庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第71回 街の景観を守るために全員が持つべき美意識

ああ、市役所で講習が開かれていて、「街路樹はこの長さでカットしてください」といった基本的な内容を教えているようですね。ただ正直、「それは出っ張ったところをただ切っているだけだよね」と感じてしまうことも多くて。

そうそう。もちろん人手不足の状況は理解していますし、シルバー人材がそうやって社会活動に参加できる状況も素晴らしいと思います。ただ、「落葉後の木をもっと美しく整えた方が冬の街並みも映えるのになぁ」なんて考えてしまって(笑)。

プロの宿命ですね(笑)。でも実際、街路樹の本来の目的を考えると、もっと美意識を持って管理すべきですよね。四季を感じたり、心を落ち着けたりするためにあるものなわけですし。効率だけを重視するなら、そもそも街路樹は必要ないだろうっていう。

ええ。もっとも、当たり前にありすぎて、皆さんそういう感覚が薄れてしまっているんだと思います。そういう意味では、街路樹をキレイに保つこと以前に、美意識や景観を楽しむ心を育てることが大事だと思います。

そうですか(笑)。でも中島さんも以前仰っていた「掃除すべき落ち葉と放置する落ち葉の違い」を学ぶだけでも、価値観が変わると思うんですけどね。

ああ、そうですよね。もっとも、彼らが美意識を持って剪定したくても、依頼内容が「とにかくすっきりさせてほしい」というものになっているのかもしれません。そう言われてしまうと、なかなか難しいのかなと。

ああ、なるほど。そう考えると、剪定を依頼する側にも美意識が求められるわけですね。でも、こんなことを言ってなんですが、お庭づくりやエクステリアの看板を掲げて商売をしている会社の中にも、そういう感性を持たずに仕事をしているところがある気がします。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。