第60回 自分の欠落をオープンにする人に、人は惹かれる

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第60回 自分の欠落をオープンにする人に、人は惹かれる

安田

経営者とか社長と呼ばれる人って、いろいろな能力が必要だと思うんですよね。いい人材を採用する力とか人を育てる力、それから営業力もあって資金調達も上手で…みたいな。


中辻

なかなかそんなパーフェクトな人っていないですけどね(笑)。

安田

ですよね(笑)。なので今回は中辻さんが思う「経営をやっていく上で、この能力は外せないでしょ」というものを教えていただけませんか?


中辻

なるほど〜。そうですね、何よりもまず「人を惹きつける力」があるかがすごく重要だと思います。

安田

その人の周りに自然と人が集まってくる、というようなことですか?


中辻

そうですそうです。そもそも私、社長個人には「プレイヤー」としてのスキルはそんなに必要ないと思っていて。先ほど安田さんが挙げられたような能力も、自分の右腕・左腕となってくれる人たちが持っていてくれればいいんです。

安田

経営者自身が全ての能力を備えていなくてもいいというわけですね。


中辻

ええ。ただ「会社の舵を取ること」だけは、経営者や社長にしかできないことだと思っていて。だから「先を見極める目」や「リーダーシップ力」というようなものは、絶対に必要だと思いますね。

安田

なるほど。ちなみに「先を見極める目」について具体的に教えていただけますか?


中辻

会社の未来のために新しいものをどんどん生み出して、世の中にアウトプットし続けていけるような力ですかね。

安田

それはつまり、時代を先読みできる力のようなものですか。


中辻

そうですそうです! 「現状維持でいいか〜」なんて思うような人には経営者は向いていないと思います(笑)。

安田

なるほど。もう1つ「リーダーシップ力」も挙げられていましたけど、これってやっぱり「俺について来い!」とガンガン前に出ていけるような人ですか?


中辻

いや、そうとも言えないかな。たとえ寡黙な人でも「この人のためなら」と思えるような人だったら、周りの人は信頼してついてきてくれると思うんですよね。

安田

それって結局は「人間性」なんですかね。というのも「いい社長」に見えるような人の方が、意外と辞めた社員から文句を言われがちな気がして(笑)。


中辻

え、そうなんですか?

安田

というかいわゆる「ブラック社長」の方が、後々感謝されていることが多かったりするなと思って。「性格は悪かったけど、仕事の真髄を教えてくれたのはあの社長だったな」というように。中辻さんはどんな人になら「ついていきたい」と思えます?


中辻

それで言うと、私は一緒に仕事をしていて「人間らしいな」と思える人に惹かれることが多いですね。

安田

ほう。人間らしさ、ですか。


中辻

はい。例えば今の私にとってはペイント王久保さんが一番身近にいる「社長」です。で、久保さんって新しいことを生み出す力がすごいし、決断して行動に移すのも早いじゃないですか。

安田

そうですね、経営者としてとても優秀な方ですね。


中辻

そう。ただその反面、人と話すのがものすごく下手だったり、突然謎のポイントで怒り出したりすることもあって…(笑)。

安田

笑。


中辻

でもそこが「人間らしいなぁ」って。だって仕事もできてリーダーシップもあって計画性もあって行動力もあって…みたいな完璧な人ってロボットみたいに見えません? だから、1つや2つ「粗(あら)」がある人のほうが「こんな人でも感情的になったりイライラしたりするんだ〜やっぱ人間なんやな〜」って思うんです(笑)。

安田

そうか、中辻さんの仰る「人間らしさ」というのは、その人の「欠点」や「欠落」している部分なわけですね。で、そういうところが逆に「愛すべきポイント」になるというわけですか。


中辻

そうそう! 私が言いたいことをうまくまとめてくださりありがとうございます(笑)。

安田

笑。ちなみに中辻さんもマメノキカンパニーの経営者ですが、ご自身の「愛すべきポイント」ってどんなところだと思います?


中辻

え〜、なんだろう…。漢字が全然書けなくて、部下の子たちへのメモとか置き手紙が全部ひらがななところかな(笑)。これはいつも部下の子たちに笑われています。

安田

愛されていますね(笑)。


中辻

ふふふ。あとは虫全般が、超絶苦手なところ。事務所に蜘蛛なんか出た日には、泣いて走り回っちゃうくらいで。

安田

え、そこまで? それは意外だなぁ(笑)。


中辻

基本的にわりとどっしり構えている方ですし、例えば仕事でなにかトラブルがあっても瞬時に判断して解決に向けて行動できる方だとは思っているんです。でも、漢字が書けないのと、虫が極端にダメ。でもそれが普段とのギャップがあって面白いとか人間らしくていいって言われています(笑)。

安田

なるほどなぁ。中辻さんのお話を聞いていると、別に経営者や社長って、無理に自分の欠点を隠す必要はないのかもしれないと思えてきました。


中辻

あ、それはあると思います。もちろん人に大きな迷惑をかけたり不快感を与えるような欠点は、絶対直すべきですよ。暴言吐いたりとかモノに当たるとか。でもそうじゃない「欠点」や「出来の悪さ」のようなものって、むしろ積極的に出していった方が愛されるんじゃないのかなって。

安田

愛されることで、また周りにどんどん人が集まってきますもんね。


中辻

そうなんです。自分が困った時にすぐ助けてくれる人たちが周りにたくさんいれば、自分に足りていない部分や欠点をカバーしてくれる人も出てくると思っていて。そういう積み重ねが、経営者としての仕事のやりやすさにもつながるのかなと。

安田

自分の欠点を隠そうと躍起になるような人よりも、中辻さんのように「自分の欠落」を笑っていられるような人の方が気持ち的にも余裕があるように見える。だから次々と人が集まってくるということか。なるほど、深いですねぇ。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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