この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
『大旗:白龍』|野外舞台を見る人と舞台に立つ人が主役になるために
栃木県西那須野でのお祭りに合わせて、4メートルの白龍の旗をつくりました。モノクロの白龍の旗。舞台の人やものを引き立てます。
きっかけは、温泉旅館【大鷹の湯】の会長、Iさんのオーダー絵画を描いたこと。
絵画をもとにして、舞台用にデザインしました。「大鷹の湯」は三つの日本一を誇る名湯。Iさんは各地の温泉を視察するだけでなく、日本各地の伝承などにも詳しく、日本に熱い想いを持っています。
そして、その想いがかたちになって、日本文化継承として、リトリートセンター縄文大鷹村をはじめました。
まず、天然木で野外舞台をつくり、今後、和太鼓や能などさまざまな日本文化につらなるお祭りをしていきたいとのこと。今回は、舞や演奏、ごま祈祷が行われました。
日本の新石器時代にあたる縄文時代の中期、年代で言うと前3000年ごろの土器に、蛇の造形が残されています。歴史では、中国等大陸から文化が伝わってきたのは、弥生時代とされています。つまり、龍の起源は日本のルーツにもあるのです。
「舞台に門間さんに描いてもらった白龍の旗が飾れたらいいな。野外だから、絵ではなく印刷された旗がほしいな」「2メートルくらいあったら立派な旗だな」というところから、始まりました。
大旗をつくるのは初めてです。専門会社を探して、電話しました。こちらに即応する的確な対応、芯の通った生き生きとした声に、ここで依頼しよう、決めました。「7、8メートルほどの野外舞台用に絵画を旗にしたいのです」と伝えると、「野外では2メートルでも小さく見えますよ」
その一言で、2メートルという前提を外し、ああ、もっと大きい方がいいなと直観しました。絵を描いているとざっくりした縮尺はイメージできるのです。
希望を改めて確認すると、「お任せします」だったので、視点を変えました。
舞台を見る人、舞台に立つ人は、どういう大きさだったらより感動するのか‥‥、から考えることにしたのです。舞台いっぱいに泳ぐ白龍が目に浮かびました。ああ、2メートルより大きいのだ、と答えが出ました。
もう一つ、アドバイスされたことがありました。白黒の方が舞台映えしやすいという提案です。白龍は青や緑で彩られていました。
画家のわがままとしては、作品をそのまま旗にしたい。でも、舞台の旗としてはどうなのだろうか。主役は、舞台に上がる人たちです。そして、私が作品づくりで大切にしているのは、人が活きるものを生み出すことです。作品は、触れる人や環境を輝かせるもの。希望を改めて確認すると、「お任せします」だったので、視点を変えました。
舞台を見る人、舞台に立つ人は、どういう大きさだったらより感動するのか‥‥、から考えることにしたのです。舞台いっぱいに泳ぐ白龍が目に浮かびました。ああ、2メートルより大きいのだ、と答えが出ました。
もう一つ、アドバイスされたことがありました。白黒の方が舞台映えしやすいという提案です。白龍は青や緑で彩られていました。
画家の素直な気持ちとしては、作品をそのまま旗にしたい。でも、舞台の旗としてはどうなのだろうか。主役は、舞台に上がる人たちです。そして、私が作品づくりで大切にしているのは、人が活きるものを生み出すことです。作品は、触れる人や環境を輝かせるもの。これが私の信条です。
舞台用にモノクロでデザインを新しく創ろう、と決めました。
墨と鉛筆で舞台をイメージして手探りを始めました。何枚も繰り返し描いている中で、デザインが固まりました。
龍の形はそのままに、背景を大きく変更しました。モノクロで言えばグレーのトーンだったのを、白く抜いたのです。龍だけに焦点を当てました。そして、野外舞台だから、日が暮れてもはっきりと見えるように、黒から薄い黒までを使ってメリハリある構成にしました。そして最後に、白く抜いた部分を、薄いグレーに調整しました。
灰色にしたのには、二つの理由がありました。
一つは、繰り返し使っても汚れが目立たないように。
もう一つは、舞台の人が引き立つためです。
純白だと、他の色より目立ってしまいます。結婚式で、純白のスーツやドレスが注目を集めるのを思い浮かべれば、よくわかります。
旗が純白だと、舞台の人でなくて旗が浮き立ってしまうのです。かといって、「グレーの旗、グレーの龍」と思われるようにはしません。旗の中では白く見えるけれど、色だけ取り出したら「灰色だな!」と思う色を選び出す。これが、プロの腕の見せ所です。
完成した旗は、旅館に直接送られました。
「ああ、届いたな、と畳まれている旗を広げていって『4メートルと聞いていたけど、実際4メートルってこんなに大きいのだ』」と気がついたそうです。そして、「舞台で引きずるのじゃないか?」とドキドキしたそうです。
それが。
舞台にあげると、測ったようにピタッと収まりました。
実は、私自身も「3メートルか、4メートルか」最後まで悩んだのです。何しろ実は‥‥、その時、まだ舞台は組み上がっていませんでした。旗も舞台も、お祭りの前日ギリギリに完成したのです。でも、頭に浮かぶイメージ、直観が【4メートル】と伝えてきます。それは、日々直観に向き合い磨いている人間、アートに携わるものにとって、まるで天の声のようなもの。それを信じました。
でも、設置する人には4メートルは大変な大きさです。大丈夫だろうか‥‥。
心配していると、メールが届きました。
「舞台に設置できました。
生きているみたいです。すごいです。あえて写真は送りませんね、とにかく凄いです。ありがとうございます。実際にまず、見てください」
舞台を見にいくと、白龍が青空のもと、悠然と旗めいていました。
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。