第66回 いま20代の営業マンだったらどう働きますか?

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第66回 いま20代の営業マンだったらどう働きますか?

安田

私が営業マンをやっていた頃って、「行動量がすべて」みたいな時代で。1日何百件電話をかけられるとか、何十件訪問できるとかが評価される世界でした。でも今はいろいろな意味で変わってきたじゃないですか。


西崎

そうですねぇ。商談もオンラインが当たり前になりましたし、SNSとかDMとか、ツールを駆使した営業もたくさん出てきて。

安田

そうそう。「行動」ということの定義自体が変わっている感じがします。でね、ちょっと聞きたかったのが、西崎さんがいま20代の営業マンだったとしたら、どんな営業スタイルでやるのかなって。


西崎

なるほど~。でも自分が20代だった頃と同じやり方はしないでしょうね。とにかくテレアポしまくる、みたいな形では勝てないと思うので。

安田

じゃあどんな方法を取りますか。


西崎

やっぱりSNSがベースになるかもしれませんね。あとはAIとかもガンガン活用して。

安田

ああ、そうでしょうね。ということはですよ、今のトゥモローゲートでは営業さんたちにそういうスタイルをやらせているわけですか? 「時間の限り電話をかけ続けろ」みたいな教育はしてないと(笑)。


西崎

ああ、でも別にテレアポが悪いとも思わないです。設定したゴールを達成できるなら、営業スタイルは問わないので。仮に本人がテレアポが一番成果を出せるというなら、全然やってもらっていいです。

安田

ああ、なるほどね。じゃあ逆に「僕はSNS一本でやります」ってのもOKなんですか? 会社にいる間ず〜っとSNSをやっていても。


西崎

ええ。それで成果が出るなら全然問題ないです。

安田

は~、そうなんですね。私の時代にそんなことやってたら一発でクビだっただろうな(笑)。でもやっぱり私くらいの世代からすると、なんとも難しい時代になりましたよ。パッと見ただけではその人が働いてるのかサボってるのかサッパリわからない(笑)。


西崎

確かにそうかもしれませんね(笑)。AIとかも出てきて、ますます「本人の行動量」は見えづらくなりましたし。

安田

そうそう。すごい企画書を出してきたと思ったら、全部AIに作らせてたりとかね(笑)。まぁでも、それはそれでいいのか。


西崎

ええ、むしろ今後は「AIを上手に使える能力」の評価が上がっていくでしょうね。最終的にいい企画ができるなら、作成者が本人かAIかはどっちでもいいわけで。

安田

確かにそうですね。ただ、そうなってくると俄然若い子の方が有利になってきませんか。新しいテクノロジーを使うのは明らかに若い子の方がうまいわけで。昔ながらのベテラン社員が「AIなんか使ってズルいじゃないか」なんて言い出さないですかね。


西崎

ウチではそういう意見は出ないと思います。そもそも現状ではベテラン勢の方が大きな成果を上げてますし。

安田

へぇ、そうなんですか。AIの勉強を頑張ってしてるってことなんですかね。


西崎

というより、AIってそれを使う人間の経験や知識レベルに依存するんですよね。確かに若い子の方がツールに慣れるスピードは早いのかもしれませんが、だからといって必ずいいアウトプットができるわけでもなくて。そういう意味ではベテラン勢の方が圧倒的にレベルの高いことをやってます。

安田

なるほど、確かにそうか。でも冒頭の話のように、営業スタイルが激変していることは事実ですよね。そういう変化についていけない年長者が出てきて、「もうここではやってられない」と転職していってしまうこともあり得るんじゃないですか?


西崎

ああ、それでいうと、ウチは既にそこを通り終えたって感じなのかもしれません。

安田

ほう、そうなんですか。


西崎

ええ。過去に人事評価制度を抜本的に変えたことがあって。それまではすべて粗利ベースの評価で、要は「いくら売ったか」「いくらの仕事に関わったか」という評価でした。でもこれだと「たくさん売った人」だけが評価されることになって、うちのビジョンである「オモシロイ会社」という方面にはモチベーションが向かないわけです。

安田

そりゃそうですよね。オモシロイことをしても、評価に繋がらないんだから。


西崎

そうそう。それで評価の内容をガラッと変えまして、粗利以外の部分もしっかり見るようにした。結果として会社はすごくいい変化をしたんですが、一方で、粗利をとにかく追いまくりたい社員にとっては、やりにくくなる部分もあった。実際そこで退職していった人もいて。

安田

ああ、なるほどなぁ。「今まで通り粗利だけで評価してくれよ」って思ったんでしょうね。でも、それって成果を上げていた営業ほど感じることじゃないですか。お辞めになった方もガンガン売ってた人だったんじゃ?


西崎

ええ、仰るとおりです。でも、会社としてどうしても変えないといけない部分だったので。

安田

まぁ、その方も粗利で評価してくれる会社に移ったほうが伸び伸びやれるでしょうしね。何より、その大きな決断があったからこそ、今のトゥモローゲートさんの成功があるわけで。


西崎

そうですね。ウチがウチらしく仕事できるようになった一つの転換点だと思います。提案の質もあがって、結果的にそれ以前より単価もかなり上がりました。今考えても本当に良かったなと思ってます。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

Twitter

1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから