「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。
第64回 トゥモローゲートが注力する「子どもブランディング」の効果

トゥモローゲートさんはブランディング事業をやられているわけですが、依頼してくるクライアントさんって「売上」と「採用」のどちら目的が多いですか? というのも、私がいろいろな経営者さんと話していると、昨今どんどん「採用目的」の動きが増えているなと思っていて。

うちに来てくれるお客さんのニーズは3つあって、「売上・利益・生産性を高めたい」がまず1つ。次に「採用力をアップさせたい」、最後が「社員の定着率を上げたい」というものです。そういう意味では3つのうち2つが人材に関わることですね。

なるほどなるほど。今は「仕事はあるけど人がいない」という会社が増えてますし、やはり人材に関する課題が大きくなっているんでしょうね。まぁ、トゥモローゲートさんは多分そんなに人材には困ってないんでしょうけど(笑)。

いやいや、そんなことないですけどね(笑)。今は大丈夫でも、将来的にどうやって人材を確保していくかは大きな課題です。それもあってウチでは「子どもたちに対するブランディング」を始めたんです。「いかに早くトゥモローゲートを認知してもらうか」という活動ですね。

いろいろあるんですが、直近だと4月から毎月キッズビジネススクールというのをやっていこうと思っています。昨年トライアル的にやってみたところ、すごく良かったんですよ。子どもたちがうちの会社をめっちゃ好きになってくれて。

そうそう(笑)。しかも参加メンバーは面接して決めさせてもらっていて、その年齢からもう起業に興味がある子とか、ビジネスリーダーとして会社を引っ張っていきたい子とかなんです。まさにウチが欲しい人材たちというか。

いやはや、すごいことを考えますね(笑)。でも個人的にも大正解だと思います。というのも私も昔、人気企業ランキング1位を目指して頑張っていたんですが、やっぱりウチは就職活動が始まった学生さんからしか認知されなかったわけです。

そうそう。一方でソニーとか明治製菓とかは子どもたちもみーんな知っているわけです(笑)。やっぱりそういう企業はランキングで抜けない。認知度・知名度って重要なんだなと痛感しましたね。で、「子どもブランディング」もまさにそこを狙っているわけでしょう?

周りの経営者にも「アホちゃうか」って言われます(笑)。確かに今始めたものが実になるまでは10年かかるかもしれない。でも僕らはこれ毎年やっていくつもりなんで、それ以降は11年目12年目と毎年リターンがあるわけです。

知らないですか? ルノワールには普通のアイスコーヒーと、ちょっと高い「水出しアイスコーヒー」があるんです。コーヒー豆が大量に入った容器の上からポタポタと一滴ずつ落として、8時間くらいかけて抽出する。普通なら「8時間もかけて元が取れるのか?」って思うけど…

いやはや、素晴らしい戦略だと思います。今はもうどこの会社も「仕事はあるのに人がいない」ってヒーヒー言っているじゃないですか。そういう意味では今後は「人を抱えている会社」が一番強い。人さえいれば仕事は勝手に集まってくるから、お金をかけて集客する必要すらなくなるかもしれない。

確かにそうなっていきそうですよね。「求人広告や人材採用がなくても自分でいい会社は見つけられちゃう」って話が前回も出ましたけど、ビジネスでも同じなわけで。発注先を探している会社が自動的に見つけてくれちゃう。

そうそう。そして人数だけじゃなく、人の質も重要になっていく。いまは病院とかクリニックも事前に口コミとかを見て決めるじゃないですか。「ここの受付は感じが悪い」なんて書かれたら、もう誰も来なくなっちゃいますよ。

そういう時代ですよね。逆に「ここの先生はすごく丁寧で安心できる」というようなコメントならすごい宣伝になる。そういう意味でも、質の高い人材を確保することが大事なわけで。そういうこともあってウチは子ども向けのブランディングを始めたんですよね。

つまり、質の高い人材を非常に早いタイミングで見つけられるってことですもんね。しかもその質の高い子ども達は将来、低くない確率でトゥモローゲートにエントリーしてくれると。…聞けば聞くほど周到だなという感じです(笑)。クライアントさんも「ウチも子どもブランディングやりたい」なんて言ってくるんじゃないですか?

ああ、よく言われますし、実際に真似してやってくださっている会社もけっこうありますよ。先ほど話したキッズビジネススクール以外に「親子参観日」っていうのもやっているんですが、それを取り入れてくれたり。

ええ。参観日って普通親が子供の学校に行くわけですが、それの逆です。子どもが親の会社に参観に来る。これはすごくいいですよ。子どもたちも楽しいし、社員である親も喜んでくれる。「子どもが来るんだからカッコいいところ見せないと」って頑張ってくれたり。
対談している二人
西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。