
僕はいま、いろいろ学校をやったりとか、フリーランスの人を応援するっていう仕事をやってて、「会社員にくらべて、そんなのやって食っていける人は一握りだぞ」っていうことをよく言われるんですよね。まあ、だからギャンブルみたいなもんだと。だけど、そもそも会社員で食っていくっていうのもギャンブルじゃないのかと私は思ってまして。

ただ、ギャンブルの賭け率とかの、ものすごく高いものから比較的低いものまであるけど、100パーセント勝てるものなんてなくて。というのがベースにないと失敗するんじゃないのかなっていう気がしてまして、お二人はどのようにお考えなのか。

でも、まあ、「すごい盤石な企業に入る」みたいなことは、もしかしたらあるかもしれない。さすがに、いま、何十年つぶれないのは予測できないかもしれないですけど、ちょっと前だったら、あったかもしれないですよね。

うん、たしかに。先ほどの話でいうと、たとえばフリーランスになって最初はすごく稼げない、みたいなことがあるかもしれないですけど、その経験がむしろ後々生かせるみたいな、会社員の人よりはずっといろんな経験ができるみたいなことがあるかもしれないから、ほんとにそれってわかんないなとは思いますよね。

新しい商品をつくってバカ売れするなんていうこともめったにないし。もちろん、いきなり売れるってすばらしいことなんですけど、逆にそれによって失うものもあるわけで。つまり、「売れる」っていう経験のかわりに「売れない」経験ができないんで。まあ、そんなに生涯売れつづけるものってないと思うんでね、おそらく。

だから失敗するっていうのは悪いことじゃなく、失敗の確率はどうやったら減るのかっていう、どうやったらモノが売れていくのかていうことをちょっとずつちょっとずつ工夫していくと、自分の工夫する力が間違いなくついていきますからね。

なんか、ギャンブルっていうとお金だけが指針になりがちですけれども、フリーランスになると、たとえば仕事があることに感謝できたりとか、そういう別の思考が生まれるなと思ってて。会社員だと仕事がいっぱい降ってくるほうが嫌じゃないですか、たぶん。

私も毎月、請求書を出すときに「ありがとうございます」と思いながら出すように、忘れないように心がけてますけれども(笑)でも、そういうのは会社に雇われてて勝手に給料が振り込まれるみたいなのだったら、たぶん感じないと思うんですね。

でも、たまたま生きてる間に会社がつぶれなくて、クビにもならなくて、退職金もしっかり出て、年金も払われる人もいるわけなんで、べつにそれは否定しないんですけど、そうじゃなくなったときのことを考えないのはどうなんだろうっていう。考えた結果そうならないのがいちばんいいわけで。

仕事もそうだと思うんですよね。基本的にはクビになるし、会社はつぶれるし、商品は売れないというふうに考えると、「じゃあ、どうやったらクビにならないのか?」とか「どうやったら売れるのか?」って考えるじゃないですか。

考えないですよね。たとえば、さっきの知り合いのバンドの話なんですけどね、これ、アートの世界ですから、「いいものをつくれば売れるはずだ」っていうことを僕が反対するのはあんまりよくないと思うんですけど、だけど、「売れる音楽が必ずしもいい音楽とはかぎらない」という見方をする人が、「じゃあ売れる音楽って、いったいなんなんだろうか?」って考えることは必要じゃないのかなあという気もする一方で、「ミュージシャンという方には、そんなこと考えずに音楽つくってほしい」という気もしてですね。

ともかく、人生はありとあらゆるものすべてにおいて、そもそも「生きてる」っていうことは「死ぬかもしれない」ってことじゃないですか。病気になる可能性もあるし、車にひかれるかもしれないし、お金が稼げないかもしれないし、いろんなことがあるわけで。
*本ぺージは、2022年1月12日、ポッドキャスト「安田佳生のゲリラマーケティング」において配信された内容です。音声はこちらから
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