第16回 トゥモローゲート流「赤字社員の見分け方」

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第16回 トゥモローゲート流「赤字社員の見分け方」

安田

今回は「無駄な人件費」というテーマでお話うかがおうかなと。人件費はどこからが無駄なのか、ということですね。


西崎

世間的にはよく「黒字社員と赤字社員」というような分け方をしますよね。

安田

ですね。だから一般的には黒字社員の給与は無駄じゃなくて、赤字社員の給与は無駄だと思われている。でもね、実際はそんな単純じゃないと思っていて。


西崎

確かに。今は赤字社員でも、将来ものすごい黒字を作ってくれる人かもしれない。

安田

仰るとおりです。例えばね、トゥモローゲートさんがシェフを雇ったでしょう? 中には「なんでそんな無駄なことを」と感じる経営者さんもいると思うんです。でも西崎さんは、彼への給与を無駄だと思わないでしょう?


西崎

もちろん(笑)。そうじゃないから入れたので。

安田

そうですよね。要するに、無駄か無駄じゃないかの線引きって、実は人それぞれなんですよ。今日は西崎さんの線がどこにあるのかな、というのを聞きたくて。


西崎

ははぁ、なるほど。あまり考えたことなかったです。

安田

実際どうですか? 明確な線がありますか?


西崎

そうですね、多分僕は、スキルが足りていない社員、つまりスキルの赤字は許せるんです。

安田

なるほど。まだ営業力が低いとか、デザインのクオリティが低いとか。


西崎

そうですそうです。一方で、マインドが足りていない社員、つまりマインドの赤字はスルーできない。

安田

それはつまり、やる気がないっていうことですか?


西崎

やる気がないというのもそうだし、お客様に対して誠実じゃないとか、約束を守らないとか、責任感がないとか。

安田

ああ、なるほど。でもそういうことはできないけど、結果はものすごく出す、みたいな人はどうですか? 昔の西武にいた清原みたいに、毎日飲んだくれてるんだけどホームランはちゃんと打つみたいな。


西崎

そういう人はいらないです(笑)。

安田

いらないですか(笑)。


西崎

そこでよく他の経営者さんと議論になるんですけどね。コンサルタントさんとかにも、「とにかく結果なんだ。好き嫌いじゃない」と怒られたり。

安田

会社にどれだけ利益を残してくれるか、で判断しろと。


西崎

そうそう。でも僕は、仮に月間1000万円利益残してくれる人がいても、マインドが赤字なんだったら採用しませんから。逆に、今は1円も利益残せないけど、マインドがすごく黒字の人がいたら、喜んで採用してしまう。

安田

それは、長期的に見たらそっちの人の方が利益になるからじゃないんですか。


西崎

それもありますね。でももっとシンプルに「嫌なヤツと一緒に働きたくねぇ」っていう(笑)。

安田

なるほど(笑)。


西崎

それにね、負のマインドって伝染するんですよね。たとえ利益はすごくても、その人がいることで周りに悪影響が出たら、結果的に全体の売上は下がっていくと思うし。

安田

確かにそうですね。ともあれ、マインドの部分って可視化が難しいでしょう? 本人が「やる気あります!」と言うんだけど、全然行動に出てこない人もいる。逆に口では全然言わないけど、なんかあいつやる気満々だな、と感じる人もいる。


西崎

それで言うと、考え方は口じゃなくて行動に出ると思っていて。マインドへの共感を行動で見せてくれる子と一緒に働きたいなと思ってます。

安田

なるほどね。でもそういう採用基準って、ある意味で危うくないですか。マインドへの共感が強い子が、全員大成するわけじゃないでしょう? 誰よりも野球が好きで誰よりも熱心に練習する子が、必ずしもプロ野球選手になれないように。


西崎

う〜ん、確かにものすごい選手にはならないかもしれないけど、気持ちがあってちゃんと練習もして、それをやり続けることができさえすれば、まったく成長しないなんてことはないと思います。

安田

なるほど。一定レベルまでは引き上げることができると。確かにビジネスはプロ野球とかプロバスケみたいに人数制限があるわけでもないですしね。


西崎

とはいえ、僕自身の好き嫌いだけで採用しているわけでもないんですけどね。最終面接までの選考は社員に任せていますし。

安田

へえ、あのシェフさんもそういう流れで採用されたんですか?


西崎

あ、シェフは僕が直接口説きました(笑)。

安田

ほら、やっぱり西崎さんの好き嫌いじゃないですか(笑)。


西崎

そういうケースもあるっていうだけです(笑)。でもいいですよシェフ。成果という意味でも僕の期待以上のことをしてくれてます。

安田

へえ、そうなんですか。


西崎

自分でケータリングを始めたり、経営者向けの食事イベントをやってくれたりして、本人自ら利益を作ってくれてます。そして彼が今言っているのは、「トップセールスになりたい」と。

安田

へえ! トップセールスのシェフですか。おもしろい。


西崎

でも決して夢物語でもないと思っていて。というのも、僕ら新規のリード獲得に少し苦労していたんですよね。SNSではある程度やり尽くしてしまった感があって。

安田

ああ、なるほど。次の打ち手を探していたと。


西崎

そうなんです。そんな中でシェフの彼が入ったことで、新しい接点ができ始めた。うちのオフィスで食事会を開けば、津々浦々から経営者さんが集まってくれる。

安田

そこで関係性を作れれば、提案もしやすくなりますしね。


西崎

そうなんです。これは他社がやっていない新しい試みだなと。だってお金払ってご飯食べに来てもらって、そこで営業もできちゃうわけですから。めちゃくちゃいいですよ。

安田

私、サラリーマン時代にそれを会社に提案したことがありますよ。


西崎

えっ、本当ですか!?

安田

ええ、皆が朝から晩までテレアポしている中、私は「高級弁当を食べながら経営について話し合う会」みたいなものを企画して。そしたら全然アポの取れない社長さんたちがゾロゾロやってきてくれて。


西崎

すごい!

安田

そこでトップセールスと話をさせれば、契約取れちゃいますからね。それを二、三回やってめちゃくちゃ売ったんですけど、定着はしなかったですね。


西崎

え、もったいない。どうしてですか?

安田

「そんなやり方は邪道だ」と(笑)。


西崎

え~、そうなんですか。めちゃくちゃ効率よさそうなのに。

安田

まぁでも、属人性の高いやり方というか、全員ができる手法じゃなかったので。


西崎

ああ、なるほど。そういう意味では、私たちのような小さな会社の方がいろいろな手法を試せるのかもしれませんね。

安田

そうですよ。食事会に続き、いろいろとおもしろい企画、期待しています!


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

Twitter

1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから