第74回 庭づくりの伝統を未来に託す弟子探しの旅

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第74回 庭づくりの伝統を未来に託す弟子探しの旅

安田

中島さん、お仕事で最近ベトナムに行かれたんですよね。日本のお庭とどんな風に違いましたか?


中島

そもそもベトナムの街中には庭らしい庭はほとんどないんです。郊外の家には建物以外のスペースがついているところもありますが、それも果物の収穫などに使うためのもので、「観賞用の庭」という概念自体があまりない印象でしたね。

安田

へぇ。つまり花や石を使って楽しむような、日本的な庭文化はないわけですか。


中島

そうですね。庭園として整えることもほとんどなくて、土地は基本的に食べ物を育てる実用的な目的で使われているんです。

安田

なるほど~。見て楽しむための日本のお庭とは全く違う発想なんですね。


中島

ええ。一方で、日本文化自体はけっこう人気みたいで、「焼肉」なんて日本語の看板がかかっていたりもして(笑)。そういう「日本風」を謳う店には庭園もありましたね。灯篭が不自然に多かったりしますけど(笑)。

安田

海外の人がイメージする「日本庭園」ってやつですね(笑)。ところで、以前中国で日本庭園を作ったと聞きましたが、今回のベトナムもお庭を作りに行ったんですか?


中島

あ、いえ、今回は庭づくりではなく、研修生の採用を視野に入れて、専門学校を見学してきたんです。

安田

へぇ〜なるほど。ベトナムの学生をガーメントデザイナーの卵として育てていくってことですか。


中島

そういうイメージです。今回紹介していただいた学校は、日本とベトナムをつなぐ教育に特化していて、これまでに約2,000人を日本に送り出している実績がある。だから私たちのような仕事に興味を持ってくれる学生さんもいるんじゃないかと思って。

安田

東南アジアの国々にはそういう学校が多いですよね。特にベトナムは親日国家と言われているし、積極的に学びに来てくれる人が多そうです。


中島

そうそう。その学校は建築が専門だったんですが、ベトナムの子は頑張り屋さんが多いとあちこちで聞くので、庭づくりにも興味を持ってもらえたらいいなと。

安田

ただね、確かにすごく真面目な人が多いと聞きますけど、いずれはベトナムに帰ってしまうわけじゃないですか。せっかく育てても帰っちゃうんじゃもったいない気もしますけど。


中島

そういう人も多いですが、日本でそのまま生活する選択肢もあるようです。運転免許を取って、日本で普通に生活している人もいるそうで。

安田

なるほど! それは頼もしいですね。実際に学校を見学されて、弟子候補は見つかったんですか?


中島

いえ、今回は雰囲気を見に行った程度で、次回からが本格的なスタートになります。校長先生も協力的で、積極的に探してくれると言ってくれていて。

安田

なるほど、いいですね。稼ぐためだけではなく、日本の技術をしっかり学びたいという人がベストですよね。特に「ガーメントデザイナー」という仕事は、共感がないと続けるのが難しいでしょうし。


中島

そうなんですよ。逆に言えば、強いモチベーションさえあればどんな方でもモノになると思っています。少しでも興味を持って「やってみたい」と思ってくれる人がいたら、国籍を問わず大歓迎です。

安田

なるほどなぁ。中島さんの考え方を聞けば、弟子になりたい人は必ず出てくると思いますよ。もちろん日本人の中にも、例えばこの対談を読んで「将来はガーメントデザイナーになりたいな」と感じている子がいるかもしれないし。

中島

そんな風に思ってもらえていたら本当に嬉しいなぁ。…今までは仕事が忙しくて、なかなか教育に力を入れてこれなかったんですが、今後はちゃんとそこに注力していこうと思っています。技術を学びたい若者に「庭づくりの面白さ」をしっかり伝えていきたいなと。

安田

いいですねぇ。中島さんのように世界中で活躍することだって夢じゃないわけで、本当に魅力的な仕事だと思います。中島さんの庭づくりに少しでも興味を持ってくれる方がいたら、ぜひお問い合わせいただければと思います。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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