第20回 スタッフを大切にするための2つの要素

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第20回 スタッフを大切にするための2つの要素

安田

今回は「社員を大切にする」ということについてお聞きしていこうかなと。これまでのお話からも、中辻さんが社員さんを大切にしていることは伝わってきます。


中辻

ありがとうございます、嬉しいです。

安田

「社員を大切にするとは、毎日飲みに連れて行くことだ」なんて思っている経営者もいるようですが、中辻さんは何が「社員を大切にする」ことだと思いますか?


中辻

主に2つあります。1つは「収入」、もう1つは「働きやすい環境づくり」ですかね。

安田

なるほど。ではまず収入について教えていただけますか?


中辻

以前から言っているように、今ってポスティング業界全体が価格競争になっています。だから最終的に配布スタッフさんに渡る金額、つまり収入がものすごく低くなっているんですよね。

安田

それは業界問わず、日本全体でそういう現象が起きていますよね。とにかく安く人を使って、少しでも多く利益を出そうと考える経営者が多いです。


中辻

そうですよね。そういう中で、ウチは最低でも時給換算1,200円になるようにしています。屋外で自分の手足を使ってする仕事ですし、なにより私自身がそれくらい貰えないとやれないと思っているので(笑)。

安田

自分がやるなら最低それくらいほしい、と(笑)。そういえば以前、スタッフさんはランク制度で報酬が決まると仰っていましたよね。


中辻

ええ。ランクが高い人は時給換算で2,000円か、それ以上もらっているはずです。

安田

へぇ、それはすごい。ポスティング業界ではなかなか考えられない値段じゃないですか?


中辻

そうかもしれないですね。ちなみに1ヶ月の額面だけで言ったら私より稼いでいる方もいますよ(笑)。

安田

え?! 専務の中辻さんより稼いでいるということですか?!(笑)


中辻

ええ(笑)。でもその方にはそれくらいの対価が見合っていると思うから、ちゃんとお支払いしています。

安田

でも、誰が配ろうと、お客さんからもらう金額は同じなわけでしょう? スタッフさんにたくさん払ってしまうと、会社の利益は少なくなるじゃないですか。私の収入が減っちゃう、とは思わないんですか?


中辻

思わないですね(笑)。そもそも一番ランクの高いスタッフが多いということは、それだけお客様に反響をお返しできる配り方ができている証なんです。それって結局は会社の利益にもつながるので。

安田

ああ、ということは、スタッフさんのランクは反響の良し悪しで決まるんですか?


中辻

ええ、いろいろな指標がありますが、半分以上が反響で決まります。「短い時間でたくさん枚数を配れる人」が評価されがちな業界ですが、ウチの場合は配った枚数ではなくて、完全に反響ベースで評価します。

安田

なるほど。つまり高ランクの方たちほど、反響が出る配り方ができるというわけですか。


中辻

仰るとおりです。お客様は反響を取るために私たちにご依頼くださっているわけで、反響がよければリピートや別のお客様の紹介もしてくださいます。そういう意味でスタッフさんの成長は、目先の利益よりも重要なことだと思っていますね。

安田

なるほど、スタッフさんに払う報酬以上のリターンが望めると。2つ目の「働きやすい環境づくり」という点はどうですか?


中辻

これはズバリ、「併配」をしない、ということです。

安田

へいはい……?


中辻

併せて配る、と書いて併配といいます。業界用語ですが、違う会社のチラシを複数枚重ねて入れることを指すんです。これをすると、たとえば1枚あたりの受け単価が2円でも、3枚併配すれば、1回のポスティングで6円になりますよね。

安田

ああ、なるほど。確かに利益が出しやすそうな配り方ですけど……。どうしてそれをさせないんですか?


中辻

これ、実はスタッフさんがものすごく大変なんですよ。まず単純に持ち運ぶチラシが増えるから重たくなる。さらにそれをポストの前で複数枚重ね合わせる作業が、めちゃくちゃ大変で。

安田

ああ、確かに3枚併配するなら重さも3倍ですもんね。風が強い日だとさらにやりづらそうだし……。


中辻

そうなんですよ。で、これをやったところで、ポスティング会社は1回の配布で6円になりますけど、スタッフさんは1枚1円✕3枚で3円になるかというと、そうではない。せいぜい2円とか2.2円の報酬しか貰えないんです。

安田

ははぁ、現場で負荷がかかるだけで、スタッフさんにはほとんどメリットがないんですね。ちなみに併配をすると、チラシの効果は落ちるんですか?


中辻

そうですね。併配をするということは、数種類のチラシを同じタイミングで同じエリアに配ることになるので、それはお客様にとってマイナスだと思います。

安田

そうか、併配にすると、配布のタイミングもエリアも、全てがポスティング会社の都合に合わせて決められてしまうということですね。


中辻

仰る通りです。ポスティングって、配る日にちやエリアを細かく決められることが強みなのに、それができないということは、やはり効果も出ないと言えますね。

安田

なるほど。でも中辻さんの場合は、スタッフさんのために併配はやっていないわけですよね。


中辻

そうです! 表向きはかっこよく「お客様のためにならないと思います」とか言っていますが、実際はスタッフさんのためという部分が大きいですね(笑)。

安田

素晴らしい。そういう姿勢が「社員を大切にする」ということなんですよね。毎日飲みに連れて歩くことが社員を大切にすることだと思っている人に教えてあげたいですね(笑)。


中辻

ふふふ。でも、たまには美味しいものを食べさせてあげるのもいいと思います!(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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