第122回 広告費を安くする思考、ゼロにする思考

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売に欠かすことの出来ない要素である集客。
この集客を考えた時、商売を始める店舗オーナーの多くはこう考えるのではないでしょうか。

「どこに広告を出せば費用対効果が高いのか」と。

これはつまり「できるだけ安い広告費で、できるだけ多くの集客をしたい」ということであり、もちろん私もこれまで様々な広告を試してきた経験があるため、このように考える気持ちはよく分かります。

ただ一方では、こうした考えとは別のアプローチで集客を考えておく必要もあると思うのです。そのアプローチというのが、タイトルに挙げた「広告費をゼロにする思考」なのです。


「広告費を安くする思考」と「広告費をゼロにする思考」。
この2つは一見、同じような考え方にも思えます。

でも、よく考えてみると、前者の取り組みとは言ってみれば「どの広告を使えば安く出来るのか」という「広告会社を使う前提の思考」であるのに対し、後者の取り組みは「どうすれば広告費を使わないで済むか」という「広告会社を使わない前提の思考」と言えます。

つまり、前者はお客さんを集めてくれそうな会社の「比較」をする行為である一方、後者は自分でお客さんが集まる方法の「創造」をする行為と言えます。

私たちは安く集客できそうな広告を探し続けていけば、いつかは広告費をゼロにできると考えてしまいがちです。もちろんこの流れで広告費をゼロにできたお店もどこかにあるのかも知れません。

ただ、私のお店や私が集客をお手伝いしているお店に限って考えるのであれば、やはりどこかの時点で「広告費をゼロにする」という決断をし、その決断に向かって自分のお店ならではの集客方法を創造していった結果、広告費ゼロを実現できているのであり、決して安く集客できそうな広告を探し続けた結果、広告費がゼロになった訳ではないということ。

この事実こそ私が広告費を安くする取り組みは大事である一方で、広告費をゼロにする取り組みも大事であると考える理由であり、広告費を「安くする思考」と「ゼロにする思考」は全くの別物だと私は思うのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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