのくらいの厚さなんですか? 水槽に使うとなると、けっこうな厚さが必要ですよね。


中島

そうなんです。大きさと水圧を考えると19ミリくらいですね。重さもかなりあるので、クレーン車を使って設置することになりそうです。

安田

ははぁ、すごく大がかりな工事ですね。それにしても、私は飼ったことがないからわからないんですけど、アロワナって大きい方がやっぱりいいんですかね。


中島

そうみたいですね。ただ、話が進む中で、その外の水槽で飼うのはピラルクにすることになったんです。なんでもアロワナは盗難の危険があるということで。

安田

へぇ〜、なるほど。確かに外の水槽だとセキュリティ的には心配ですもんね。でもそれだとピラルクも同じじゃないですか? 盗まれちゃいますよ。


中島

ピラルクは体長が2メートルから3メートルくらいになるので、大きすぎて持っていけないだろうと(笑)。

安田

なるほど、さらに大きいんですね。すごい世界だなぁ(笑)。ともあれ、外への水槽の設置は、温度管理も難しそうですよね。

中島

まさにその点が今の課題ですね。熱帯の方の魚なので、冬場の冷え込みで水温が下がりすぎないようにしないといけませんから。業務用のヒーターが必要になるでしょうね。

安田

そうでしょうね。それにしても、大変な作業ですね。あまり庭づくりと結びつかない気もしますけど。

中島

それがそうでもないんですよ。水槽の中に自然石を置いたり水草を生やしたりするんですけど、その工程は庭を作る感覚にすごく近くて。さらにその水槽の前にも商談スペースになるようなテラスも作る予定なので。

安田

ははぁ、なるほど。全体像を聞いていると、少しずつ中島さんの作るお庭なんだな、という気がしてきました(笑)。窓を作るということでしたけど、その窓から水槽全体が見渡せるわけですか。

中島

ええ、そうです。水族館のようなイメージで考えていただくとわかりやすいかと。

安田

ああ、確かに。テラスから眺めるお庭に魚が泳いでいるわけですね。それは素敵ですね。…でもそれを実現するのはなかなか骨が折れそうだなぁ。それでも引き受けようと思った理由はどこにあるんでしょう?

中島

初めての試みだったので、おもしろそうだなと思ったんです。だから純粋に挑戦してみたくて。庭師の仕事としても新しい発想が求められるので、どうなるか楽しみだなと。

安田

なるほどなるほど。じゃあもし他にも変わった依頼があったら、中島さんに相談すると面白いことが起こりそうですね。

中島

いいですね。お庭に関わることであれば、どんなご依頼でもいただきたいです。初めてのことには、必ず新しい発見がありますから。

安田

確かに。庭づくりでも外構の仕事でも、大きな水槽を作るなんていう経験はなかなかできないでしょうから、発見の連続ですよね(笑)。

中島

ええ、本当に(笑)。シラサギが魚を取りに来ないように、水槽の上に開閉式のタープを取り付けたりしたりとか。

安田

なるほど。ちなみに今回の総工費はいくらぐらいなんですか?

中島

1100万円から1200万円くらいにはなると思います。

安田

すごいですね。それだけの金額をかけてお庭に水槽を作るんですもんね。世の中にはおもしろい人がいますねぇ。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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