vol.28【たくさんの情報を渡り歩くのとは次元の違う扉が開く、イメージを味わいつくす体験】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

たくさんの情報を渡り歩くのとは次元の違う扉が開く、イメージを味わいつくす体験

それはMさんが傘を忘れたことから始まりました。イベントに参加して、絵や会話を楽しんだ後、会場の入り口に置いて帰ってしまったのです。

連絡をとり、渋谷でお会いすることになりました。イベントの参加者が多くMさんと話す時間がなかったので、ホテルのラウンジに待ち合わせをしました。Mさんは起業家。若くて目がキラキラしています。スポーツ関係の集客で、実績をあげていました。

「起業後すぐに、動画での集客で成果を上げることができました。だから、自信はあります。」Mさんの話はエキサイティングでした。だから、もっと掘り下げて聞いている時、「門間さんに聞かれているうちに、あらためて【自分だけの仕事ってなんだろう?】と思います」と言われて驚きました。「イベントでご覧いただいたように、自分はどんなふうに貢献したいのか、絵を通じて発見できますよ」と答えると、「実は、門間さんの絵が欲しいな、と前から思っていたのです。はっきりしたビジョンが見えてなかったのだ、と気づいた今が、タイミングだと感じます」Mさんは、にっこりと笑って依頼しました。

人は、自分の核となるもの、軸となる考えがあるものです。でも、日々の仕事では、自分を振り返る時間があまりありません。たくさんの情報を処理していくのが日常でしょう。でも、自分に関しては、じっくりと一つのものを味わって、考えることが大切です。

オーダーでは、セッションの後、イメージをじっくりと熟成させます。そして、アトリエで絵を描き、次のセッションで見せながら話します。その時、「じっくりと味わっていてくださいね」と伝えています。Mさんは、いつも、セッションで絵をみると、何分も何も言わずに眺めていました。

セッションで自分が話した言葉が、絵に詰まっているのを知っているので、関心を持って眺めている‥‥ということが、真剣な雰囲気から滲み出てきます。ある時は、10分以上ひたすら見ていました。この「ゆっくりじっくり」時間がポイントです。何かを発見したいなら、目を開き、頭を使い、感覚を研ぎ澄ませて注意を払うことです。
スティーブ・ジョブズやレオナルド・ダヴィンチも「<発見する力>がたいせつだ」と考えていました。

そうして発見したものが、自分の血肉になります。

セッションでお話しした後に、最初に描く構想画は、一枚ではありません。数枚から数十枚描きます。Mさんの絵は、抽象的な紺色の構想画から出発しました。何枚も並んだ絵を見て、「セッションでお話ししたときは、ぼんやりした一つのイメージでした。門間さんに絵にしてもらうと、こんなに可能性があるなんて」と驚きました。「画家は、いろんな色や構図を知っています。だから、お話から色々描けます。クライアントが気づかない可能性を、絵を通じて伝えることができます。しかも、この中から一枚を選び出すことで、ぼんやりしていたイメージが「これだ!」と明確になるように描いています。それぞれ意味が違いますから、選ぶことで自分の考えもはっきりしてくるのですよ」と伝えました。

Mさんは、「ワクワクします」と、笑顔になり、その後、ゆったりと絵を選ぶ時間を楽しんでいました。次に、選び出した絵を見ながらセッションすると、イメージが発展します。Mさんは、その後、輪の中からグリーンの上昇する動きが浮かんできました。そうして、構想が発展していったある日。

Mさんが、戸惑ったような顔でセッションに来ました。「門間さん、いきなりクジラが浮かびました。上野の博物館で偶然見た時、絵に入れたいと感じて頭から離れないのです。自分では、どうやってクジラが絵に入るのか、全くわかりません。本当に入れていいのかもわかりません。でも、入れて欲しいと感じます。どうしましょう」

意味がわからなくても、絵に入れたいと感じるときは、入れるのが正しい。これが、ビジョンクリエイターの信条です。自分の内側からのメッセージを信じるのです。

その場で、クジラが絵に入る可能性を数パターン走り書きしました。「いつものように、じっくりと眺めて、どれがしっくりくるかを選んでください」と伝えると、Mさんは長い長い時間‥‥、見続けました。そして、「ちょっと信じられないのですが、真ん中に大きく入ります」と、クジラが主役の構図を選びました。本画が決定した瞬間でした。

その後、本画が完成する頃、なぜクジラが主役だったのかわかりました。イメージが浮かんできた頃に亡くなったお父さんの象徴でした。Mさんにとって、大きくて安心できる存在。無言の信頼で背中を押してくれる、いつも応援してくれる人だった。クジラのイメージが浮かぶことでMさんは、お父さんとの関係性を再発見したのです。

そして、そこからMさんの軸が自然に見えてきました。そして、【人の願いを叶えられる人になる】という自分自身の定義を見つけました。人の願いを叶えるとは、クライアントの向こう側にいる人の役に立てる人になる、表に出ていない願いも引き出せる人になる、どっしりと構えて、受け止められる人になる、とはっきりと言えるようになりました。

どっしりと構えて、受けて立てる人になる。

それは、Mさん自身がクジラの、お父さんのような大きさを感じさせる言葉でした。

じっくりと言葉や絵などを味わう時間は、たくさんの情報を渡り歩くのとは違う扉を開けてくれます。自分の内側から世界が変わるような体験が生まれてくるのです。

 

今回完成した作品 ≫「クジラ」

 

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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