第44回 採用コンサルとブランディング、どっちが儲かるんですか?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第44回 採用コンサルとブランディング、どっちが儲かるんですか?

安田

私は今、ほとんどフリーランスのような立ち位置で仕事をしているわけですが、万が一また会社をやるとしたら、どんな事業をやるのかなと思うんです。


西崎

ああ、すごく興味あります。

安田

やっぱり自分の経験や知識が活かせる採用コンサルティングか、もしくはブランディング事業になるだろうとは思うんです。で、どちらかと言われたら後者を選ぶ気がするんですね。


西崎

そうなんですね。ウチも採用コンサルからブランディング事業に舵を切った会社なので、気持ちはわかる気がします。

安田

そうなんですよね。トゥモローゲートさんは採用もブランディングもやってきた。だからあらためて、その2つの違いを教えてほしいなと思っていて。何が一番違うと思います?


西崎

そうですねぇ。企業ブランディングの方は、会社の中身から変えられるというのが大きな魅力なんじゃないでしょうか。採用コンサルだとどうしても「採用」の枠内で収まりがちというか。

安田

確かにね。応募人数とか内定数とか、そういうことでジャッジされますから。


西崎

ええ。もちろん採用って企業にとってものすごく重要なことですけど、提案する内容も限定的になる。「本当は組織構造から変えた方がいいのにな」と感じても、そこまでは求められていないわけじゃないですか。

安田

確かに確かに。仮にそこまでやったとしても、最終的に「内定人数が達成できてないじゃないか」って怒られたら終わっちゃいますしね(笑)。


西崎

そうなんですよ(笑)。しかもその原因がクライアント側にあったりする。仮に例年の何倍も集客したとしても、面接官の対応が悪くて辞退していっちゃったり。

安田

うわぁ(笑)。そんなことされたらどうしようもないですね。その上「お前らのせいだ」なんて言われたら、嫌になっちゃいますよ。


西崎

もちろんそんなケースは稀でしたけどね。ただこれが企業ブランディングになると、堂々と「じゃあまず評価制度作りましょうか」みたいなアプローチができたりする。

安田

確かにかなり幅が広がりますよね。ただ逆に言えば、それだけ難易度も上がるわけじゃないですか。


西崎

仰るとおりです。ですからブランディングも一長一短あって、本質的に会社を変えられるのですごくやりがいはある一方で、サービスを提供する側のレベルを何段階かアップさせないといけないという。

安田

確かに営業ひとつとっても、採用媒体を売っている方がイージーですよね。社歴の浅い社員でも、行動力さえあればある程度は売れる。


西崎

そうそう。でもそれがブランディングだと、売上や利益率などより重要な成果が求められますし、採用に関する離職率とか定着率みたいな部分もカバーしないといけない。新卒1年目2年目の子がすぐに成果を出せるビジネスモデルじゃないんですよ。

安田

そうですよね。つまり赤字覚悟で新卒を育てていくしかない。一人前になるのに最低3年くらいはかかりそうですね。


西崎

今だと3年から5年は普通にかかりますね。

安田

ほう、そうですか。ちなみに採用とブランディング、儲けで言うとどっちが上ですか。


西崎

ウチの場合は完全にブランディングですね。採用支援だと予算300500万円くらいで、マックス1,000万円くらい。一方ブランディングだとミニマムで2,000万とかなので。

安田

でも採用の方が社員の戦力化は早いわけでしょう? 単価は安くても、たくさん受注したらそれなりの額になるじゃないですか。


西崎

確かに理屈ではそうなんですが、やっぱり生産性を考えると数は少ないほうがいいです。100万の仕事を10社やるより、1,000万の仕事を1社とやる方が効率的ですし、クオリティも上げやすいですから。

安田

確かにそうか。それに採用の仕事って、最終的にはプラットフォーマーが勝ちますからね。リクナビとかマイナビみたいな媒体を持っている所が全部持っていく。そう考えると、採用ビジネスって「売りやすい」けど「儲かりにくい」のかもしれません。


西崎

もちろんいろいろなケースがあるでしょうけどね。ただ少なくともウチに関しては、ブランディングに舵を切ってよかったなと思います。むしろあのまま採用ビジネスをやっていたら今どうなっていたんだろうっていう(笑)。

安田

良かったですねぇ(笑)。ともあれね、やっぱりさっきから話に出ている「難易度の高さ」はあると思うんですよ。そこはどんな風に対応しているんですか?


西崎

いろいろな打ち手をやってますが、一つ大きいのは分業化ですよね。セールス、企画、コピーライティング、デザインというように分業制にして、それぞれのスペシャリストを配置する。それで計78名でチームを組んで進めていくイメージです。

安田

ああ、なるほど。確かにそういう意味ではブランディング事業の方が組織は作りやすそうですね。逆に言えば、ある程度の規模がないと成り立たないビジネスだってことですけど。ちなみに今のところ、採用ビジネスに戻るプランはないわけですか。


西崎

もちろん採用に関する仕事もブランディングに含まれているので、採用ビジネスは今でもやっているんですけど。ただ「採用コンサル会社」に戻ることはないでしょうね。

安田

なるほどなぁ。でもそう考えると、むしろトゥモローゲートさんこそ「まっとうな採用屋さん」という感じがしますよ。ただ求人媒体を売るだけじゃなく、組織づくりも含めてサポートくれるわけですから。


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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