第76回 温暖化時代に応える四季を感じる庭づくり

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第76回 温暖化時代に応える四季を感じる庭づくり

安田

春と秋がなくなって、四季が曖昧になってきたと言われますよね。私もすごく実感があるんですが、中島さんの住む岐阜県の美濃加茂ではどうですか?


中島

同じですね。特に夏の暑さが増して、秋がなくなったように感じます。

安田

ああ、やっぱり。秋が夏の延長みたいになってますよね。で、考えたのは、「気候が変わればお庭の在り方も変わるんじゃ?」ということで。


中島

仰る通り、影響はすごくあります。例を上げると、庭の配置が変わってきています。一般的に庭は敷地の南側に作られることが多いんですが、最近の暑さを考えると、「必ずしも南側に作らなくてもいいんじゃ?」となってきているんですよ。日当たりが良すぎて、毎日水やりをしても植物がダメージを負ってしまったりするので。

安田

ははぁ、なるほど。でも庭が南側じゃなくなったとして、中島さんのコンセプトである「四季を感じるお庭」は作れるものなんですか? たとえばうまく紅葉しない、みたいなことにもなっちゃうんじゃないかと。


中島

そうですねぇ。今のところは想定通り紅葉してくれているんですが、これからさらに秋が短くなっていくと、新たな対策が必要になるかもしれませんね。モミジなんかでも、日に当たりすぎると紅葉の前に葉が焼けてしまったりするので。

安田

ふ〜む、でも対策をすると言っても、地球温暖化は中島さん一人の力ではどうにもならないですよね(笑)。具体的にどんな対策が考えられるんでしょうか。


中島

そうですねぇ。例えば、「全面コンクリートにせずにできるだけ植栽を増やす」などですかね。植物の陰になれば、その分地表の温度も下がりますから。

安田

ああ、なるほど。つまり温暖化を想定した上でデザインや設計をしていくということですね


中島

そういうことです。自然相手の仕事なので、温暖化は避けて通れない問題です。植栽を増やすことで、少しでも二酸化炭素を減らす効果が出ればいいなと思っています。

安田

ほう、なるほど。 ちなみに温暖化にはいろんな説があって、二酸化炭素が原因かどうかも分からないと言われているんですよね。そもそも地球は40億年の歴史の中で、温暖期と寒冷期を繰り返しているそうなんです。


中島

ああ、なるほど。氷河期なんかも、その流れの一部ということなんでしょうか。

安田

そうそう。だから1万年単位で考えたら、また寒冷化する可能性もある。ただその頃に人間が生きているかはわからないですけど(笑)。


中島

ということは、これから先の未来でまた四季がはっきり戻ってくるかもしれないわけですね。僕らが生きているうちはそこまでの変化はなさそうですけど。

安田

そうですね。だから地球規模で考えたら、二酸化炭素を減らしたくらいでは温暖化は止まらないのかもしれない。とはいえ日本が年々暖かくなっていることは事実で、四季を味わいに来る外国人旅行者はこれからどうなるんだろうと。


中島

うーん、確かに。庭づくりでも、落葉樹の育ちが悪くなってしまう心配はありますね。暖かい地域に多い常緑樹なら適応しやすいかもしれませんが。

安田

日本に自生する樹木も変わっていくのかもしれませんよね。日本全体が亜熱帯化しているとも言われてますし、身近なところでも生態系の変化を感じます。例えば私は関西出身なんですが、子どもの頃に一番大きなセミといえばクマゼミだったんです。


中島

ああ、羽が透明で黒くて大きなセミですよね。私もクマゼミやミンミンゼミはよく見かけました。

安田

実はミンミンゼミって関西にはいないんですよ。私は大人になって東京に来てから初めて「ミンミンゼミって本当にミンミン鳴くんだ!」と感動したんです(笑)。逆に東京にはクマゼミがいなくて。

中島

そうだったんですね。クマゼミは暖かい地域を好んで、ミンミンゼミはやや涼しいところにいたということなんでしょうかね。

安田

そうそう。それが今や東京でもクマゼミを見るようになったんです。つまり南の方にいたセミが北の方に移動してきている。そんな中で、四季を演出するお庭を作ろうと思っても、如何ともしがたいこともあるんじゃないかと思いまして。

中島

そうですねぇ。なるべく木陰が多くできるような環境を作れれば、まだしばらくは大丈夫じゃないかと思います。ともあれ、安田さんが仰るような未来も見据えて、より暑さに強い植物を多く取り入れるなどの工夫はしていく必要があるでしょうね。僕もできるだけ四季を守っていきたいなと思っています。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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