第73回 「誰かのためになる仕事」を続けていけば、お金は後からついてくる

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第73回 「誰かのためになる仕事」を続けていけば、お金は後からついてくる

安田

今日は、中辻さんにとって「仕事とは何か」を深掘りさせていただきたいと思っています。仕事って、多くの人にとっては「生きていく手段」だと思うんですが、中辻さんもそこは同じですか?


中辻

うーん、そうだなぁ…。もちろん、仕事は「娘と一緒に生活していくための手段」という面は大いにあります。でも私はわりと「仕事=社会貢献」だと思っているところがあって。

安田

ほう、社会貢献ですか。


中辻

はい。お客様からお金をいただけるのは、仕事を通じて誰かを支援したり助けたりできたからだと思っていて。それって結果的に「社会貢献」になっているんじゃないかなと。

安田

なるほどなるほど。つまり中辻さんにとっては、仕事をすることで「人に感謝されること」や「必要とされること」が大事なんですね。ちなみにちょっと意地悪な質問ですが、既に娘さんとの生活に十分なお金を持っていたとして、中辻さんはそれでも仕事をしますか?


中辻

するでしょうね。というのも私は中卒…なんなら中学もろくに卒業していないような状態なんですけど、そんな人が「誰かに必要とされる」なんて状況はなかなかありえないよな、と思っていて。要は私、自己肯定感が低いんですよ。

安田

超ポジティブな中辻さんから「自己肯定感が低い」と言われてもあんまりピンとこないですが(笑)。でもその「自己肯定感の低さ」をプラスにしてくれるのが仕事だというわけなんですね。


中辻

仰るとおりです。「中辻さんに頼んだらすごく素敵なチラシができたよ」とか「中辻さんのアドバイスのおかげで売上がアップしたよ」とか言っていただけることで、私の「存在意義」や「存在価値」を感じさせてもらえるというか。

安田

なるほどなぁ。とはいえ、「人の役に立てている感覚はないけど、とにかく報酬の高い仕事」を選ぶこともできたわけじゃないですか。1人で娘さんを抱えて生きていくためにはお金が必要だったわけで、むしろそっちを選んだ方が合理的なんじゃないかという。


中辻

どちらかというと、娘がいるからこそ勤務時間や通勤時間に制約があったんですよね。一般的に報酬の高い仕事って、割と時間を全振りしないと成り立たないものが多くないですか? 例えばマグロ漁船とか(笑)。

安田

笑。でもそうか、娘さんを育てるためには、お金だけあればいいってことじゃないですもんね。


中辻

そうですそうです。そういう制約の中で、同時に自分も興味が持てる仕事を選んできたって感じですかね。娘の幸せと自分の幸せが重なる仕事というか。

安田

なるほどなるほど。そして中辻さんが幸せを感じられるのは、「誰かの役に立つこと」とか「人に喜ばれること」を実感できる仕事だったというわけですね。その結果としてお金も稼げるようになったら尚良しという。


中辻

そうですね。当時の自分がそこまで明確に意識していたのかはさておき、今振り返るとそういうことだったんだと思います。

安田

でも多くの人は、まず「余裕のある生活」を手にした上で、「じゃあ、これからは人のためになる仕事をしていこう」って考えるんじゃないでしょうか。つまり中辻さんと順番が逆の人が多いような。


中辻

あぁ、どうなんだろう…。でも、一般論としても、まず「人に喜ばれること」を意識した方が、最終的にお金や地位も得やすいと思うんですけどね。

安田

じゃあ「まずはお金を稼がなきゃ」という人たちは、むしろあまり稼げるようにはならないんですかね。


中辻

うーん…そういう人たちって多分、損得勘定でしか動いていないと思うんですよね。だから会社とか仕事の愚痴ばっかり言う。要は楽して稼ぎたいんでしょうけど、そう思っている時点で先は見えているというか…。

安田

なるほどなぁ。ちなみにこういう「相手のことを考えて一生懸命働けば、お金は後からついてくる」みたいな話って、SNSで炎上しやすいんですよ(笑)。


中辻

え、そうなんですか(笑)。「お前は恵まれているからそんなことが言えるんや」みたいな?(笑)

安田

そうそう(笑)。でもこうやって中辻さんのお話を聞いていても、「お客さんに喜ばれる仕事をするからこそ、お客さんが評価をしてくれて、収入が増えていく」というのがまっとうな順番だということがわかるんですけどね。


中辻

私も昔、印刷会社で働き出した頃って時給800円ほどの最低賃金でした。でも自分の仕事に興味を持って、お客さんのことや会社のことを考えていろいろやっていくうちに、気がついたら工場長になっていたんで(笑)。

安田

そして今や、経営者ですもんね。いやぁ、素晴らしい。よく「立場が人を作る」って言いますけど、その立場を作るのは、中辻さんのような「相手のために仕事をする」という考え方なんだということがよくわかりました。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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