「海外に出たことによって、成功した」って話でしたよね。
はい、そうです。
実は、東南アジアに進出した中小企業さん、他にも知ってるんですけど。
はい。
正直いって、成功してる会社をあまり見たことがなくて。
そうなんですか?
だって、海外行っただけで、そんなに儲かるんだったら「みんな行くだろ」って話ですよ。
どうしてなんでしょうね。
その秘密を突き止めたいです。そもそも海外進出しようと考えたのは、どんなきっかけだったんですか?
中国で「手伝ってくれ」って話が12年前にあったんです。
じゃあ、たまたま、そういう話になったと?
そうです。それで「ロイヤリティーはいらないんで、データセンターを作らせてほしい」とお願いしました。
データセンター?
はい。木型作る時にはデータを書く必要があります。その作業を中国の方にやっていただこうと考えたんです。
中国で木型を作るということですか?
いえ、木型を作るのは日本にいる職人。データだけ中国で作ってもらって、日本に送ってもらう。
それはコスト削減が狙いですか?
それもあるんですけど、当時、日本の現場はかなりのハードワークだったんです。人を募集しても来ないし、何とかしたかった。
で、やってみてどうだったんですか?
1年半ぐらいで、それなりに手応えがつかめるようになりました。それで「どこかに進出しよう」となり、たまたま話があったベトナムに行きました。
中国で、そのまま立ち上げる気は、なかったのですか?
なかったです。
なぜ?
日本に好感をもっている国に行きたかったから。
親日の国でやりたかったってことですか?
はい。加えて、自分も行ってみたかった国だったので。
順番でいくと、最初がベトナムで、次がタイでしたっけ?
二番目はタイですね。
で、その次がフィリピンという順番。
はい、そうです。
ベトナムでは、どういうことから始めたんですか?
木型とデータセンターの二本柱でスタートしました。
いきなり二本柱ですか?
現地で木型が売れるかどうか、やってみないと分からなかったので。
なるほど。リスクヘッジのために、二本柱体制にしたと。
はい。データセンターは実績がありましたんで。
で、木型は売れたんですか?
結果的には、すごく売れるようになりました。
そこに行き着くまでのプロセスを、教えて欲しいのですが。
今ではもう、ウチの勝ちパターンになってるんですけど。
はい。
まずは日本人がひとりで行って、日系企業を回ります。
まだその段階では、現地工場はないんですよね?
はい。データ作成まで現地でやって、木型は日本で作っていました。
なるほど。で、仕事がどんどん増えていく。
いえ、日系企業だけでは、すぐに行き尽くしてしまいます。
どうするんですか?
日本から行ったスタッフは英語もベトナム語も話せませんので、現地採用します。
採用しても言葉が通じないじゃないですか?
はい。だから日本語が話せるベトナム人を、現地採用するわけです。
日本語が話せるベトナム人は、たくさんいるんですか?
勉強している人はたくさんいます。日本企業は人気があるので採用は難しくありません。
それで、彼らにベトナム企業を回ってもらうと。
ベトナムのローカル企業だけでなく、ベトナムに進出している外資系企業も全部回ってもらいます。
なるほど。そうやって現地の仕事を増やしていくわけですね。製造はずっと日本のままですか?
この段階になってくると、現地工場の立ち上げに入って行きます。
現地工場を立ち上げて、そこで働く人は現地採用するんですか?
もちろん現地採用です。
教育はどうしたんですか?
まずは日本から職人を送って、現地で仕事をしながら教育担当もやってもらう。
大変ですね。職人さん嫌がりませんか?
期間限定ですし、日本では教える若い子もいないので、楽しんでましたね。
確かに。教える相手もいないと、張り合いないですもんね。
今は、補助金の制度を使って、日本で研修を受けてもらってます。
日本で育てているのですか?
日本で職人が技術を教え、現地のノダの工場に戻って働いてもらってます。
日本での研修期間はどのくらいですか?
1年です。
今では職人さんは、ほとんど現地には行かないんですか?
今は、ほとんど行きません。現地の子が現地の子を教えるサイクルが、出来上がってます。
今、ベトナムは営業も工場も、ほとんどベトナム人で回ってるんですか?
トップの社長だけが日本人で、韓国人の営業がひとりと、あとは全部ベトナム人です。
ベトナムだけで、年間どのぐらい利益が出るんですか?
ベトナムだけで、今期は7,000万ぐらい。
ベトナムのスタッフさんは、現地の企業さんに比べたら収入は高いんですか?
現地の日系大手と比べて、遜色ないぐらいには高いです。
現地のベトナム企業に比べたら?
もちろん現地の企業と比べたら、報酬はすごくいいです。
じゃあ、現地スタッフは、みんな喜んでますか?
はい。報酬だけじゃなく労働環境も大きいです。ローカル企業になると、プレハブ工場でエアコンもないところが、いくらでもありますから。
現地のスタッフは、労働環境が良くて、収入もいい。そして、日本の本体は現地からもたらされる利益で潤っていると。
ベトナムに進出した際にかけたお金は、もうすでに回収しました。今は年間2,500万ぐらいの配当をいただいてます。
じゃあ、その利益によって、国内で働いてる社員さんの収入も増え、ハードだった労働環境も改善されていると。
そうです。
これぞwin-winですね。
・・・第4回へ続く・・・
野田 隆昌 (のだ たかまさ)
株式会社ノダ 代表取締役
https://www.kigataya.com/
ノダの海外ノウハウをシェア!個社ごとに職場見学会を実施。