第19回 ミスは絶対ある。だからルールが必要。

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第19回 ミスは絶対ある。だからルールが必要。

安田

前回、中辻さんは採用時に「能力」より「やる気」を重視するというお話を聞かせていただきましたね。


中辻

ええ、ポスティングスタッフの採用に関しては、やる気がなによりも必要だと思っています。

安田

私も採用の仕事を長くやってきた中で、やる気が大事なのはわかるんです。でもある程度、能力というか頭の良さは必要なんじゃないかと。結局そこが仕事の出来に直結しているというか。


中辻

まあ確かに、何度言っても同じ失敗を繰り返してしまう人もいますからね。

安田

実際、そういうスタッフさんもいますか?


中辻

失敗というか……ウチでは配布のルールを細かく決めているんですけれど、それを破ってしまう方はいますね。それが原因でトラブルになってしまったこともあります。

安田

なるほど。せっかくルールを作っても、守らない人ってどこの世界にもいますよね。ちなみにそういう方には何らかの処分があるわけですか?


中辻

そうですね。ウチではルールを守らなかった場合、許すのは1回だけです。

安田

ということは、2回やってしまったら、もうクビですか?


中辻

そうです。厳しいかもしれないですけど、「ウチのレベルには達していない」という判断で、クビです。

安田

そもそもミスやトラブルが起きないようにルールを決めているわけですものね。


中辻

仰る通りです。だからこそ、そこは譲れないですね。

安田

でももしかすると、「頭の良い人」は自己流でうまくやれるかもしれないですよ? 中辻さんの決めたルールには違反しているけれど、成果はめちゃくちゃ出ている。そういう場合はどうします?


中辻

うーん。そもそも私はいつも「人間に絶対はない」と思っていて。だからどれだけ頭が良くて注意深い人であっても、決められたことを守れない人は絶対ミスをすると思います。

安田

なるほど。一時的に成果は出たとしても、どこかできっとトラブルを起こすと。


中辻

ええ。そもそもポスティング広告って、人が配っているところにメリットがあるんです。反響が出そうなところを考えて、細かく配布先を決められる。一方で、人が配っている以上ミスもあれば不正もある。それは避けられない事実です。

安田

なるほど。だからこそルールを作り、守れない人はお断りするわけですね。たとえものすごく頭が良い人であっても。


中辻

ええ、そうです。お客様からお預かりした大切なチラシですから、約束を守れない人には任せられないですよね。

安田

そういえば先日Twitterで、「配ったことにして、チラシを自宅に持ち帰ったスタッフがいた」と書かれていませんでしたか? そんなこと暴露して大丈夫かって驚きましたよ(笑)。


中辻

ありましたねー。Twitterでは結構ありのままを書くようにしているので(笑)。

安田

配布しきれなかったチラシを無断で持ち帰ったということでしたが、ああいうことは初めてでした?


中辻

いえ、過去にもありました。というか、年に1~2回はありますね。

安田

ははぁ、そうなんですか。ちなみに今までで一番衝撃的だったアクシデントはあります? 言える範囲で構わないですけど。


中辻

配っている最中に、めんどくさくなってきて池に捨てた人がいました。

安田

ええ?! 池に?!


中辻

あの時はもう本当に大変でしたよ! しかも聞き取りしている最中に連絡も取れなくなって。クビ以前の話でした(笑)。

安田

いや、それは衝撃です……(笑)。


中辻

そんなことをした人は、後にも先にもその人だけでしたけど。ただ今回のように、時間内に配りきれず持ち帰ってしまう方は時々いますね。

安田

そういう時って、お客さんには言うんですか?


中辻

もちろん言いますよ。今回もすぐに正直にお客さんにお伝えしました。

安田

で、そのあとTwitterに投稿したわけですね(笑)。


中辻

そうです(笑)。やっぱりそこを黙っているのは、「安かろう悪かろう」の業者と同じになってしまう気がして。人が配り手の広告をやっている以上、こういう問題は絶対に起きてしまう。だからこそ常に正直でいるべきかなと。

安田

起きてしまったことはしょうがない。その後の行動をどうするかが重要だ。そういうわけですね。


中辻

仰る通りです。今回についても、お客様に事実を報告した上で、料金はいただかないことになりました。お客様からは「反響もすごく良いし、お支払いしますよ」とは仰っていただいたんですけれど。

安田

ちなみに、持ち帰ってしまったスタッフさんは、クビですか?


中辻

いえ、すごく反省されていたこともあり、研修からやり直していただくことになりました。もう1回、自社案件のポスティングから始めてもらっています。

安田

なるほど。とはいえ、人の手で配っている以上「配りきれませんでした」ということもあると思うんですよ。そういう場合はどうするんですか? 「ふざけるな!」とか怒鳴ったりしないんですか?(笑)。


中辻

しませんよ(笑)。私がお客様に謝って、納期を延ばしていただくだけの話です。ただ、配布ルールには「納期厳守」も含まれているので、後々、スタッフさんの評価には響きますね。

安田

スタッフさんたちに評価制度のようなものがあるんですか?


中辻

はい。ランク制度があって、それによって報酬金額が変わってきます。

安田

なるほど。じゃあスタッフさんも難しいところですね。評価を下げたくないから納期は守りたい。でも配りきれないからどうしよう、となりそうです。


中辻

そういう時こそすぐに私に相談してもらいたいんですけどね。今回に関しては、相談できる空気を作れなかった私に責任があると反省しています。

安田

そうですか。ところで納期はどう決めているんですか?


中辻

基本的には、私がお客様と相談して決めています。イベントなど日程の決まっているチラシでない限り、無理のないような納期にはしているんですけど……。ただ今回はずっと雨が続いてしまったのが主な原因でした。

安田

そうか、ポスティングは天気にも大きく左右されてしまうんですね。


中辻

そうなんですよ。今回は私の見立てよりも20日ほど早く梅雨入りしてしまったので(笑)。

安田

へえ、そんなところまで考えているんですね! 驚きました。


中辻

毎日のように天気予報はしっかり見て、今後の天気や気温を予測していますよ(笑)。

安田

気象予報士さんのような能力も必要みたいですね(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから