この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
『家族』|ずっと家族で眺めていたいシンボルとしての絵画ができるまで
「本当にほしい絵を、一緒にっていく中で迷うことはありませんか?」
と、聞かれることがあります。
「いろんなアイデアが出て、楽しいだろうなと思います。
でも、たくさんの可能性がありすぎて、どう完成したらいいかわからなくなる気がします」
実際に、先月の日本情動学会で、オーダー絵画のプロセスを口演発表したところ、この質問がありました。画家が学会発表?と思うかもしれません。自分でも、最初そう思いました、笑。しかし、「人の心を動かしていくことができる絵の創り方は、聴いたことがありません。しかも、行動まで変えてしまうことがあるとは、いったいどういうこと?それは高度な技術です」と、広島大学の教授にいわれたのがきっかけで、2019年より絵のプロセスを学術的に紐とくようになりました。
そして、今年の発表で質問されたのです。
確かに、クライアントの言うがままに、題材を並べていったら迷うかもしれません。でも、絵画には、数千年前から使われている手法があります。それは、世界各国で、さまざまな文化で共通して使われています。数千年前から使われている手法、シンボルを使うのです。
例えば、「十字架」はキリスト教にとって、犠牲と救済の象徴です。単なるものである「十字架」が、特定の意味を帯びます。十字架が描かれた絵を見ることで、キリスト教にとって大切なものを思い起こせるようになるのです。すると、絵は、単なる絵ではなく、心、そして行動にも影響を与えるものに変わります。
ものをものとして描くだけでなく、かたちにできない意味をのせて描く。
たった一つの十字架が、犠牲と救済という深い意味合いを表せるように、
絵の中のたった一つのものやカタチで、さまざまなアイデアを集約できます。
この時に、「綺麗だな、楽しいな、面白いな‥‥だけではなく、絵を通して何を思い起こせるようになりたいか?」を考えます。そうすると、アイデアのまとめる方向性が見えてきます。
整骨院の院長、Hさんの時も、カタチを通じてカタチにできないものをたくさん表しました。Hさんは家を引っ越す時に、オーダー絵画を依頼しました。
「今まで徒歩数分だった職場と家の距離が、数時間と遠くなるため、家族に関わる絵を医院に飾っていつでも職場で家族を身近に感じられるようにしたい」と思ったのです。
Hさんの家族は、やんちゃ盛りの子供たち3人と、しっかり者の奥様、愛犬です。
子供たちの声あふれる楽しい空気で満ち溢れた家庭を描き出すのに、最初に私の頭に浮かんだのは、子供たちが追いかけっこしているイメージでした。そのイメージを構想画として描き、Sさんに見せると、「ぜひこれにしたい」と喜びました。そして、「妻と子供たちにも見せたい」
「奥様や子供たちと一緒に考えることは、きっと家族の大切な思い出になりますよ」後押しすると、Sさんは喜びました。そして、忙しい仕事の合間をぬって<家族会議>を何度か開き、相談しました。すると、
「ピカチュウのTシャツを着たい」
「仮面ライダーのベルトをしたい」
「天使の姿が可愛い」
「お父さんの誕生日のナンバープレートの愛車を入れたい」
「思い出の詰まったスカイツリーを」
「家族の星座を入れたい」など、
小さなアイデアがどんどん加わっていきました。
そうするうちに、構想画から下絵、本画へと、数ヶ月かけて絵のプロセスも進んでいきました。
プロセスが進むたびに、一般的な家族像から離れ、自分たちの好きなものや楽しいもの、大切なことなどを話して、共有していくことで家族の在り方を再確認になっていきました。
そして、ある日のことです。Hさんの奥様が、大きなシンボルを見つけました。「【ずっと兄弟仲良く生きていってほしい】という想いを込めて兄弟が手を繋いでいるのがいい」と思いついたのです。
それは、楽しい空気を表していた兄弟が追いかけっこしているイメージが、【手をつなぐ=仲良くという、家族の在り方を象徴するシンボル】に書き換わった瞬間でした。また、手をつなぐ=仲良くは、家族の文化だ、と伝えられるようになったのです。
そのシンボルは、たどり着いてみれば、「今の家族を表している」とHさんと奥様は当たり前に感じました。でも、想い浮かぶまでには、数ヶ月かかっていました。毎日まいにち、ずっと眺めていたいシンボルは、絵を通して家族の在り方を確認していく間に、Hさんたちの無意識から浮かび上がってきたのです。
そして、ついに絵が完成しました。
完成した絵をみて、Hさんは、「家族の節目や理念を共有できる、家族で眺める絵に変わりました。職場ではなく、家に飾ります」とにっこりしました。
そして、依頼してから一年以上の月日を振り返りました。「妻とのコミュニケーションがスムーズになりました。子供も落ち着いてきました。私自身、家族を客観的にみたり、多角的な視点を持てるようになりました」
一緒にその人だけのシンボルを探す。
それは、一緒に心の冒険をし、イメージの変化を恐れず、そして、楽しんでその先に行くことで見つかる、と感じます。
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。