原因はいつも後付け 第33回 「マイナスがあるならプラスもある」

// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第33回》マイナスがあるならプラスもある

子供の頃、周囲の大人たちからよくこんな事を言われていたのを覚えています。
「何でお前はそんなに天邪鬼(あまのじゃく)なんだ」と。

天邪鬼とは、わざと人の意に逆らった行動をする人。
なぜこんな性格になってしまったのか理由は分かりません。
ただ、自分でも天邪鬼な性格だと自覚があるのは確か。

そして、こんな性格だと今のような情勢の時にふと、こう考えてしまうのです。
「新型コロナがもたらしたプラスとは何だろう?」って。


新型コロナがもたらしたプラス。

「何を言ってんだ、そんなもんある訳ないだろう。」
「売上が激減して、会社はメチャクチャだ。」

そんな意見があるのは分かります。
現に私のお店も全店舗休業中で、この先どうなるかなんて分かりませんから。

ただ、マイナスがあるのならプラスもあるはず。
天邪鬼だと、こんな風に考えずにはいられないのです。

今、私も直面している売上の激減というマイナス。
では、お金がマイナスになった代わりにプラスになったものは何なのか?

それが、時間なのだと思います。

お金を強制的に時間に交換させられてしまったというのが、いま私たちが置かれている状況であり、考えようによってはお金は減ってるけど、考えることに使える時間は増えている訳です。

私が1号店を開業した2002年、景気はどん底でした。
何をやっても売れなかったので、今の状況と同じく時間だけはありました。

不景気のどん底で開業するなんてタイミングが悪い、という考え方もあるでしょう。
でも今から振り返って考えてみれば、私はこれで良かったと思っているのです。

なぜなら、売るための方法を考える時間がたくさんあったおかげで、売る方法を考える癖がついたから。

今年が私の開業した2002年以上に厳しい年になるのは間違いありません。
それどころか、2009年のリーマンショック以上になるのは、ほぼ確実と言われています。

マイナス情報ばかりが耳に入ってくるのは事実です。

ただ、「お金が減っている」と言うマイナス要素には目が行きがちな反面、この「考える時間が増えた」と言うプラス要素に目を向けようとしている人は少ない気がするのです。

今後、業績が悪化する会社が増えていく一方、新型コロナをきっかけに成長したというお店や会社も出てくるでしょう。
業績が悪化する会社と成長する会社の明暗が分かれるとしたら、その原因は何なのか?

それは、お金と強制的に交換させられた事で得た時間を何に使ったのかによるのだと思います。

「新しい事業を始めるのか?」
「既存事業の立て直しを考えるのか?」
「自粛が続く現状を嘆くのか?」

これからどうなるかなんて誰にも分かりません。
そんな中で、時間をどのように使うのかはオーナー次第。

ただ大事なのは、マイナスしかないように思える時だからこそ、いま手元にあるプラスの要素に目を向けて、それを最大限に活用する方法を考えることなのではないでしょうか?

「今後を考える時間が増えた」とプラスから現状を見ようとしない限り、自分のお店や会社に明るいアフターコロナは待ってない、と薄々気づいているのは、天邪鬼な私だけではないと思うのです。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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