vol.65【『飛行機』|子供に向上心と優しさを与える将棋塾を予感させたい塾長の場合】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

『飛行機』|子供に向上心と優しさを与える将棋塾を予感させたい塾長の場合

それは、今から考えれば、最初のオーダーと言えるかもしれません。2007年ごろ、「これからオープンする将棋塾のガラス窓に絵を描いてほしい人がいる」と紹介されたのがきっかけでした。

Oさんはその塾の塾長でした。優しい面持ちの人で、背が高くても威圧感がありません。話し方もソフトに「漠然としているので、全く知らない人には頼めなくて」とちょっと困ったように話し始めました。

「将棋塾を準備しています。大通りに面した一階に場所を借りました。看板を出しても他にもあって紛れてしまいます。そこで‥‥、大きなガラス窓に目をつけたのです。2メートル以上の絵を貼ったらアピールできる!!と。でも、子供たちが集まってワイワイしているときは、大通りから見えるように外したい。しかも、事務員でも簡単に取り扱いできるようにしたいのです。

お金をかければいろんな手段があると思います。でも、将棋関連に投資したいので、絵は安価にしたい。さぁ、どうしたら‥‥と悩んでいたら『門間さんは、ガラスに絵を描く人ではないけれど、画廊で実験的な展示をする人だから、きっと一番適した方法をゼロから考えてくれるでしょう』と紹介してもらったのです」

さてさて、難題です。しかし、それでも糸口はあります。

ゴールだけが見えているときは、現状は脇におくのです。Oさんの話を詳しく聞いて、絵に求める最低限の条件をまとめました。

道ゆく人に塾が浸透するまで一年あればいい。だから一年くらいの耐光性がある絵の具を使う。
ガラスは梅雨や冬に水滴が溜まるので耐水性がある絵の具を使う。
女性の事務員さんでも簡単に持ち運べる軽い材質に描く。
絵を貼っていても厚手のカーテンに光が通るくらいの光が届くように材質と絵の具を選ぶ。

そして、安価である!

条件がはっきりしたので、今までの実験的な制作の蓄積から、さまざまなアイデアが頭をかけめぐったあとに、自然と結論が出しました。

一年ほどの耐久性ならば、ペンキで十分。
ペンキなら耐水性をクリアする。
ホームセンターに売っている半透明の軽い板材を使う。
半透明なのでペンキで描いても厚手のカーテンくらい光が届く。

そして、ペンキも板材も安価!

Oさんに伝えると「ぜひ、その方法でお願いします!」顔が輝きました。

このやり方は、今、バックキャスティング(backcasting)と言われて、未来ビジョンや中期経営計画策定などさまざまな経営テーマに活用されています。また、SDGsはバックキャスティングの発想から目標設定されています。

変化を生み出すとき、現状からどんな改善ができるかつみあげていく考え方をフォアキャスティング(forecasting)、未来から逆算して現在を考えるのをバックキャスティング(backcasting)といいます。

SDGsは「やり方はわからないけど、2030年にはこういう状態になっている必要がある」と、ゴールから今何をしたらいいのかを考えているのです。

問いの立て方によって、答えが変わります。だから、質問をする前に、「適切な問いはいったい何か?」を先に考えることが本当にほんとうに大切です。

実は、オーダー絵画でのセッションは、主にバックキャスティングの問いで対話します。クライアントのゴールを描くサポートをしながら、何を描いたら一番いいのかを共に考えていくのです。適切なバックキャスティングの問いを積み重ねることは、技術の一つでもあり、対話の要(かなめ)にもなっています。

Oさんは、悩みがクリアしたことで、「実は、飛行機を描いてほしいのです。ジェット機でなく、プロペラ機。一人ひとりの子供たちが努力する中で、向上心と相手を思いやる優しさが身についていくイメージを重ね合わせたい。あと、子供は飛行機が好きなので、道ゆく親子の目を引きます」と、力強く語りました。

「では、世界で初めてニューヨークからパリまで無着陸飛行に成功したリンドバークの乗る飛行機、ライアンNYP−1のプロペラ機をモデルにしたらどうですか?」すぐさま浮かんだものを伝えたら「それはピッタリだ!」と決まりました。

そして、描かれた飛行機は一年ほど通りを彩り、塾のHPにも次のように紹介されていました。

「今まで何回悔し涙を流したことがあるでしょうか。何回、次に勝つための努力をしたことがあるでしょうか。
うまくいかないゲームをリセットしたことはありませんか?次から次に発売されるテレビゲーム、上手になるとその先にあるものはなんですか?

『負けました』をたくさん言って、少しずつ強くなってください。少しずつ逞しくなってください。気がついた時には、あなたは強くなろうとする向上心と相手を思いやる優しさが身についているはずです。

それがこの飛行機、SPIRIT OF C&C
Communication and competition の精神です」

その後、塾はTBSニュース番組で紹介されたり、塾生が小学生文部科学大臣杯東日本大会で3位になったりと、順調に発展しています。

今回完成した作品 ≫「飛行機」

 

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「門間さんに描いてもらい」とひそかに思いを育んておられた皆さま、是非ご確認くださいませ。

https://brand-farmers.jp/blog/monma_vision-paint/

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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