第76回 評価されない努力

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

お店の経営が上手くいかない時、私たち店舗オーナーはよくこんな事を考えます。

「お店の弱点は何なのか?」
「弱点を直せば集客できるはず」と。

でもお店の弱点を克服することができれば本当に繁盛するのかと言うと、私にはそうは思えません。その理由は「弱みのないお店」と「行きたいお店」はイコールではないからです。

じゃあ、なぜ多くのオーナーがこの「弱みを直す」という思考に囚われてしまうのか?
その原因を知ることができれば、私たちはその原因を変えることで、得られる結果も変えることが出来るのではないでしょうか?


「弱みを直す」という思考の癖。
この癖は一体どこから来ているのか?

その答えは学校のテストで無意識のうちに癖づけられた「合計点」という考え方のような気がしてなりません。

学校ではどんなに得意な教科があったとしても、テストで100点より上の点数を取ることはできません。だから私たちは、苦手教科の克服をすることで、全科目の合計点をより伸ばそうと考える訳です。

確かに学校のテストであれば、これで良かったのかも知れません。
ただ、学校と商売で大きく異なるのは、商売には誰かが決めた100点という上限なんてないと言うことです。

であれば、私たちが商売において力を注ぐべきなのは、苦手科目を平均にしようとすることではなく、得意科目をもっと伸ばすことなのではないでしょうか?

にも関わらず私たちが、自分の得意を伸ばす事はそこそこに、自分の苦手を克服する事に力を注ごうとしてしまうのは、学校の評価の延長線上に商売の評価もあると考えてしまっているからだと思うのです。

商売には100点なんていう上限はないということ。
学校の評価とお客さんの評価は基準が違うということ。

商売においては苦手を平均点にできたとしても、お客さんから評価されることはなく、お客さんは合計点よりも、自分の強みやこだわりを伸ばし続けるお店に集まるのだと思います。

 

 

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから