変と不変の取説 第62回「脱マザコンはできるのか」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第62回「脱マザコンはできるのか」

前回、第61回は「誰が日本の男をダメにした?」

安田

Amazon創業者のジェフベソスさん知ってますか?

もちろん。

安田

彼はインタビューで「Amazonも必ず潰れる」って宣言してまして。

永遠に潰れない会社はないですから。

安田

そうなんですけど。当たり前っちゃ当たり前なんですけど。自分で言うところが凄くないですか。

日本の経営者は絶対言わないでしょうね。

安田

日本はトップ企業の顔ぶれもずっと同じ。アメリカのトップ企業なんてガラッと入れ替わってるのに。

日本ではゴーイングコンサーンがすごく大事にされるので。

安田

何ですかそれ?

「存続し続ける」という企業目的のことですね。

安田

日本では「続けること」に価値があると。

日本には100年以上続く企業が33000社もあって、ドラッカーさんが「なんじゃこりゃ」ってことで色々調べたみたいです。

安田

それって素晴らしいことなんですか?

ドラッカーさん曰く「普通はすぐ潰れちゃうので、継続性がほんとに力のある企業の証だ」って。

安田

でも日本って何百年も閉じてましたよね。

はい。鎖国してたので。

安田

今は世界との戦いに勝たないと生き残れない。

そうですね。今までのような継続は難しい。

安田

無理やり継続させてる気がしますけど。

大きな会社が潰れると社会全体に与える影響が大きいですから。

安田

だから国を挙げて守ってると。

そういう部分はあります。

安田

でも同じ顔ぶれの大企業がずっとトップに居座り続けるって、日本全体にとってマイナスじゃないですか。

もはや完全にマイナスになってます。業界トップの研修にいくとすごくそれを感じます。

安田

どう感じるんですか?

1人1人は優秀なんですけど、組織が古臭くてダメですね。若い優秀な人達の力が活かされてない。

安田

古い組織の中に埋もれちゃってると。

はい。優秀な人はヘッドハンティングでどんどん外資に持って行かれてる。

安田

どうして日本のトップ企業って入れ替わらないんでしょう。

入れ替わってた時期もあるんですよ。

安田

そうなんですか?

昔だったら新日鉄とか三菱重工とか、鉄鋼業が上にあって。そこがちょっと下がって金融とか商社が上がってきた。

安田

まあ大手メーカーも戦後に一気に伸びましたもんね。

はい。トヨタとかソニーとかホンダとか。

安田

でも、そこで止まってる気がするんですけど。

そこで止まっちゃってますね。

安田

その先がまったく見えない。大手が下を潰してるんでしょうか?

いや、単に出てこないだけでしょう。

安田

どうして出てこないんですかね。松下電器にしたって、松下幸之助さんがゼロから作った会社ですし。ホンダにしてもそうだし。

今はそういう存在が少ないから。

安田

結果的に大企業がそのまま残ってると。

楽天とかDeNAとか、少しずつそういう会社ができつつありますけど。Amazonに比べたら全然ちっこいです。

安田

いわゆる日本のエリートたちも、楽天より三井物産や松下電器に入りたがるじゃないですか。

まあ親が「そっちに行け」って言いますから。

安田

とりあえず1社目は「大手に入っとけ」って言いますよね。

楽天は後からでも転職できるから。最初はパナソニックとか銀行とか行っときなさいって。

安田

でも銀行なんてこの先どうなるか分からないですよ。メーカーにしてもどんどん外資に買われてる。

シャープも台湾の会社になったし。

安田

今揉めてる日産だって、実際はルノーの子会社じゃないですか。

そうですね。

安田

日本の家電メーカーなんて、もう残れないんじゃないですか。金融だってどんどん人を減らし始めてますし。

まあ、社会を知らないお母ちゃんの影響ですね。

安田

そこで時間が止まっちゃってると。

止まってますね。

安田

日本の男って、そんなに家の中で評価されたいんですかね。

そうです。マザコンですから。

安田

マザコンですか。

異常なるマザコンですよ、この国は。本来はそうじゃなかったんですけど。昔はちゃんと元服させてた。今は元服がないですから。

安田

白人って小さい頃から別々の部屋で寝るじゃないですか。ああいうのって大事かもしれませんね。

2つ説がありまして。子供のときはべったりやった方がいいという説と、早く自立させるのに部屋を与えた方がいいっていう説と。

安田

べったりの場合は、どこかに元服みたいな節目が必要なんでしょうか。

元服では名前を変えたんですよ。それを機に周りが「大人だ」という目で見る。これからは自分で責任取れよっていう。

安田

なるほど。それは分かりやすいですね。

今はそういうのがないままダラダラいってるんです。

安田

40代とか50代の引きこもりがいるぐらいですからね。

お母ちゃんが構い過ぎる。本来の母ちゃんのミッションは子供を自立させることなんですけど。

安田

なんでこんな風になったんでしょう。

お父ちゃんがみんなサラリーマンになっちゃったから。お父ちゃんも会社のいいなりなので。

安田

それを見てるお母さんは「お父さんみたいにはならないように」って思わないんですかね。

もっと勉強して「お父さんよりいい学校に行きなさい」っていう。

安田

根本的には何も変わってないってことですね。

何も変わってない。お父ちゃんと同じ道を辿らせてます。

安田

どうしましょうか。

前にも言いましたけど外国人とのミックスですよ。

安田

外国人のお父さんやお母さんを増やしていこうと。

お母さんを増やしたいですね。外国人の。

安田

でもその場合、日本人男性がまず外国人の女性にモテないと。

そのハードルが高いんですよ。マザコンはモテないのでこのサイクルから抜け出せないですね。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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