第111回「無駄、非効率が利益を生む小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「無駄、非効率が利益を生む小さなブルーオーシャン」


「接客に2時間は当たり前。顧客に必要のないものは売らない。」

私のことを知っている人からすると
意外に思われるかもしれません。
実は私、写真撮影が好きです。
暇があるとカメラを持って外に出て、
何でもかんでも撮影しています。
小学生のころは写真部で、
父から譲り受けた古いフィルムカメラで
撮影をし、暗室にこもっては、
現像作業をしていました。

いまは便利ですよね。
スマホで簡単に写真が撮れます。
しかも一眼レフカメラよりも
綺麗なんじゃないか?
と思えるくらいの画像を
収めることができます。

さて…
皆さんのスマホあるいはPCに
撮影した画像はどのくらいありますか?
100枚?500枚?
大体、1000枚や2000枚は普通に
保存されているのではないでしょうか?
その画像を印刷していますか?

カメラ関連市場は
2000年頃をピークに
右肩下がりの状況が
続いています。

理由は「デジタル化」

現像されることが前提だった
フィルムカメラがなくなり、
DPEの市場が大幅に縮小しました。
便利になったが故に、
市場が減少してしまう。
良いことなのか、悪いことなのか…。

congerdesignによるPixabayからの画像

そんな市場において
圧倒的強さを誇る
カメラチェーンがあります。

栃木県にある「サトーカメラ」

17年連続カメラ販売シェアトップ。
粗利率44%の高収益企業だそうです。

前述した通り、DPEの需要は減りました。
しかし撮影と言う行為に目を向けるとどうでしょう。
フィルムの残枚数を気にしなくてよくなった分だけ
むしろ増えているはずです。
1世帯辺りの撮影枚数が年間1000枚と仮定すると、
60万世帯200万人が住む栃木県では、
デジカメやスマホの中に計6億の
「想い出が眠っている」。
これらがもし1枚50円で現像されたら、
新たに300億円の市場が出現します。

サトーカメラはこの潜在需要を
取り込むことを狙ったそうです。

「撮影はするが現像はしない」
人たちをターゲットにします。
そこで注目するのが接客。
おもてなしにより自店のロイヤルカスタマー化すること
を接客の目的にしていないそうです。

「撮影はするが現像はしない」
という人たちは、カメラや写真を
趣味にしている人たちではありません。
つまり、自分が写真に何を求めているか
を自覚しているわけではないのです。
つまりシルバーと若い層、独身者とファミリー
で求めるものは違っており、
あらゆる層に受け入れられる
接客がない、ということです。
そのために2時間の接客は当たり前。
最長5時間もかける接客もあるそうです。
また、売れ筋とは異なる商品中心の商品構成、
手厚すぎるアフターフォローなど、
他社から見れば、無駄かつ非効率と思われる
ということが平気で行なわれているのです。

人に行動に焦点を絞り、
何をすれば売れるのか?
を考えると、
端から見れば無駄、非効率なことも
実は大事な要素になる、
ということなのかもしれません。
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サトーカメラ株式会社
URL https://satocame.com/
所在地 栃木県宇都宮市陽東3丁目27-15
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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