原因はいつも後付け 第48回 「顧客の声を聞かないお店」

  • // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第48回》顧客の声を聞かないお店

今から18年前、1号店を開業してしばらく経った頃。
お客さんにこんな事を言われたのを覚えています。

「あのウイスキーを入れてくれたら、もっと(お店に)来るよ」と。

当時はまさに、喉から手が出るほど集客に困っていた時期。
「これで少しでもお店に来てくれる回数が増えるなら」との思いで、私はお客さんの望んでいるウイスキーを仕入れたのです。この例に限らず、開業当時の私は数々のお客さんの声に耳を傾け、改善を続けたにも関わらず、お店は一向に繁盛しませんでした。

なぜ、お客さんの要望を聞いているにも関わらず繁盛しないのか。
皆さんならこの理由、分かりますか?


「繁盛しているオーナーほどお客さんの声を聞かない。」
これが今の私が持っている、繁盛店オーナーに対する率直な印象。

彼らは開業した頃の私とは異なり、お客さんの声を聞こうとしているようには全く見えません。お客さんの声を聞いた私のお店が繁盛しなかった一方で、お客さんの声を聞かないオーナーのお店が繁盛しているという事実。

なぜこんな、一見矛盾とも思える事が起きるのか?
その理由は開業して18年経った今なら分かります。

お客さんの声を聞かないお店が繁盛している理由。
それは、彼らが「自分の弱み」を全く気にすることなく、「自分の強み」を伸ばすことだけに力を注いでいるから。

繁盛店のオーナーは、お客さんの声を聞かないからこそ自分の強みに集中でき、その強みがあるからこそお客さんが集まっている訳です。それに対し、お客さんの声さえ聞けば集客できると考えていた当時の私は、言ってみればお店の弱みを補うことばかりに集中していたからこそお店の強みがなくなり、強みがないからこそお客さんが集まるお店になれなかったのです。

冒頭で私は、お客さんの声に耳を傾け続けたと書きました。
「お客さんの声に耳を傾ける。」

これは一見、お店の改善に真摯に取り組む良い姿勢に見えるかも知れません。
事実、当時の私もそう信じていました。
だからお客さんの要望に出来る限り応えることで、繁盛するお店になろうとした訳です。

でも多くの場合、お客さんが教えてくれるのはお店の弱みであり、その弱みを克服した所で、それは所詮自分のお店の弱かった部分が他のお店と同じレベルになれたかどうかだけの話であり、弱みを補っても決して集客には結びつかないということ。

「繁盛しているオーナーほどお客さんの声を聞かない。」

確かに彼らはお客さんの声に耳を貸そうとはしていません。
ただ、「繁盛している=お客さんの満足」と考えるのであれば、彼らこそが実はお客さんの「本当の声」を聞いていると言えるのではないでしょうか?

本当の声とは、お客さん自身が気づいていない心の奥底にある要望であり、その要望を満たせるのは、表面的なお店の弱みを補う程度の改善ではなく、磨き続けたお店の強みやこだわりだということ。

お客さんが集まるのは、強みも弱みもないお店ではなく、例え弱みがあったとしてもそれを補って余りある強みやこだわりを持つお店であり、開業時の私のように安易にお客さんの要望に応えようとするお店は、自らこだわりのなさを証明しているに他ならず、こだわりのないお店が繁盛しないのは必然だったと、繁盛店オーナーを見ていると痛感せずにはいられないのです。


私の取引先でもある店舗オーナーの仕事風景。
強みやこだわりを磨くことこそが、お客さんの本当の声を聞くことなのだと思います。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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