第58回 クリエイティブ職が生涯年収を上げるには?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第58回 クリエイティブ職が生涯年収を上げるには?

安田

この対談でも営業の話はたくさんしてきたんですけど、今日はクリエイティブ職についてお聞きしたいなと。トゥモローゲートさんにもデザイナーさんとかライターさんがいると思うんですけど。


西崎

そうですね。頑張ってくれてます。

安田

クリエイティブ職の人っていろんなタイプがいるじゃないですか。でね、聞きたかったのが「生涯年収を上げる」という観点で考えた時に、どうなんだろうと。とんでもないクオリティのものをじっくり生み出す人と、ある程度のクオリティのものをコンスタントに作る人、どっちが儲かると思います?


西崎

うーん、難しいな。すごいクオリティのものをコンスタントに作れる人がいいと思いますけど(笑)。

安田

そりゃそうですけど、それはナシで(笑)。言い換えると、「これが自分のスタイルだ!」っていうアーティストタイプと、「要望に合わせて何でも作ります」っていう商業デザイナータイプと言うか。


西崎

いや~、これ僕けっこう迷いますね。ちなみに安田さんはどちらですか?

安田

私自身は割と使い分けてますね。案件によって、「今回はちょっと普通のデザインじゃ弱いな」という場合はアーティストタイプに頼みますし、そうじゃない場合は別の商業デザイナーさんに頼んだりして。生涯年収という意味ではどうでしょうね。意外とアーティストタイプって稼げてなかったりしますもんね。


西崎

確かに難易度は高くなりますよね。画家とかバンドとかとある意味同じで、売れたら大きいけど、そこに到達できる人は一握りというか。

安田

ちなみにトゥモローゲートさんはあまり外注をしないと思うんですが、仮にするとなったら何を重視されますか?


西崎

安田さん同様、案件によって変わるとは思うんですけど。でも最近はクオリティ重視ですね。以前は価格の方が優先度が高かったですけど、最近は変わりまして。

安田

ということは、既に外注されているんですね。


西崎

そうですね。Webデザインやグラフィックは内製しているんですが、映像系はちょこちょこ外注しています。

安田

ああ、映像の内製は大変ですもんね。人も機材もいっぱい必要で。


西崎

仰るとおりなんです。映像1本作るのに、ディレクター、カメラマン、照明、メイクアップ、小道具さん、編集……と何十人もの人が関わってきちゃうんで。これを社内で対応するのはなかなか難しいですよね。

安田

クオリティ的にも、映像専門でやっている会社に勝てるかと言うとなかなかね。


西崎

そうそう。つまりうちの考え方としては、「外に出したほうがお客様にクオリティ高いものを提供できる」という時に外注する感じですね。逆に言えば、社内でやった方がいいものができるなら内製すると。

安田

なるほどなるほど。ところでクリエイティブ職の方って、トゥモローゲートさんの社員さんみたいに会社に所属しているならいいんですけど、フリーだと「年齢の壁」みたいなものがあるんですって。40代とかになってくると、だんだん仕事が取れなくなっていく。


西崎

へぇ、それはどうしてなんですか?

安田

センスが古くなっていくとかそういうこともあるんでしょうけど、どちらかというと「発注側の年齢が若くなっていくから」みたいです。なんていうか、年上のデザイナーに仕事頼むのってちょっと気を遣うじゃないですか。


西崎

ああ、なるほど。そういうことなんですね。

安田

だから今回「生涯年収」という話をしましたけど、どちらのタイプでもずっと稼ぎ続けるのは難しいのかもしれませんね。よっぽどいいスポンサーを捕まえるか、自分でガンガンに営業できる人じゃないと。


西崎

そうかもしれませんね。自分が経営側に回る、という選択肢もありそうですけど。

安田

ああ、なるほどね。ちなみにトゥモローゲートさんはそういうこともあり得るんですか? クリエイティブ職から役員になるようなことが。


西崎

ありますよ。実際、いまの取締役常務はもともとクリエイティブ職の人間です。うちは戦略経営部と意匠制作部の2部門あるんですが、後者の責任者を任せてます。

安田

へぇ~、それはいいですね。クリエイティブ職のキャリアプランとしては理想な気がします。でも、そういう人事を考えても、やっぱりトゥモローゲートさんは営業とクリエイティブの関係性がいいんでしょうね。一般的にはだいたい仲が悪いもんですけど(笑)。


西崎

笑。でも確かに仲は良いんですけど、割とガンガンに意見をぶつけ合う関係ですよ。けっこう白熱するというか、みんな真剣ですね。

安田

ははぁ、それはすごくいいことですよ。全員が案件に対して全力ってことですもんね。だからこそクオリティの高いものができあがるんでしょう。


西崎

ありがとうございます。そういうスタンスなので、ウチは初回の打ち合わせは全プロジェクトメンバーで参加するようにしているんです。クリエイティブ職のメンバーも全員出てくるので、クライアントさんにはちょっとビックリされるんですけど(笑)。

安田

ああ、確かにそれは珍しいかもしれない。基本的には営業が打ち合わせして、それをクリエイティブに落とす感じですもんね。


西崎

ウチはもう、エンジニアもデザイナーもコピーライターも全員参加です(笑)。

安田

いや素晴らしい。他の会社さんも見習ったほうがいいように思いますね。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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