第83回 「理性の壁」を越えてもらうために必要なこと

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第83回 「理性の壁」を越えてもらうために必要なこと

安田

前回の対談では、チラシやLPを作る時にはまず「感情」に訴えかけることが大事だとお聞きしました。


中辻

そうでしたね。感情に訴えかけることで「チラシやLPの内容を読んでみようかな」という気持ちにさせること。それが第一段階だというお話をさせていただきました。

安田

そうやって「感情」で引き付けられた人に対し、次は「理性」に訴えかけていくわけですね?


中辻

ええ。チラシやLPに書かれている内容をしっかりと読んでもらうことで、実際に「来店」や「購入」につなげていくステップです。

安田

なるほど。とはいえ、感情的に「行きたい」と思っても、情報を読んでいくと思ったよりお店が遠かったり、金額が高かったりするかもしれない。そういった「理性のハードル」を乗り越えさせるには、どんな仕掛けをされるんですか?


中辻

そうですね。実はチラシに限って言うと「距離の壁」を乗り越えることはほぼ不可能なんですよ。

安田

そうなんですか。じゃあせっかく「このお店、美味しそう」と思ってもらえても、家から遠ければ足を運んでもらえない?


中辻

そういうことです。というのも、前提としてチラシ=新規顧客を獲得するための広告なんですね。つまり「新オープンのお店」が紹介されている場合がほとんどなわけです。そしてそういった「知らない遠くのお店」って、メディアで紹介されたような有名店でもない限り、チラシを見ただけで行こうという気は起きないんですよ。

安田

へぇ、そうなんですか。私だったら「いいお店を見つけたぞ」と嬉しくなって、自分で下調べして行きたくなりますけどね(笑)。


中辻

安田さんのように自分から調べて動いてくれるような人は少数派なんです(笑)。ほとんどの人は、わざわざ遠い場所まで足を運んでくれないんですよ。つまり、チラシでは距離の壁を超えられない、というのが結論になります。

安田

そうなんですね〜。じゃあ距離の壁を越えてもらいたい場合は、どういうアプローチをするんですか?


中辻

Instagramやホームページ、Googleの口コミといった「置き型広告」で、地道にファンを増やしていくしかないです。ちなみにウチではポスティングする時も、業種や業態に合わせてどの距離まで配布するか、全部細かく決めているんですよ。

安田

ほう。「距離の壁」を感じさせないような範囲にしかポスティングしないというわけですか。


中辻

仰るとおりです。例えば大阪市内とか東京の中心部にある飲食店だったら、チラシで販促する距離はお店から500mくらいの場所まで。都心部からちょっと離れて、車移動が当たり前というようなエリアになるともう少し距離が伸びますけど。それでも1km〜2kmくらいですね。

安田

なるほどなるほど。じゃあ「価格」はどうでしょう? これは越えられる壁ですか?


中辻

はい、そちらは越えられます。「価格」には「目玉商品=自分たちが一番売りたいもの」と「集客商品=みんなが気軽に買えるもの」がありまして。この両方の情報をチラシに盛り込むことで、集客につながってきます。

安田

ああ、なるほど。つまり安いものを入れておくということか。


中辻

そうですそうです。極論、目玉商品は値段が高くてもいいんですよ。「ウチの店の最大の売りはこれなんです」と感情に訴えかけるための商品でもあるので。ただそうやって自分の売りたいものばかりを書いていても「理性」には訴えかけられなくて。

安田

そうですよね。「美味しそうだけど高過ぎるよ」で終わっちゃいますもんね。だからこそ、「こっちなら気軽に頼めるぞ」という価格帯の商品も一緒に紹介すると。


中辻

仰るとおりです。例えば飲食店のチラシで言えば、ディナーのコース料理を「目玉商品」。そしてランチのセットメニューとか平日割引を「集客商品」として、同時に紹介したりしますね。そうすることで「じゃあまずランチに行ってみようか」ということになったりするので。

安田

なるほどなぁ。ちなみに「理性」に訴えかけるには、「納得感」も大事ですよね。納得感がないと来店や購入には繋がらないんじゃないかと…。


中辻

その通りです。だからこそ、「どんな人が作っているのか」とか「商品のこだわり」とか「どうしてこの価格にしたのか」といった情報もすごく大事で。

安田

ですよね。そういう情報って、中辻さんとしてはどの程度まで盛り込むんですか?


中辻

そうですねぇ…LPであればできる限りたくさん盛り込みます。でもチラシは重要な部分だけをピックアップして載せますね。

安田

それはつまり、チラシに情報を書きすぎるのは良くないからですか?


中辻

ええ。だって、全く知らない会社のチラシを細部まで読み込んでくれる人なんて、そうそういませんから(笑)。

安田

確かに(笑)。それにWebと違ってチラシはスペースが有限ですもんね。読んでもらえないような情報をギューギュー詰め込むのはよくないと。


中辻

はい。もちろん「読ませるための作り込み」はしっかりしますよ? でもあまり情報を詰め込みすぎてしまうと、今度は「パッと目を引くデザイン」からは遠くなる。つまり「感情」に訴えかけることが難しくなってしまうんです。

安田

なるほどなぁ。「感情情報」と「理性情報」のバランスをいい塩梅で探ることが大切だということですね。いやぁ〜聞けば聞くほど奥が深くて面白いですね!

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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