第33回 トゥモローゲートが考える「理想の営業」とは

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第33回 トゥモローゲートが考える「理想の営業」とは

安田

AIの発達によって、いろんなことが自動化・脱人間化していっていますが、営業職はどうなんでしょうね。今後、営業もAIが担うようになっていくんでしょうか。


西崎

個人的には、人間による営業は今後も必要なんじゃないかなと思いますけどね。ただ、押し売りする営業というか、相手を勘違いさせて売るような営業は淘汰されていくんじゃないでしょうか。

安田

なるほど。「必要じゃないものを無理やり売りつける」みたいな営業はなくなっていくと。


西崎

そうそう。一方で、顧客の課題やニーズをしっかり聞き出して、それに対して適切な提案をする、そういう意味での営業は今後もなくならないと思います。

安田

そうですね。そもそも顧客のニーズって実はすごく複雑なもので。エアコンが壊れた暑い新しいエアコンを買おう、みたいなわかりやすい顕在ニーズだけ語られがちですが、実はその人が本当に求めていたのはエアコンじゃなく、涼しい避暑地への引っ越しだった、みたいな潜在ニーズもあったりして。


西崎

よくわかります。本当のニーズを探り、具体的に見える化していくというのも、営業の重要な仕事ですよね。そういう意味でも重要なのは「その営業は自分視点なのか顧客視点なのか」ということじゃないですかね。

安田

ああ、なるほど。自分が売りたいから売る、ではなくて、顧客にとって必要な商品だと思うから提案する、ということですね。確かにそれはすごくいい営業だと思うんですけどただ、会社相手だとどうしても第三者が関わってくるじゃないですか。


西崎

それは経営者以外の役員とか、現場の社員とか、っていうことですか?

安田

ええ。つまりね、経営者本人は100%欲しがっていても、周りの人にとっては迷惑なもの、っていうのがあるんです。例として適切かはわからないですが、宗教もそうですよね。本人は財産を寄付するのがハッピーなんだけど、それによって家族は大変な思いをしちゃう、みたいな。


西崎

なるほど。営業の現場でも確かに似たケースはありますよね。

安田

ええ。例えば会社に新しい人事制度を導入しよう、となった場合もね、それによって評価が上がってハッピーになる社員もいれば、反対に評価が下がって辛い想いをする社員も出てくる。組織が大きければ大きいほど、「全員が納得する判断」って事実上不可能だと思うんですよ。


西崎

そうですねぇ。そういう中で判断をしていくのが経営者の役割とも言えますし。

安田

そこを助ける役割として人間の営業はやっぱり必要だと。西崎さんとしてはそういう結論なわけですね。


西崎

今の時点では、という話ですけどね。5年後10年後になったら、それこそAIの方が人間より上手に解決してくれるようになっているかもしれない。ただ現時点では、どれだけ商品を良くしていったとしても、それをしっかり伝える営業がいてこそ売れるんだと思いますね。

安田

なるほど。そう考えると営業は「商品の一部」とも言えますね。


西崎

ああ!それはすごくしっくりくる表現です。営業=売ること、と考えられがちですけど、例えば使い方を教えてあげることだって業務の一部なので。いい商品といい営業が合わさって、始めて商品が完成するというか。

安田

そうですよね。その割に、営業と納品側のスタッフってチームが分かれている事が多いじゃないですか。トゥモローゲートさんの場合も営業と制作って別々になっていると思うんですが、それは敢えてなんですか?


西崎

そうですね。やはり専門性を高めていった方が商品クオリティが上がるので。営業が片手間に書いたコピーより、専任のライターが書いたコピーの方がやっぱりいいですから。

安田

確かにそれが組織の強みですよね。社員が増えていけばいくほど、皆で分業して、その人の得意なところだけに集中できる環境が作れる。家造りで言っても、極端に言えば「カンナがけだけする人」みたいな職種だって成り立つかもしれない(笑)。


西崎

確かに(笑)。もっとも、逆に言えばそれを続けると業務幅がどんどん狭くなっていく、という側面もあります。専門分野に関してはクオリティがどんどん上がっていくけど、プロジェクト全体を俯瞰で把握する機会がなくなってしまう。このあたりはバランスを取りながらやっていく必要があるかなと。

安田

先ほどの話のように「営業が商品の一部」だと考えると、営業と納品側の連携も重要になってくるでしょうしね。お互いが高め合ったり補い合ったりすることで、商品のレベルがどんどん上っていく。結果、これまでのように営業しなくても、「売ってください」とお客さんの方から来てくれるようになったりして。


西崎

ああ、その状態はある意味理想かもしれませんね。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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