第134回 これからの若者に求められるのは、質のハードワーク

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第134回 これからの若者に求められるのは、質のハードワーク

安田

今日は中辻さんと、最近の若者の「労働観」について考えてみたいと思います。最近の若者って、終身雇用年功序列を求めている人が多いらしくて。


中辻

みたいですね。すごく安定志向というか。

安田

そうそう。一昔前は「実力主義の環境でガンガン稼ぎたい」って人も多かったんですけどね。でも考えてみると当時って初任給がすごく低かったんですよね。だから「努力して年収を上げるぞ!」という思考になりやすかった。


中辻

確かに今はどんどん初任給も上がっているし、収入を上げていくモチベーションはあまりわかないのかもしれません。むしろ福利厚生とか休日休暇の方を充実させたい、ということなのかも。

安田

そうなんです。よく言えば「ワークライフバランス」ってことになるんでしょうけど、こういう若者が増えている傾向って、中辻さん的にはどうなんでしょう?


中辻

うーん、難しい質問ですね。時代は変わってきているので、「土日祝はしっかり休み、それで満足いく収入が得られれば一番いい」といった望みもごもっともだと思うんですが…。

安田

でも私とか中辻さんのような経営者は、「稼ぎたいなら一生懸命働くべきだ」「スキルアップしたいなら自分で努力しろ」って思っちゃいません?(笑)


中辻

…思います(笑)。私もどちらかというと馬車馬のように働いてきた側の人間なので。もちろん休みも欲しかったし、深夜まで働くなんてこともしたくなかったですけど、その経験があるからこそ、今、多少のことではへこたれない人間になれたのかなとも思うので。

安田

ああ、確かに。今の若者は打たれ弱いみたいな話もよく聞きますよね。


中辻

だからってもちろん、昭和時代みたいなマッチョな働き方をすべきだ! と言いたいわけでもないんですけど。ただ、今の若い子にわかっていてもらいたいのは、年功序列で給料が上がっていくのは大企業だけだよってことですね。

安田

その視点は重要ですよね。大企業以外、つまり日本にある会社の大部分である中小企業では、「長年務めているだけで自動的に給料が上がる」ということはない。


中辻

ええ。やっぱりそこには相応の貢献や成果が求められる。「この人にはもっと育ってもらいたい」という投資の意味での昇給はあるとしても。

安田

ですよね。何なら最近は大企業でさえそういうスタンスになってきている。初任給を上げた分、40代以降の社員の昇給額が減らされている、という話もよく聞きますし。結局、日本全体が「稼ぎたいなら自分で努力しないといけない」状況にはなっているんですよ。


中辻

同感です。経営者目線でアドバイスするなら、「どんどん周りを巻き込んで仕事をしていって欲しい」というのもありますね。これからの時代「リーダーシップをもって引っ張っていく力」がさらに求められるようになると思うので。

安田

なるほど、確かにそうですよね。ちなみに先ほども出ましたが、馬車馬のように働く、いわゆるハードワークについてはどういうスタンスですか? かつての中辻さんのように、社員にも必死になって働いてもらいたいとは思いませんか。


中辻

うーん…そこは正直、思わないです。

安田

ほう、そうですか。それはどうして?


中辻

私、基本的に深残業(ふかざんぎょう)には否定的なんですよ。人間の集中力には限度があるから、長く働けばそれだけ成果が出るというものでもない。私の場合は、やるしかなかったからやっていただけで、それが生産的な働き方だったとは今でも思わないので。

安田

確かに。長時間労働をすればするほど、集中力も途切れてむしろパフォーマンスは下がってきますもんね。…それなのに残業代は高くもらえるっていうのもおかしな話ですけど(笑)。


中辻

そうなんですよ!(笑) だから長時間労働する必要はないけれど、同じ時間内でいかにパフォーマンスを高めるか、という工夫をしてもらいたいと思います。

安田

時間のハードワークではなくて、質のハードワークを求めるってことですね。


中辻

そうですそうです。それが言いたかった(笑)。言われた仕事を100%だとすると、自ら120%とか150%とかを求めて率先して動いたり、スキルを身につけるために努力する。そうやって仕事に対して熱量を持って、ハングリーに取り組んでもらえるのはすごく嬉しいです。

安田

なるほどなぁ。とはいえ最近は、むしろ真逆の状況ですよ。プロジェクトの責任者やリーダーに誰もなりたがらないらしいですから。


中辻

うーん、気持ちがわからないわけではないけど、責任あるポジションを経験していくことで、それだけ自分のやりたい仕事がやりやすくなるんだよ、とは言いたいかな。仕事に対するハングリーさは、結局自分の人生のためなんだよと。

安田

本当に仰るとおりですね。中辻さんからの素晴らしいアドバイスを参考に、もっと「質のハードワーク」を追い求める若者が増えるといいと思います。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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